当コーナーでは、地方競馬に関するイベントや注目レース等の気になる話題を写真と共にご紹介します。
フリオーソ引退
2013年01月18日
取材・文●斎藤修写真●いちかんぽ、NAR
最高の舞台で戦い続けた7年間
種牡馬として新たなスタート
2歳から8歳まで、常にダートのトップレベルの舞台で戦い続けたフリオーソが、2012年12月29日の東京大賞典GⅠを最後に引退した。
7年もの競走馬生活をまっとうしたフリオーソでは、『無事是名馬』という言葉が思い浮かぶ。
12年東京大賞典 4コーナーを先頭で通過する
ただ、無事是名馬という言葉には、大レースは勝てなかったものの、よく無事に走ってくれた、というニュアンスがある。そういう意味では、フリオーソは無事是名馬でありながら最強馬でもあったと言えるかもしれない。引退レースとなった東京大賞典GⅠでは、全盛時と変わらぬ果敢な逃げを見せた。4コーナーまで手ごたえ十分。もしやオグリキャップのような引退レースでの劇的な復活があるのかとも思わせた。しかしさすがに直線では一杯になり、結果は6着。それでも地方馬最先着という意地は見せた。
4度の年度代表馬、7年連続最優秀馬
06年全日本2歳優駿
フリオーソは、デビュー3戦目の平和賞で2着に敗れたものの、5番人気で臨んだ全日本2歳優駿GⅠを制し、一躍注目の存在となった。
07年ジャパンダートダービー
南関東3歳三冠では、羽田盃3着、東京ダービー2着と敗れたが、北海道から移籍してきたトップサバトン、アンパサンドらを相手に、ともにタイム差なしの接戦だった。そしてJRA勢も相手となったジャパンダートダービーJpnⅠでは2着のアンパサンドに2馬身半差、JRA勢はさらに離れて3着以下と、完勝とも言える内容で3歳ダートの頂点に立った。4歳時には帝王賞JpnⅠで勝利し、2歳時から3年連続でのGⅠ・JpnⅠ制覇を果たした。
10年帝王賞
5歳時はダイオライト記念JpnⅡでの1勝のみでGⅠ・JpnⅠ制覇は途切れたが。6歳時には再び帝王賞JpnⅠを制して復活ともいえる走りを見せた。7歳時はわずか3戦だが、川崎記念、かしわ記念とJpnⅠ・2勝を挙げ、JRAのフェブラリーステークスGⅠではゴール前強襲という、それまでには見せたことのなかったレースぶりで2着。3歳時のジャパンダートダービー以降、戦いの舞台はすべてJpnⅡ以上で、連対を外したのがわずか一度だけだった6~7歳時がフリオーソのピークだったかもしれない。現役最後の年となった8歳時には、勝ち星こそ挙げられなかったものの、川崎記念3着、かしわ記念2着と、まだまだJpnⅠでも上位争いできる力があることを示した。
トランセンド、スマートファルコンらダート路線の強豪を
まとめて負かせた10年日本テレビ盃
GⅠ・JpnⅠで6勝、2着11回という数字もすごいが、そこで戦ってきた相手には、ヴァーミリアン、ブルーコンコルド、フィールドルージュ、ボンネビルレコード、サクセスブロッケン、カネヒキリ、エスポワールシチー、テスタマッタ、トランセンド、そしてスマートファルコンと、そのときどきのチャンピオン級のGⅠ・Jpn馬がズラリと並ぶ。この馬名を見るだけでも、フリオーソがいかにレベルの高い相手と戦い続けてきたがわかろうというもの。まとめて負かせた10年日本テレビ盃
11年かしわ記念
フリオーソの鞍上には、デビューから3戦は石崎隆之騎手。全日本2歳優駿GⅠで勝利に導いたのは内田博幸騎手。ジャパンダートダービーJpnⅠは今野忠成騎手。そして4歳時のダイオライト記念JpnⅡからは戸崎圭太騎手が主戦となり、南関東のトップジョッキーが次々とその鞍上を務めてきた。また、ミルコ・デムーロ騎手では川崎記念JpnⅠでヴァーミリアンと叩き合ってレコード決着の2着があり、フェブラリーステークスGⅠの2着では新たな一面を引き出して見せた。3歳、4歳、6歳、7歳時と、4度に渡ってNARグランプリの年度代表馬に選出されたのは驚異的な記録だが、それ以上に評価されるべきは、2歳から8歳まで、現役生活すべての年で世代ごとの最優秀馬に選ばれてたことだろう。7年もの長きにわたって、常に最高のパフォーマンスが発揮できる馬などそういるものではない。馬自身ももちろんだが、厩舎関係者にも最大の賛辞を贈りたい。
大井で船橋で、多くのファンに見送られた
引退レースとなった東京大賞典GⅠ当日の最終レース後には、同じくこれを最後に引退するボンネビルレコードと合同での引退セレモニーが行われた。
戸崎騎手の挨拶では、一番思い出に残るレースとして、地元船橋でのJpnⅠ勝利となったかしわ記念を挙げた。そして、フリオーソに声をかけるとしたら、という司会者の質問に対しては、感極まって声にならない場面があった。戸崎騎手はフリオーソの主戦となった08年に初めて全国リーディングとなり、以来、地方競馬のトップに君臨し続けているが、その活躍はまさにフリオーソとともにあった。
川島正行調教師は思い出のレースとして帝王賞を挙げ、「涙の出る思いで戸崎君と2人で喜びました」と語った。
年が明けて1月7日には、あらためて地元船橋競馬場でも引退セレモニーが行われた。フリオーソは、かしわ記念を制したときの11番のゼッケンをつけ、苦楽をともにしてきた波多野敬二厩務員に引かれて登場。セレモニー開始を待つ間、検量室前のスペースを引かれているときに、フリオーソは何度か嘶いた。レースに出走するときとは違う、いつもとは違う雰囲気を感じとったのだろうか。すると調教パートナーである佐藤裕太騎手がフリオーソにまたがり、落ち着かせた。
鞍上が戸崎騎手に替り、ファンの見守る中、フリオーソは馬場を1周。スタンド前の直線はキャンターで最後の勇姿を披露した。
13年1月7日の引退式で戸崎騎手を背に“ラストラン” |
また最終レース終了後のパドックでは、抽選で選ばれたファンとの口取り撮影会も行われた。何グループかのファンが入れ替わる間もフリオーソは泰然自若としたまま。しかしその撮影を終えて厩舎に戻るときだけ、なぜか厩務員さんを引きずるようにして小走りで去っていく姿が印象に残った。
走り抜けた7年間、夢は産駒へと
冒頭で無事是名馬と書いたが、フリオーソは常に万全の状態にあったわけではない。現役生活後半は、自身の脚元との戦いでもあった。7歳時にはわずか3戦、8歳時には4戦しかできなかったのはこのためだ。
スマートファルコンとの一騎打ちが期待された7歳時の日本テレビ盃JpnⅡでは、最終追い切りのあとに屈腱炎を発症し、レース当日の競走除外。川島調教師は、フリオーソの現役時にはそのことについてあまり語ることはなかったが、引退セレモニーでは、「屈腱炎という悪いところを自分なりにかばいながら我慢して、よく走ってくれました。スタッフのみんなにもご苦労様と言いたい」と感謝を語った。
船橋競馬場での引退セレモニーの翌朝、フリオーソは種牡馬となるため北海道のダーレージャパン・スタリオンコンプレックスへと旅立った。
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