ゴールの瞬間、場内から拍手が湧きおこったJBCスプリントJpnⅠからJBCクラシックJpnⅠまでの間は、門別競馬場でのJBC2歳優駿JpnⅢをはさんでいるため、大井競馬場は静かな時間がしばらく続いた。
2020年、JBCデーの4戦目。ここまでの3戦とも、単勝1番人気馬が2着以内に入れないという結果だったが、国内で無敗という成績を誇るクリソベリルの単勝オッズはほとんど動かないまま最終的に1.3倍。続く2番人気は昨年浦和のJBCクラシックJpnⅠでハナ差2着のオメガパフュームで4.1倍、3番人気は昨年の覇者であるチュウワウィザードで8.0倍。連勝系のオッズも含めて、この3頭に人気が集中していた。
しかしクリソベリルは帝王賞JpnⅠ以来の休み明け。その点は心配材料といえたが、結果は2着のオメガパフュームに2馬身半の差をつける完勝。国内での無敗は継続された。
その走りには、2着馬の鞍上、ミルコ・デムーロ騎手も白旗。「自分としてもうまく乗れたと思います。でもクリソベリルはやっぱりすごい」とコメントしていた。3着に入ったチュウワウィザードのクリストフ・ルメール騎手も「勝った馬が強かったです」と、同様だった。
そのクリソベリルはパドックでリップチェーンを装着。それが多少きつめだったのか、口の左側は歯茎が見え、舌も出しながら歩いていた。そのあたりはキャリア8戦の4歳馬というところなのかもしれない。クリソベリルの直後で体を大きく見せて歩いていた3歳馬のダノンファラオのほうが、威風堂々としているようにも映った。
そのダノンファラオが先手を主張。チュウワウィザードが2番手につけ、クリソベリルは3番手。オメガパフュームはライバルたちが視界に入る4番手でレースを進めた。
軽快に逃げるダノンファラオが刻むペースは前半1000メートルが61秒4。後半1000メートルも61秒1という淀みのない流れに乗った各馬の戦いは有利も不利もなかったという印象で、その実力の差が結果に表れたという感がある。馬連複が210円で、馬連単が260円。そして3連単が520円だったのは、ファンもそう思っていることの証左だろう。
それでも全体的に見ると、逃げたダノンファラオが5着に粘る前残りの形。そのなかで差し脚を見せて4着に食い込んだ船橋のミューチャリーは「うまく差し脚がはまってくれました」と御神本訓史騎手が振り返ったにしても、今後に期待をもたせる内容だった。ミューチャリーは地方のダートグレードでは4回連続で4着以内。クリソベリル陣営が「次はチャンピオンズカップを目指して、そのあとは新型コロナ次第にはなりますが、サウジカップが目標」(馬主・キャロットファームの秋田博章代表)という青写真を描いているだけに、東京大賞典GⅠでの前進を期待したいところだ。
それはオメガパフューム、チュウワウィザード両陣営も同様に考えていることだろう。しかしそれとは関係ない場所にいるのがクリソベリル。「種牡馬としての価値を考えるなら、海外でも結果を出すことがこの馬の宿命でしょう」(秋田代表)という高みにまで上り詰めている。
Comment
川田将雅 騎手
結果を出すことができてホッとしています。返し馬で状態面は問題ないと思いましたし、前半は力みながらでしたが、それでも我慢してくれて、リズムよく走ってくれました。以前よりも全体的に体がしっかりしてきた感じがありますね。このまま次の目標に向かっていければと思います。
音無秀孝 調教師
負けなかったことがとてもうれしいですね。今までで今日がいちばん、安心して見ていることができました。ここまで順調で、追い切りもいい内容で、スタートも決めてくれましたからね。このあとはオーナーさんと相談して、チャンピオンズカップ、そしてサウジカップでのリベンジをしたいと考えています。