当コーナーでは、地方競馬に関するイベントや注目レース等の気になる話題を写真と共にご紹介します。

第12回 JBC総括

2012年11月12日
取材・文●斎藤修
写真●いちかんぽ、NAR
レディスクラシックで地方馬が健闘
売得金額レコードはIPAT効果か


 川崎競馬場でのJBC開催は、2006年に続いて2度目。その前回は、フルゲート頭数の関係でJBCスプリントが1600メートルのJBCマイルとして行われた。また、JBCマイルとJBCクラシックを2日間に分けての開催だった。今年で12回目のJBCだが、スプリントがマイルとして行われたのも、2日間に渡っての開催も、その06年が唯一。今回の川崎開催では、JBCスプリントがフルゲート12頭(実際には11頭立て)の1400メートルで、また昨年新設されたJBCレディスクラシックが1600メートルで行われた。
 平日の月曜日にもかかわらず、わりと早い時間帯から“賑わっている”と感じるほどの来場者があった。最終的に発表された入場人員は14,797人。前回のJBC川崎開催では、JBCマイルが行われた初日が木曜日のナイター開催で16,638人、JBCクラシックが行われた祝日の金曜日が昼間開催で22,297人。それに比べると今年は少ないが、近年ではネット投票の割合が年を追うごとに増え、どこの競馬場でも収容可能人数自体を減らす傾向にある。川崎競馬場でも古くなった3号スタンドを閉鎖。競馬場のスペースが狭くなったことによる賑わい感だったともいえる。
開門前から大勢のファンが詰めかけた。
特別観覧席は開門前にすでに完売
全国各地のグルメ屋台も集結
 全国各地のグルメ屋台も、こうしたイベントでは定着した。ただ川崎競馬場はスタンド裏のスペースが狭く、あまり人が滞留しない、第1入場門(無料送迎バス乗り場がある入場門)から3号スタンドのあたりに設置されていたのはちょっと残念だった。あのあたりでは、馬券とレースの合間にちょこっとつまむ、というわけにはいかない。ピンポイント予報では夕方以降、雨が心配されたが、傘のいらない霧雨程度ですんだのは何よりだった。

 近年では中央馬と地方馬の力差の開きが顕著になってきているが、地方馬が健闘を見せたのがレディスクラシックだった。
逃げたサクラサクラサクラは3着と健闘した
 1着ミラクルレジェンド、2着クラーベセクレタという決着は、馬連複の1.5倍が示すように多くのファンが予想したとおりだったが、直線あわやのところまで逃げ粘って3着のサクラサクラサクラは大健闘だった。
 サクラサクラサクラは、ノースクイーンカップ(門別)2着、ビューチフル・ドリーマーカップ(水沢)1着、そしてレディスプレリュード7着で、グランダム・ジャパン(GDJ)古馬シーズンは3位だった。2年連続女王となったエーシンクールディは、最終戦のレディスプレリュードで中央勢相手に4着に食い込んで優勝を決めたが、JBCレディスクラシックでは6着。仮にGDJ古馬シーズンの最終戦がレディスクラシックだったら、サクラサクラサクラのほうが優勝していたことになる。地方の牝馬ではクラーベセクレタが抜けた存在だが、この路線でエーシンクールディやサクラサクラサクラなどが善戦を見せたのは、GDJの効果もあった。
 それにしてもミラクルレジェンドは盤石の強さでの連覇となった。牝馬同士のダート交流重賞では3着を外したことがないという安定感は抜群。管理する藤原英昭調教師は、8日前の天皇賞・秋をエイシンフラッシュで、前日のみやこステークスをローマンレジェンドで制していたという勢いもあった。そのローマンレジェンドとミラクルレジェンドは、きょうだいでの2日連続ダート交流重賞制覇となった。
 クラーベセクレタは、ミラクルレジェンドとはこれで5度目の直接対決で、先着したのは今年のスパーキングレディーカップのみ。しかしそれも勝ち馬(スティールパス)が別にいて、2着と3着という結果。ここまでのところはミラクルレジェンドが断然優位だが、この2頭の対決は今後も注目となりそうだ。

 スプリントでも中央VS地方という構図が期待されたが、東京盃を制したラブミーチャンは直線で馬群に沈み、中央勢が掲示板を独占する結果となった。
 岩田康誠騎手はセイクリムズンでレディスクラシックからのJBC連勝が期待されたが、スタートで後手を踏んだことが最後まで影響し、直線伸びてはきたものの2着。勝ったのは逃げて直線突き放したタイセイレジェンドだった。2走前のクラスターカップでも6馬身差の圧勝だったように、この夏以降の充実ぶりが目立っていた。チョウサンペガサスの従来のコースレコードを0秒2更新したが、この川崎1400メートルはダート交流重賞では使われてこなかっただけに、レコード決着はむしろ当然といえるだろう。
 6着に敗れたとはいえ、地方最先着のオオエライジンは積極的なレースぶりが目立った。向正面で内から一気に3番手まで進出したときの勢いは、期待を抱かせた。初めての左回りがスムーズにはこなせないところもあったようで、地元で行われる兵庫ゴールドトロフィーには期待してよさそうだ。

 地方馬に期待馬がいたレディスクラシック、スプリントに対して、クラシックは人気が二分した。中央馬5頭の中でもっとも人気のなかったワンダーアキュートが単勝10.5倍、地方馬の中でもっとも人気となったマグニフィカが72.9倍という極端な人気だ。
 結果もそのとおり、中央勢が掲示板を独占。しかし勝ったのは、5番人気のワンダーアキュートで、2着のシビルウォーを5馬身突き放す強い勝ち方だった。10着に沈んだ東海ステークス以来5カ月半ぶりの休み明けで、陣営も手探り状態だっただけにこの人気も当然だろう。とはいえ、昨年末の東京大賞典ではスマートファルコンと首の上げ下げでの2着があり、常に持てる力を発揮できるわけではないが、それだけの力はあるということ。
 ひとつ残念だったのは、ジャパンダートダービーを制したハタノヴァンクールが補欠1位のまま除外になってしまったこと。ほかに3歳馬ではホッコータルマエ、トリップらの重賞実績馬も除外対象で、中央馬の収得賞金による選定方法は若い馬には厳しい。

 売上面では、今年10月からスタートした地方競馬IPATの影響が気になるところ。
 1日の総売得金額26億9225万2800円は、川崎競馬場における従来の最高記録、92年2月11日(川崎記念当日)の22億6453万3000円を4億円以上も上回った。IPATでの売得金額は9億8597万5800円で、全体の36.6%を占めた。既存の地方競馬のネット・電話投票とIPATを合わせた売得金額が16億5846万2000円だから、そのうちIPATが59.5%を占めたことになる。今まで地方競馬のネット・電話投票で馬券を買っていた人が、今回はIPATで投票したという人も少なからずいるはずで、IPATでの売得額がそのまま増加分ということにはならないが、それでもIPAT発売の効果は大きかったといえよう。何しろバブル期終盤に記録した1日の売得金レコードを大きく上回ったのだ。
 またレースごとの売上げは、レディスクラシック4億675万6700円、スプリント5億6971万7800円、クラシック8億7208万6200円。ちなみに前回川崎でJBCが行われた06年は、マイルが6億6271万100円、クラシックが8億3528万5600円。当時との比較ではスプリント(マイル)こそ86.0%と減ったが、クラシックは104.4%と増加。JBCが2レースだった06年に対して、昨年からレディスクラシックが増えてJBCが3レースになり、普通に考えれば馬券の投票が分散するはずだが、にもかかわらずクラシックが100%超というのは、やはりIPAT導入効果といえそうだ。
 これをきっかけに、引き続き地方競馬の馬券を買うファンが増えてくれればと願いたい。