以前は夏の上がり馬と実績馬の対決という色合いが濃かったが、近年は実績馬の好走が多く見られる。上がり馬が勢いで突破しにくくなったのは、路線の充実により、ダート馬の層が厚くなった結果だろう。今回もダートグレード勝ちのある馬が8頭と、多くの実績馬が顔をそろえた。
そんなメンバーのなかで興味深かったのは、芝重賞勝ちの2頭。2歳時にホープフルステークスGⅠを勝ったタイムフライヤーは、昨夏のこのレースでダートに転向。武蔵野ステークスGⅢで2着、フェブラリーステークスGⅠで5着と、トップクラスと互角の立ち回りを見せており、単勝1番人気に支持された。
一方、芝重賞3勝のエアスピネルは、初ダートだった前走のプロキオンステークスGⅢで2着。ダートキャリアの点ではタイムフライヤーに及ばないものの、2度目のダートでさらなる飛躍を遂げるか注目を集め、3番人気に推された。
リアンヴェリテがペースを握るなか、エアスピネルは内の5~6番手を追走。タイムフライヤーは外からそれを見る位置で進めた。最後方を進んだウェスタールンドが3コーナーからまくり気味に動いたが、これを受けて加速したタイムフライヤーが直線でもしっかりと脚を伸ばし、2着のウェスタールンドに2馬身差をつけて勝利した。
余力十分の快勝だった。道中でじっくり折り合うと、ウェスタールンドが上がってきても冷静に対応。直線ではクリストフ・ルメール騎手の右ステッキにしっかり反応し、5歳にしてダートグレード初制覇を果たした。「いいポジションをとれたし、馬もリラックスできていたから、いい結果を出せると思っていました。馬といい関係を築けています」と、ルメール騎手も納得の表情を見せた。母の全兄タイムパラドックスは7、8歳時にJBCクラシックGⅠを連覇。タイムフライヤーもJBCに出走すれば、生産界にとって明るい話題となるだろう。今後の動向を注視したい。
2番人気の8歳馬ウェスタールンドが、持ち前の末脚を発揮して2着。約4カ月ぶりの実戦だったが、アンタレスステークスGⅢ制覇、チャンピオンズカップGⅠでも2着した実力を示した。船橋のダイオライト記念JpnⅡで2着があるように地方のダートは問題なく、幅広い距離に対応できるのが強み。JBCクラシックJpnⅠを含めた秋のジーワン路線でも、円熟の走りを見せてくれるに違いない。
3着には、同じくアンタレスステークスGⅢ(2着)以来のアナザートゥルースが入った。メンバー最重量となる別定58キロを背負いながら、先団でしぶとく粘る上々の走り。JBCクラシックJpnⅠを使うとなれば初の大井コースとなるが、半兄のサウンドトゥルーがこの舞台を得意としているだけに期待は高まる。
エアスピネルは直線で伸び切れず7着。4コーナーで進路が狭くなる場面もあったが、今回は力の要る乾いた馬場が響き、歴戦のダート馬に跳ね返された印象だ。ただ、前走のように切れを生かせる馬場なら走りも変わってくるはず。このレースだけでは見限れない。