第11回JBC総括

2011年11月11日
レディスクラシックの新設が牝馬戦線に好影響
世界レベルの活躍馬登場も、地方馬とは格差も

 第11回を迎えたJBCの大きな進化は、JBCレディスクラシックの新設だろう。21世紀の幕開けとともに、クラシック、スプリントの2レースでスタートしたJBCは、当初からさらに別のカテゴリーのレースを増やしていくという計画があった。しかし昨年までの10年間は、同日に2歳馬の地区重賞が行われたり、大井開催時にはTCKディスタフ(現・レディスプレリュード)が行われてはいたが、JBCとしてのレースを増やすまでにはなかなか至らなかった。今回、レディスクラシックが新設されたことで、JBCはまた新たなステージに入ったといっていいだろう。
 何よりその成果は、中央・地方ともに、早い段階からJBCレディスクラシックを目標に掲げる陣営があったことだろう。それによって、ここに至るダートグレードの牝馬戦線も、例年以上に盛り上がりを見せた。

 もっとも注目されたのはラヴェリータだ。当初は今年春に繁殖入りする計画もあったが、JBCレディスクラシックを目標にするとして、繁殖入りを1年延期。ラヴェリータはその現役続行によって、今年さらに3つのダートグレードタイトルを加え、牡馬とのレースも含めて通算で7つものタイトルを獲得することとなった。
 そしてこの牝馬戦線をさらに盛り上げたのが、女王ラヴェリータに対し、1つ下のミラクルレジェンドが挑むという、対決の構図ができたこと。結果的に、前哨戦のレディスプレリュード、そしてJBCレディスクラシックと、ミラクルレジェンドが連勝という結果になったが、そうした世代交代というのも競馬を面白くする要素のひとつだろう。

 地方勢では、中央のオープンから笠松に転厩してきたエーシンクールディの存在が大きかった。グランダム・ジャパン古馬シーズンを圧倒的な強さで優勝し、レディスプレリュードでは直線半ばまで先頭で粘って3着。本番では残念ながら9着に沈んだが、これはブラボーデイジーにつつかれてオーバーペースになるという不運もあった。

 今回のJBCでもっともメンバーが充実していたのがスプリントではなかっただろうか。連覇を目指すサマーウインドに、一昨年の覇者スーニ。地方勢では、前哨戦の東京盃JpnUであわやの2着だったラブミーチャンに、昨年2着だったナイキマドリード。そして果敢にハナを切ったのも大井の快速馬ジーエスライカーだった。
 JBC創設以前、ダート短距離路線の最高格付はGUの東京盃で、さらに上を目指すとなれば、純粋なスプリンターとしてはちょっと距離が長いフェブラリーステークスGTしかなかった。
 近年、ダート短距離路線の層が厚くなってきたのは、JBCスプリントJpnTという目指すべき明確な頂点ができたことと無関係ではないだろう。一時期勝てなくなっていたスーニが、以前よりも力をつけての復活も見事だった。

 JBCクラシックJpnTでは、地方競馬にとって残念だったのがフリオーソの回避だろう。とはいえ、昨年のJBCクラシック以来負けなしの連勝を続けるスマートファルコンと、ドバイワールドカップ2着の実績があるトランセンドとの対決は見ごたえがあった。
 しかしその2頭があまりに強かったため、地方勢との力差がはっきりしていたのも確か。なんとか3着に食らいついたのもJRAのシビルウォーで、4着以下の地方勢はまったく別のレースをしているかのようだった。
 そうした中央と地方の格差はJBC全体を通していえることで、地方勢でいわゆる「勝ち負け」のレースをしたのは、JBCスプリントで勝ち馬からコンマ2秒差の4着に粘ったラブミーチャンのみだった。JBCレディスクラシックでは中央勢が掲示板を独占。JBCクラシックは、高知のグランシュヴァリエが4着に入ったが、勝ったスマートファルコンからは3秒2もの差がついていた。

 もはや世界的なレベルにまでなった中央勢に対し、地方勢はその差を埋めることができるかどうかが今後の課題となるだろう。

 売上げ面では、当日の総売得金額3,106,840,000円は、昨年の船橋(2,449,902,400円)との比較では126.8%、前回大井の07年(2,781,187,400円)とでは111.7%。それ以前の大井開催では、01年の第1回が3,937,661,900円で、これがJBCの1日売得金額の最高額。第3回、第4回は、ともに36億円台だった。さすがに00年代前半との比較では下がっているものの、その間の競馬全体での落ち込みを考えれば、まずまず健闘しているのではないか。ただし今年はJBCレディスクラシックが新設され、JBCが全3レースになった分の上積みはあったかもしれない。
 逆の要因としては、一部電話・ネット投票のシステム障害で、約1時間にわたり馬券を買うことができなかったファンがいた可能性もあり、年を追うごとに電話・ネット投票の全売上に占める割合が大きくなっている現在だけに、今後の課題として考えなければならないことかもしれない。
 入場人員33,579人は、前回の船橋(30,109人)との比較で111.5%、前回大井の07年(28,166人)とでは119.2%。入場人員の過去最高は、やはり第1回の大井で48,454人となっている。さすがにネット投票が普及した今と10年前を比べるのは厳しいが、今年のナイター開催などを見ていても、来場するファンは少しずつではあるものの戻ってきているようにも感じる。ただし前回07年の大井開催は10月30日の平日ナイターだったのに対し、今回は祝日だった分は割り引いて見る必要があるかもしれない。

 最後に東北の震災復興についても触れておきたい。JBCを含めた大井の開催中、震災復興のシンボルとして場内に多数展示された大漁旗は壮観だった。これは津波によって流されたものを、ボランティアがきれいに洗濯したもの。また、盛岡競馬場の名物・ジャンボ焼き鳥と、水沢競馬場名物・ホルモンの出店販売も大盛況。昨年船橋のJBCでもご当地グルメが盛況だったように、JBC当日には、今後も全国の競馬場の人気グルメなどの販売はぜひとも続けていってほしい。

文:斎藤修
写真:いちかんぽ、NAR