人気馬圧勝の堅い決着目立つも
活躍した母の血を確実に伝える

 今年で4シーズン目を迎えた『未来優駿』。昨年同様、まずは前年の未来優駿各レースの勝ち馬のその後を確認しておきたい。
 
 盛岡・若駒賞を制したベストマイヒーローは、その後も地元のダートでは負けなしのまま岩手ダービー・ダイヤモンドカップで5馬身差の圧勝。大井のジャパンダートダービーJpnI、黒潮盃への挑戦では、それぞれ12着、9着と結果を残すことはできなかったが、今後の巻き返しに期待したい。
 荒尾・九州ジュニアグランプリを制したリョウマニッポンは、九州ダービー栄城賞3着、ロータスクラウン賞2着と惜しいところで勝てなかった。しかし10月10日のA2特別で競走を中止し、残念ながらその後に登録を抹消されている。
 福山2歳優駿を制したユメミルチカラは、3歳になって福山プリンセスカップを勝ち、福山ダービーはムツミマックスに大差で千切られたものの2着。残念ながらその後は勝ち星を挙げられていない。
 

 園田・兵庫若駒賞を制したオオエライジンは、兵庫ダービーを制したのみならず、大井・黒潮盃、笠松・岐阜金賞も制し、デビューからの連勝を9に伸ばしている。年末の兵庫ゴールドトロフィーJpnIIIで、いよいよ中央の一線級との対戦となるようだ。
 門別・サッポロクラシックカップを制したピエールタイガーも北海優駿を制してダービー馬となった。現在は大井に移籍し、古馬B1B2特別を制すなど順調に力をつけている。
 船橋・平和賞を制したのは牝馬のヴァインバッハで、デビュー2戦目での初勝利が重賞勝ち。しかし脚部不安との戦いで、今年10月26日がそれ以来の復帰戦となったが、やや離された6着。残念ながらその後に引退、繁殖入りが決まった。
 名古屋・ゴールドウィング賞を制したミサキティンバーは、駿蹄賞を制し、東海ダービーでは惜しくもアムロの2着。わずかハナ差でダービー馬の称号を逃した。
 興味深いのは、未来優駿を制した7頭のうち、オオイライジン、ピエールタイガー、ベストマイヒーロー、ミサキティンバーと4頭もが大井の黒潮盃に駒を進めていること。勝ったのはもちろんオオエライジンだが、近年では、中央馬が相手となるダートグレードでは荷が重いと考えるのか、地方同士の全国交流である黒潮盃を目標とする有力馬が目立っている。さらに、昨年地方全国交流として復活した岩手のダービーグランプリへという流れができれば、地方競馬全体としても盛り上がるだろう。

 さて、今年の未来優駿は、全国的に人気通りの順当な決着が多かった。単勝ではもっとも配当が高かったものでも、サッポロクラシックカップの840円で4番人気。馬連複で4桁配当となったのはハイセイコー記念の1140円のみで、それ以外はすべて3桁配当。1番人気が連対を外したのはそのハイセイコー記念のみで、すべてのレースで連対馬は4番人気以内。およそ2歳戦とは思えないような堅い決着ばかりだった。
 

 大井・ハイセイコー記念は、2番手追走のドラゴンシップが4コーナー手前で先頭に立つと、直線迫ったアイキャンデイをクビ差で振り切り、牝馬同士での決着。ドラゴンシップは4番人気とはいえ、デビュー戦を8馬身差で圧勝し、注目を集めていた馬だった。
 

 盛岡・若駒賞は、アスペクトがほとんど持ったままで、2着エスプレッソに10馬身差をつけての圧勝。アスペクトの母はアプローズフラワー、エスプレッソの母はパラダイスフラワーと、ともに岩手で活躍した母から誕生した産駒として注目を集めている。
 

 園田・兵庫若駒賞は、3コーナー過ぎで先頭に立ったメイレディが5馬身差圧勝。3戦連続先着されていたアスカリーブルが大井に転厩したための順当勝ち。デビューから5戦連続連対とした。
 

 荒尾・九州ジュニアグランプリは、単勝元返しのガルホームがスピードの違いを見せつけてレコード勝ち。2着にイッツマイプレジャで、08年から4年連続で佐賀勢のワンツーとなった。ガルホームの母アイディアルクインも、佐賀で重賞を勝った活躍馬だ。
 

 福山2歳優駿は、クーヨシンが人気にこたえての完勝で、デビュー2戦目から5連勝。母が福山で活躍したアラブのラピッドリーランということで注目を集めている。
 

 門別・サッポロクラシックカップは、4番人気のエンジェルツイートが逃げ切り勝ち。今年の道営2歳戦線は、飛び抜けた馬こそいないものの、上位は高いレベルで混戦。
 

 名古屋・ゴールドウィング賞は、ゴール前の接戦を地元名古屋のオーリーライアンが制した。2着には笠松のマーメイドジャンプで、ともに金沢の兼六園ジュニアカップに遠征した経験のある馬。
 勝ち馬の血統面では、昨年同様地方競馬らしく、サンデーサイレンスの血を持たない馬が多かった。父がサンデーサイレンス系は、父ジェニュインのメイレディのみ。母系でもドラゴンシップの母の母の父にサンデーサイレンスが入っているのみ。
 新種牡馬の産駒は、ケイムホーム産駒のガルホームのみだが、ケイムホーム産駒は早くから全国的に活躍が目立ている、今年の注目新種牡馬だ。
 ほかでは、クロフネ(ドラゴンシップ)、ティンバーカントリー(アスペクト)、スターリングローズ(クーヨシン)、タイキシャトル(エンジェルツイート)、ダンシングカラー(オーリーライアン)など、やはりダートでの活躍が目立つ種牡馬が圧倒的に多い。
 全体的な傾向としては、堅い決着というのは先にも書いたとおりだが、人気馬が圧勝というパターンが目立った。接戦となったのは、ハイセイコー記念とゴールドウィング賞がともにクビ差で、それ以外は勝ち馬が3馬身以上の差をつけていた。大きな着差での決着というのは、残念ながら2歳馬の層が薄くなっている結果と言えなくもない。
 地方競馬では年を追うごとに2歳戦がホッカイドウ競馬に集約される傾向にあり、北海道と南関東以外は、2歳馬の入厩が目に見えて少なくなっている。そうした競馬場では、2歳戦を組むことが難しくなっている現状から、着差のついた堅い決着が多いというのも仕方のない傾向なのかもしれない。
文:斎藤修
写真:いちかんぽ、NAR