今年の珊瑚冠賞に出走する12頭のうち8頭が、3走前までにA級2組以下のレースでの出走歴があった。ある調教師が「最近の高知は、下級条件は転入馬が多くて層が厚いのですが、上級条件はそうでもないんです」と話していたが、その状況が反映されたメンバー構成といえるかもしれない。
となると、注目が集まるのは今年のトレノ賞で好走した2頭。勝利を挙げたダノングッドが単勝1番人気で1.9倍、2着だったスペルマロンは2番人気で2.5倍の支持を受け、その2頭の馬連複は1.9倍と、唯一、10倍以下の組み合わせになった。3番人気はキモンクラブで8.1倍だったが、血統的にも実績的にも距離適性に疑問符がつくタイプ。それでも上位人気になったのは、騎乗するのが赤岡修次騎手というネームバリューが要因だろう。
一方、出走馬のなかで1900メートルが歓迎といえるのは、2400メートルの高知県知事賞で連対しているスペルマロンとチャオ、JRA在籍時にダート中長距離で活躍したピオネロというところ。そうなると、先手を取ったキモンクラブの赤岡騎手がスローペースに持ち込んだのは当然で、好スタートを決めたエイシンヴァラーも競らずに2番手での追走を選択した。それゆえ1周目のホームストレッチで7頭ほどが先行集団を作るという展開。人気2頭もそのなかでレースを進め、2周目の3コーナーあたりで進出を開始した。
逃げていたキモンクラブはそこで失速。代わってエイシンヴァラーが先頭に立ったが、末脚がある人気2頭に抵抗する力は残っていなかった。
4コーナーからはその両雄の一騎打ち。しかしこの距離ならばスペルマロンに分があるところで、残り150メートルあたりからは独走の形になって、ダノングッドに4馬身の差をつけて完勝。3着にはエイシンヴァラーが残ったが、2着馬との差は6馬身もついていた。
その結果にダノングッドの西川敏弘騎手は「これが精一杯。自分としてはベストのレースができました」と清々しく完敗の弁。それでも「すこし物足りなかった後肢の動きが良くなってきましたし、寒い時期のほうが動けるタイプだと思います」と、今後への手応えを感じたようだった。別府真司調教師も「オーナーさんと相談して、笠松グランプリを目指したいと考えています」と話していた。
スペルマロンはその実績馬を圧倒したのだから、手綱を取った倉兼育康騎手はさぞかし気持ちよかっただろうと思ったのだが、脱鞍所に戻ってきた倉兼騎手は「いやあ、緊張した」と言いながら下馬していた。それについて聞くと「前走でスタート直後に落馬して、そのあと先々週のレース(天候悪化で取りやめになったA1戦)に出走する予定だったのを回避してもらって、ここ一本に絞って乗り込んできたんです」という経緯があったそうで、気持ち的に背負うものが大きかったのだろう。スペルマロンはこれで重賞3勝目。このあとは「高知県知事賞の連覇を狙います」(別府調教師)とのことだ。
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倉兼育康 騎手
ダノングッドを前に見る位置で、西川さんが動いていくのを合図に追い出しを始めるという、いくつかイメージしていたなかでいちばん理想的な形になったおかげで、レースがとてもしやすかったです。じっくりと乗り込んだので馬の状態もよかったですし、最後はとてもいい伸び脚を見せてくれました。
別府真司 調教師
前走で落馬したときに外傷があったので少しだけ休ませましたが、その後はこのレースを目標にして追い切りを何本もこなしてきました。ウチの2頭での一騎打ちになると思っていましたが、この結果は1900メートルという距離でしょう。今の高知は賞金がいいですし、今後も地元でということになると思います。