ジャパンダートダービーJpnⅠをダノンファラオで、東京スプリントJpnⅢと、前日の東京盃JpnⅡをジャスティンで制し、大井コースでは今年3戦3勝とした矢作芳人調教師。大井の名伯楽、矢作和人調教師を父に持ち、生まれ育ったこの場所で抜群の成績を残している。今回もJRA3勝クラスを勝ったばかりのマルシュロレーヌを送り込み、連日のダートグレード制覇に挑んできた。
そのマルシュロレーヌは、初ダートだった前走の桜島ステークスで勝利。オープンに上がったとはいえ、ダートグレード常連馬に対しては実績面で分が悪く、ここを勝ってJBCレディスクラシックJpnⅠへの出走を確実なものとしたかったに違いない。
そんな“勝負駆け”をマルシュロレーヌは最高のかたちで勝利した。
前残りの傾向が出ていた不良馬場のなか、7番手を進んだマルシュロレーヌ。徐々に先団との差を詰め3コーナー過ぎから一気に加速すると、直線の外を鋭く伸び、先に抜け出したマドラスチェックをあっさりかわした。初コース、初ナイターをものともしない走りで、勇躍この路線の主役に躍り出た。
勝ちタイムは1分52秒1で、後半3ハロンは36秒8。デビューから芝を中心に使われてきたこともあり、脚抜きのいい馬場が有利に働いた面はあるだろう。とはいえ、決定的な3馬身差。オルフェーヴル産駒としても、ジャスティンに続く連日のダートグレード制覇となり、種牡馬として新たな面がかいま見えた2日間となった。
2着はマドラスチェック。2番手を追走からいったん先頭に立ち、手綱をとった船橋の森泰斗騎手も「展開は完璧でしたね。馬体を併せることができれば違ったと思います」と話した。結果的に勝ち馬の切れに屈したかたちだが、「少し緩さも感じたから、次は良くなるはず。JBCでの逆転を狙います」とも。すでにJBCレディスクラシックJpnⅠの騎乗依頼も受けているとのことで、本番へ向けて意気込みを見せた。
2018年にこのレースを制しているプリンシアコメータが3着。外枠もあって終始外を回されたが、岩田康誠騎手は「こんな馬場だったし、ハナか番手なら2着はあったかな。よく踏ん張ってくれた」と、奮闘したパートナーをねぎらった。本質的に力の要る馬場のほうが合うタイプで、スピード決着に対応しきれなかった印象。馬場次第で巻き返しも可能だ。
中団から脚を伸ばしたサラーブ(大井)が5着で、地方勢では最先着。同時に、グランダム・ジャパン古馬シーズンにおいて20ポイントを加算し、総合優勝を果たした。「(総合優勝で)ひとつの仕事はできたかな。前走で1400メートルを使っていたからピリッとしていた。マイルくらいがいい」と御神本訓史騎手。適距離なら今後のダートグレードでもチャンスがあるだろう。
前日の東京盃JpnⅡでは戸崎圭太騎手がジャスティンで勝利し、御神本騎手のブルドッグボスが2着。マルシュロレーヌの鞍上、川田将雅騎手の父は佐賀競馬の調教師で、2、3着馬の手綱をとったのも、地方競馬にゆかりのある騎手だった。矢作調教師も含め、今年のダートの祭典は“地方ブランド”が大いに盛り上げてくれそうだ。
Comment
川田将雅 騎手
初ダートだった前走で素晴らしい勝ち方をしてくれましたが、本当にダートが合うのか心配していました。でも、今回の馬場でも力を発揮してくれて、やはりダートが合うのだなと実感しました。今回の結果で高い素質を示してくれたので、このままいい時間を過ごして、本番を迎えられたらと思います。
矢作芳人 調教師
2日続きで、地元でいい思いをさせていただいて嬉しいですし、馬に感謝しています。能力は信頼していましたが、こういった馬場ということで不安を抱えながら見ていたのですが、4コーナーで大丈夫かなと。強い競馬だったと思います。このあとはJBCレディスクラシックに向けて調整したいと思います。