浦和競馬場の悲願でもあったJBC開催。そこに、南関東リーディング・浦和の小久保智調教師は管理馬を計8頭も送り出した。ダート競馬の祭典JBC競走に、ひと厩舎がこれほどの所属馬を出走させるのは記憶にない。レース前、小久保調教師にそんな話題を投げかけてみた。
「ここでちゃんと結果を出さないと、2回目、3回目のJBCが浦和に来ないと思うので、浦和でやってよかったと思われるように、ちゃんと結果を出さなくてはいけないと感じています。地元の利というのはあると思いますし、地方競馬全体が、自分の地元なら中央馬とやり合えるというのがあれば、JBCももっと盛り上がっていくでしょうし、そういう意味でもちゃんと結果を残せるように頑張りたいです」(小久保調教師)。
JBCスプリントJpnⅠには有力候補の一角を担っていた重賞3連勝中のノブワイルドをはじめ、ブルドッグボス、ドリームドルチェ、ジョーストリクトリと4頭を送り出した。
そんな中、御神本訓史騎手とコンビを組んだ6番人気ブルドッグボスが頂点を極めた。地方馬がJBC競走を制したのは、2017年JBCレディスクラシックJpnⅠのララベル以来2年ぶり。JBCスプリントJpnⅠを制したのは、07年に御神本騎手が手綱を取ったフジノウェーブ以来12年ぶり。そして、浦和所属馬がJBC競走を制したのは史上初。
予想通り、左海誠二騎手のノブワイルドが先手を主張していこうとするが、武豊騎手が手綱を取ったファンタジストや、藤田菜七子騎手のコパノキッキングも馬体を併せていき、1コーナーに入るまで激しい先行争いが続いた。ブルドッグボスは中団を追走。
「僕が乗せていただいたここ3走の中では一番軽い動きだったので、これならやれるという感触はありました。最初のゴール板が過ぎてからも、またペースが上がっていって、これはだいぶ速いなぁと感じました」(御神本騎手)。
ノブワイルドが僅差でリードをしていくも、3コーナー手前からコパノキッキングが並びかけていき、最後の直線に入るところでは先頭へ躍り出た。藤田騎手のGⅠ/JpnⅠ制覇が見えてきた瞬間……。
「4コーナーまでうまく誘導できて、追い出してからの反応もよかったですし、キッキングの伸びがあまりよくなかったので、これはつかまえられるなと思いました」(御神本騎手)。
ブルドッグボスが力強く伸びてきて、ゴール前でコパノキッキングをクビ差交わした。測ったかのような鮮やかな差し切り勝ち。勝ちタイムは1分24秒9(重)。3着には後方から伸びてきた大井のトロヴァオ。1番人気に推されていた高松宮記念GⅠの覇者ミスターメロディは6着に敗れた。
地方馬として3頭目のJBCウイナーになったブルドッグボス。中央時代もダートグレード競走で好走してきたが、南関東に移籍後、2年前のクラスターカップJpnⅢで念願の重賞初制覇を飾ると、その年のJBCスプリントJpnⅠでは優勝したニシケンモノノフにタイム差なしの3着に敗れて涙を呑んだことも記憶に新しい。
その後は脚元の不安で1年ほど長期休養に入っていた時期もあったのだが、そこから立て直しての復活劇は、ブルドッグボスの能力の高さはもちろんのこと、陣営の手腕も大きいだろう。
浦和競馬場で初めて行われたJBC開催に地元馬が勝利をするというドラマチックな結果。地元ファンにとっても、こういう瞬間が最高のファンサービスだと思う。
一方、大きな注目を集めていた藤田菜七子騎手が手綱を取ったコパノキッキングにとっては非常に悔しい結果に終わった。
「ナイターじゃない分なのか落ち着きがあって、馬の状態はすごくよかったです。ゲートでかなり待たされましたが、しっかり出てくれて手応えも抜群でした。向正面を過ぎたあたりから自分でハミを取ってくれたので、少し抑えつつ、あまり邪魔しすぎないようにというのは意識して乗りました。チャンスのある馬に引き続き乗せていただきましたが、勝てなかったのは悔しいです」(藤田騎手)。
国内女性騎手初のGⅠ/JpnⅠ制覇に大きな期待がかけられていたが、今後に持ち越された。
Comment
御神本訓史 騎手
浦和で開催されるJBCなので、浦和をはじめ地方馬にもチャンスはあると思っていました。お客様はナナコちゃんのジーワンを見届けたかったと思うのですが、勝ってしまってすいません(苦笑)。ナナコちゃんのジーワンはいずれ見られると思うので今日は素直にブルドッグボスと小久保厩舎を褒めてください。
小久保智 調教師
まだ実感がわきません。春先に復帰して道営で調整をしていただいて、ここが最終目標という感じでやってきました。体調は一番よかったんじゃないかなと感じています。具体的な予定は決まっていませんが、脚元のこともあるので、それを相談しながら次のステップにいきたいです。まだまだやれる仔です。