北海道スプリントカップJpnⅢが6月に設定されているが、2000年までのホッカイドウ競馬は、古馬の短距離重賞はこれで終了していた。2001年にエトワール賞が旭川1000メートルで新設され、2002年から北海道スプリントカップJpnⅢの前哨戦となったが、夏以降は古馬のスプリンターにとって、適性距離でなくても中距離を選択するか、他地区へ移籍するしかなかった。関係者の協議で、「秋にも短距離重賞を」との要望が多かったことから、2006年に道営スプリントが創設された。歴史を重ね、その存在価値も高まってきた中、道営記念の短距離版として、今年は道営スプリントが道営記念と並び立つ形でシーズン最終日に行われる。
道営スプリントの移行に伴い、JBCスプリント指定競走に位置付けられる秋の短距離戦を新たに作るべく、ウポポイオータムスプリントが新設された。ウポポイは、アイヌ語で“大勢で歌う”ことを意味する。白老町では今夏、国立アイヌ民族博物館がオープンした。親しみやすく覚えやすい言葉として、愛称をインターネットなどの投票で募集した結果、『ウポポイ』が選ばれた。主催者に確認すると、ネーミングが一致したのは偶然とのこと。道外の方々には馴染みのない言葉でも、一度聞いたら耳から離れないネーミングであるのは確かだ。
古馬短距離路線が体系化され、例年以上に層が厚くなった。北海道スプリントカップJpnⅢでは、メイショウアイアンが20年ぶりとなる地元馬Vの偉業を成し遂げた。17勝すべてを門別1200メートルで挙げているソルサリエンテは、エトワール賞で重賞初制覇を飾った。重賞2勝のソイカウボーイも、今季は2戦2勝と復調を示し、3歳牝馬の快速馬・アザワクも全国区の実力を誇る。ブラゾンドゥリス、オールドベイリーといったJRAオープンで実績のあった馬たちが転入するなど、新たな1ページに豪華なメンバーが名を連ねた。
これまでの戦法から、アザワクが逃げるかと思っていたが、オールドベイリーが二の脚を利かせてハナへ行き、アザワクは好位に控える展開。前半は、12.1-10.8-11.4=34.3と、後続を引き離すハイラップを刻んだ。ダッシュがつかないソルサリエンテに騎乗した宮崎光行騎手が、「このまま逃がしたら残ってしまう可能性があったので、勝負所から追いかけていった」と、普段より早めに仕掛けた。
3コーナーから4コーナーの4ハロン目も11.9とペースを緩めず、厳しい展開を作ったオールドベイリーはさすがに苦しくなり、最後の2ハロンは12.5-13.9と一気にバテた。先に抜け出したソルサリエンテ、大外から追い込むメイショウアイアン、さらにその間からソイカウボーイが迫るゴール直前の大接戦は、まさに手に汗握る激闘だった。
軍配が上がったのは、古豪メイショウアイアン。北海道スプリントカップJpnⅢを再現したような、大きなハナ差の勝利だった。メンバー中唯一、上がり3ハロンで36秒台をマークし、10歳馬とは思えない充実ぶりを見せている。
「レース間隔を取っていることもありますが、トモの入りも、近年で最も良い状態ですし、本当に元気なんですよ」と、田中淳司調教師も目を丸くしていた。ダートグレードの勲章を胸に、北の大地で奮起する古豪の挑戦は続く。
Comment
落合玄太 騎手
砂を被るとコーナーで動けないタイプなので、内枠を引いたのが心配でしたが、勝負所で外に持ち出した後はギアが上がり、届いてくれ!という気持ちで追いました。いつも一生懸命走るメイショウアイアンには、感謝の気持ちで一杯です。次走も、良い状態で挑めるよう、しっかり調教していきたいと思います。
田中淳司 調教師
10歳馬ですが、今が本当に充実していると思えるほど、シーズントップからの上昇ぶりが凄いですね。トモの入りが良く、直線での伸びも迫力が出てきました。次走は道営スプリントも考えていましたが、思い切ってJBCスプリントに挑戦しようと思っています。