1993年、『岩手県競馬組合設立30周年記念競走』としてスタートした青藍賞は、当初ダート2000メートルだった。2000年からは1600メートルとなり、現在はマイルチャンピオンシップ南部杯JpnⅠへの地元馬のトライアル競走であり、同時にJBC(クラシック、スプリント)指定競走の役割も担っている。
今年の岩手競馬の古馬路線は転入初戦の赤松杯からシアンモア記念、一條記念みちのく大賞典と重賞を3連勝し、マーキュリーカップJpnⅢも3着と健闘したランガディアが、金沢の地方全国交流重賞イヌワシ賞へ挑戦。一昨年、昨年と青藍賞を制したエンパイアペガサスは、シーズン終盤の北上川大賞典以降を目標に現在休養中。昨年不来方賞と桐花賞を勝って岩手年度代表馬となったヤマショウブラックはマーキュリーカップJpnⅢを最後に大井へ再転出しており、春先の主力メンバーが不在となった。
入れ替わるように岩手にやってきたのはヒガシウィルウィン。17年の東京ダービーやジャパンダートダービーJpnⅠを勝った馬であり、岩手競馬へのGⅠ/JpnⅠ級の勝ち馬はいつ以来か……というほどの実績馬の転入が話題となった。4月の大井で競走除外以来となった転入初戦、8月1日の準重賞すずらん賞は、逃げるパンプキンズの2番手から抜け出して優勝したが、追ってからの伸びはまだ本来のものとは映らず、陣営も完調手前というニュアンスのコメントを残していた。
それでも勝ちは勝ち、今年の東北北部は梅雨明けが特定できないほど天候不順であったが、水沢でも8月下旬から9月上旬は猛暑。中間の調整は簡単ではなかったと思われたが、それでも徐々に乗り込みのピッチを上げて青藍賞へ姿を見せた。単勝のオッズは1.1倍、2番人気パンプキンズが3.7倍。2頭で全体の9割近い票数を売り上げた。
パンプキンズはすずらん賞同様、素早く逃げ態勢に持ち込む。後続は差なく続き、1番枠ヒガシウィルウィンは山本聡哉騎手が「2番手も考えたが、隊列を見て控えた」と最内で一歩控えた位置から。パンプキンズの逃げは4コーナーまでほとんど変わらぬペースだったが、後続は徐々に遅れはじめ、ヒガシウィルウィンだけが追い上げて直線の入口では完全なマッチレース。ヒガシウィルウィンは最後の直線もしっかり伸び切って7馬身差のゴールとなった。
今回のメンバーで実質重賞レベルは2着のパンプキンズのみで、トウケイニセイ記念を勝っているセンティグレードも盛岡では未勝利。3着以降が大差となっており、レースのレベルを評価するのは難しいところだが、ヒガシウィルウィンがパンプキンズにつけた着差だけを見れば、すずらん賞での2馬身が今回は7馬身に広がっており、休み明けを1走した上積みは十分にあった模様。その意味で菅原勲調教師は「納得のいく勝ち方だった」と振り返っている。ただ、ファンや周囲がジャパンダートダービーJpnⅠを勝った頃を比較対象とするのであれば、評価が難しいことも確か。青藍賞はJBC指定競走(クラシック、スプリント)とされてはいるが、それらを意識するには「さらにレベルアップが必要」と考えているに違いないと解釈した。順調ならば、地元の代表としてマイルチャンピオンシップ南部杯JpnⅠに出走することが期待されるが、当然その内容も今後を占う重要なものになるだろう。
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山本聡哉 騎手
前走がかかり気味だったので、内枠でもありパンプキンズの後ろで砂を被せるレースを。道中ハミが抜けた分、直線で良い脚を使ってくれました。ひと叩きして上積みもあったので、今回の方がレース内容は良かったです。盛岡ならマイルくらいが良いと思います。
菅原勲 調教師
今日は納得のいく勝ち方でした。前走と比べても、間違いなく体調は良くなっていましたね。この先はジックリ状態を見ながら決めたいです。