40戦22勝2着10回、連対率80%。アラブ王国だった福山を背負って立ち、アラブ最後の怪物として意地とプライドをかけて走り続けた現役時代。04、05年のNARグランプリアラブ最優秀馬に輝き、その力を誇示し続けました。
そんなスイグンが、那須の地方競馬教養センターで第二の生活を送り始めてから約3年。教養センターは訓練馬57頭とポニー3頭で構成されていて、ほとんどの訓練馬は地方競馬卒業生たち。その中でも群を抜いた実績で、現在は教養センターの看板馬として君臨中です。
騎手候補生に競走馬の背中や手綱の感触を教えていく大事な役割を担う訓練馬。現在のスイグンは、騎手候補生が乗るための基本馬術用に調教されているところだそうです。現役時代はハミをかけて前に行くことを教えられていきますが、今では目的が大きく変わります。「ゆっくり駆け足をして掛かっていかないよう、経験のない生徒が乗っても危なくないように調教している過渡期と言ったところでしょうか。クセのある馬じゃないし、物覚えがよくて賢いですよ」と養成課長の清水目稔さん。扱いやすいそうですが、他馬が近くに見えると抜かそうとする気持ちは今でも残していて、闘争心は健在。
教官のひとりで、養成課主査の坂本朋康さんがスイグンの調教を行っています。生徒への指導を始める前の朝5時過ぎからトレーニングを開始。内容は体全部の筋肉を使って走らせる基本調教と連続障害飛越などです。「体が柔らかいので、首を後ろに曲げて、トモの内股をかいているときもあるんですよ(笑)」(坂本さん)。朝7時以降からは馬房でのんびり過ごすのが日課。
9歳になりましたが、飼い葉食いも良くて内臓面も強く健康体。「運動前に坂路を歩かせるんですが、いつも一緒の場所2か所にボロをするんです。健康のバロメーターですね」(坂本さん)。
今は現役時代にお馴染みだった「水軍」メンコは着用しないでスッピンで走っているそうですが、精かんな顔つきは変わりません。青草が大好きで、写真のように洗い場の芝生の上でブレイクすることもしばしば。565キロの体重があり、現役時代より50キロ以上も増えてふっくらさせています。
「20歳過ぎても基本馬術で活躍する馬もいるんです。スイグンも素養があるし、いい訓練馬になっていくと思います。25歳くらいまで息の長い活躍をして、教養センターの伝説の訓練馬になって欲しいですね」。(清水目さん)
なお、教養センターの話題は教養センター便りでお楽しみ下さいね。
http://www.keiba.go.jp/nar/center01.html
昨年10月10日の記事には、スイグンが馬術大会デビューした話題も紹介されています。