新型コロナウイルス感染拡大を予防すべく、無観客での開催が続いているホッカイドウ競馬。いつもなら多くの観客が詰めかけるブリーダーズゴールドカップJpnⅢも、今年は静寂の中を15頭の出走馬たちがパドックを周回していた。
単勝一桁台のオッズとなったのは中央勢の5頭。実績面に加えて、コース適性の高さも兼ね備えていたのは、一昨年、昨年とこのレースで2着となったプリンシアコメータ。しかしながら1番人気となったのは、唯一の3歳馬で、関東オークスJpnⅡを制したレーヌブランシュで、プリンシアコメータは僅差ながらも2番人気にとどまった。
前走TCK女王盃JpnⅢで初重賞制覇を飾ったマドラスチェックが3番人気となり、そのTCK女王盃JpnⅢで3着、マリーンカップJpnⅢでも2着となるなど、順調な臨戦過程を歩んできたメモリーコウが4番人気。中央3勝クラスの大雪ハンデで牡馬を相手に勝利したシネマソングスが5番人気となった。
レースを引っ張ったのもスピードで勝る中央勢。門別競馬場のスタートしてからの長い直線で、6番枠のマドラスチェックが積極果敢に主導権を取りに行く。最内枠のプリンシアコメータは、マドラスチェックの外にポジションを置く形で2番手をキープ。14番枠から徐々に進路を内に向けてきたレーヌブランシュが、前を行く2頭をマークする形で3番手を追走していく。
逃げたマドラスチェックを管理する齋藤誠調教師は、「イメージ通りの競馬ができたが、結果としては速い流れだったのかもしれない」というほどによどみなく流れて向正面で縦長となり、第3コーナーを回る頃には、中央勢5頭の争いとなった。
3コーナーから先頭のマドラスチェックをとらえにかかったプリンシアコメータであったが、「4コーナー手前で(レースを)止めようとしている気持ちがあったので、気合を入れました」と鞍上の岩田康誠騎手がムチを振るうと、残り1ハロン手前で先頭に躍り出た。徐々に後退するマドラスチェックに代わって2着争いとなったのがレーヌブランシュとメモリーコウ。しかしながら、その争いを尻目に、プリンシアコメータが三度目の正直でようやく、ブリーダーズゴールドカップJpnⅢ制覇を果たして見せた。
1馬身半で2着にメモリーコウ、アタマ差で3着にレーヌブランシュが入った。
昨年もプリンシアコメータの鞍上で半馬身差の2着に敗れていた岩田騎手は、枠場に戻ってくるなり右手を振り上げると、「ヨシ!」と静寂を切り裂くような声を上げた。
岩田騎手は4月26日の京都競馬で落馬負傷。6月13日からのJRA北海道シリーズで復帰を果たしたが、函館開催では5勝、札幌開催でもここまで1勝という成績だった。それだけに今年の阪神大賞典GⅡ以来となる重賞勝利には、格別の思いがあったのかもしれない。
レース後のインタビューでは、「函館、札幌と騎乗をしながら、徐々に回復してきました。秋は完璧な状態でレースをしたいと思いますので、岩田康誠を忘れないでください」と話すと、最後にカメラに向かってサムズアップ(親指を立てるジェスチャー)を見せた。
Comment
岩田康誠 騎手
昨年より調子が良かったのか、走る気持ちになっていましたし、先生やスタッフが最高の状態に持ってきてくれました。ハナを切るプランもありましたが、2番手に切り替えてからも、この馬のリズムで走ってくれました。プリンシアコメータだけでなく、自分自身にとっても久しぶりの重賞勝利を嬉しく思います。
矢野英一 調教師
2年連続で2着となっていただけに、何とか今年は雪辱を果たしたいと思っていました。7歳の女の子ですが、頑張ってくれていい結果を残してくれました。この後は例年通りに暮れの交流重賞に向けてという形になりますが、来年以降はオーナーと相談しながら、状態を見つつ決めていきたいと思います。