ファイナルは短距離適性馬が好走
連覇のラブミーチャンはさらに上へ
2年目を迎えたスーパースプリントシリーズで、まず残念だったのは、昨年限りで荒尾競馬が廃止となったことにともない、九州むしゃんよかスプリントがなくなってしまったこと。これによって、園田FCスプリントが、近畿・中国・四国・九州という、かなり広い地区のトライアルとして行われた。あくまでも結果論だが、ファイナルの習志野きらっとスプリントには、昨年は南関東以外からの遠征馬が8頭もいたが、今年は2頭とやや寂しいものになった。
各地のトライアルからファイナルへということで盛り上げるのであれば、少なくともダービーウイークと同様、6地区くらいにトライアルを設定してもいいのではないだろうか。
川崎スパーキングスプリント(トーセンクロス)
川崎スパーキングスプリントでは、いきなり驚かされた。スタートで出負けし最後方からとなったトーセンクロスが、4コーナーでもまだ中団よりうしろという位置取りから差し切って見せた。
しかもゴール前では4頭ほどが競り合う間を割るようにして抜けてきた。出走馬同士の力差がある2歳の新馬戦なら可能性としてそうしたことも考えられるが、古馬オープンの超短距離戦でそういう展開になるとは、まったく想像できなかった。トーセンクロスは、中央から転入してこれが8戦目での初勝利。中央でも好走は1200メートル以下に集中していただけに、やはり距離は短ければ短いほどというタイプなのだろう。
今年、唯一レコード決着になったのが園田FCスプリント。前年が晴れの良馬場だったのに対し、今年は雨の不良馬場で時計の出やすい馬場状態だったこともあったかもしれない。
園田FCスプリント(エイシンマロニエ)
ここはダッシュを効かせて先手を奪った2頭での決着。1番人気のエイシンマロニエが逃げ切ったのとは対照的に、2番人気のタガノブリガデイロは3コーナーまではついていけないような感じで後方に位置し、それでも直線追い込んで2着のグッドリーズンに1馬身差まで迫って力のあるところを見せた。しかしやはりこの小回りの820メートル戦ではダッシュ力がある馬にアドバンテージがある。橋本忠男厩舎のワンツーという結果で、レース後には2頭ともファイナルの習志野きらっとスプリントへ遠征するとのことだったが、エイシンマロニエはその後に骨折が判明。ファイナルにはグッドリーズンだけが出走した。
このシリーズでは「ワンターンに駆ける」というのがキャッチフレーズとなっているが、姫路も含めた兵庫の古馬戦でワンターン(コーナーを回るのが3~4コーナーのみ)のレースは、このレースだけしか行われていない。2年連続でこのレースに出走する馬がいなかったというのは、年にたった一度の特異な距離設定の難しさなのかもしれない。
名古屋でら馬スプリント(ラブミーチャン)
対照的に名古屋でら馬スプリントには昨年の上位3着までが揃って出走し、1、2、5着という結果。勝ったのはラブミーチャンで、結果的にファイナルも連覇となり、あらためて今の地方所属馬ではスピード能力が圧倒的なことを示した。2着は12歳のニシノコンサフォスで、名古屋800メートルはこれで4戦1勝、2着3回。先着されたのはラブミーチャンとキングスゾーンという実績馬だけ。この馬も中央時代にはダート1200メートル戦を中心に使われていただけに、距離適性は大きい。グランシャリオ門別スプリントを制したのは、中央から転入2戦目のアグネスポライト。
グランシャリオ門別スプリント(アグネスポライト)
この馬も中央時代はダートの1000~1200メートルを中心に使われてきたスペシャリストだった。門別では1カ月半ほど前に1200メートルの重賞エトワール賞が行われているが、そのレースを連覇しているプリティゴールドは、昨年のグランシャリオ門別スプリントは5着で、今年は6着。この馬にとっては1000メートルの流れは合わないようだ。ホッカイドウ競馬からは、昨年も今年もファイナルの習志野きらっとスプリントへの挑戦がなかった。長距離輸送に加え、関東地方が梅雨明けで蒸し暑くなるこの時期は、ホッカイドウ競馬の馬たちには遠征のリスクが大きいようだ。
習志野きらっとスプリント(ラブミーチャン)
そしてファイナルの習志野きらっとスプリントは、昨年と同じワンツーという決着。昨年はスタート後から直線までラブミーチャンとジーエスライカーの一騎打ちだったが、今年はジーエスライカーをはじめとする南関東の快速馬たちを先に行かせて、ラブミーチャンは控えて5番手から。しかしラブミーチャンは、3~4コーナーで一瞬にして前をとらえにかかった。さすがにセイクリムズンやスーニなど、中央のダートスプリント路線の一線級と戦ってきただけにスピードが違う。ジーエスライカーとの着差は半馬身差だったが、着差以上の完勝だった。とはいえジーエスライカーも3着のギオンゴールドに6馬身差をつけてスピードのあるところを見せた。
3着のギオンゴールドも、佐賀時代は2010年秋から2011年かけて行われた九州スプリントシリーズで4勝を挙げ、南関東に移籍後も1200メートル以下ではオープンクラスでも常に上位争いをしている。4着のトーセンクロス、5着のバロズハートは、川崎スパーキングスプリントの1、2着馬で、着差はついたものの、スプリント能力の高い馬たちが順当に上位を占める結果となった。
習志野きらっとスプリント連覇を果たしたラブミーチャンは、地方のスプリントチャンピオンとして、今年もJBCスプリントJpnⅠを目指すことになるようだ。しかし今年のJBCは川崎競馬場での開催で、スプリントは1400メートル戦。コーナーを4つ回るため、“ワンターン”のこの路線とはレースの流れが異なる。ラブミーチャンにとっては、昨年2着とまことに惜しいレースをした東京盃JpnⅡのほうが、よりチャンスはあると思うのだが、どうだろう。