昨年はこのレースを勝ったタガノゴールドがJBCクラシックJpnⅠに出走し、地方馬最先着となる9着だった。今年の姫山菊花賞は連覇を狙う同馬のほか、浦和と笠松から1頭ずつが参戦しフルゲートとなる12頭立てで行われた。
単勝10倍以下は4頭で2.3~5.6倍と拮抗。というのも、各馬に多少の不安要素があり、1番人気のタガノゴールドは太め感はないもののプラス11キロ、続いて同じ3.9倍だが票数の差で2番人気がメイショウオオゼキで、3番人気はマイタイザン。前者は重賞をなかなか勝ちきれず、後者は重賞7勝と実績では抜けているものの5カ月の休み明け。そして4番人気はストーミーワンダー。1400~1600メートルで重賞4勝を挙げているため、1700メートルという距離が不安視された。しかし、結果的に見事にそれを跳ねのけることとなる。
好スタートから先手を奪ったのはマイタイザン。「休み明けでしたが、スタートはいつも通りでした」と杉浦健太騎手。そこにスーッと外から2番手を取りに行ったのはストーミーワンダー。騎乗予定だった佐藤友則騎手が前週に落馬負傷し、渡邊竜也騎手に手替わりしたが、ストーミーワンダーを管理し同騎手の師匠でもある笹野博司調教師は「2番手を取りに行った判断が冴えていましたね」と潔い騎乗を称えた。一方でメイショウオオゼキはスタートのタイミングが合わず1馬身以上出遅れてしまった。
すぐに隊列は決まったが、「もう少し楽ができればよかったです。ずっとストーミーワンダーにプレッシャーをかけられていました」(杉浦騎手)と、ペースは比較的流れた。中団を追走していたタガノゴールドが向正面半ばから馬群を縫いながら進出。その気配を察してストーミーワンダーもペースアップすると4コーナー手前で早くも先頭に立ち、タガノゴールドを3/4馬身差で振り切って勝利。2馬身半差の3着はエイシンミノアカで、田中学騎手は「いい感じにペースが流れて、今日は集中力も途切れずに走れました。前を捕らえられると思ったのですが」と話した。
ストーミーワンダーは今年に入って重賞5勝目。その充実ぶりは調教にも表れており、「昨年までは1400メートル戦でもかかっていましたが、最近は調教でもかからなくなって今なら1900メートルくらいまでもつかなと思い、このレースを選びました」と笹野調教師。渡邊騎手は飛山濃水杯とくろゆり賞で騎乗し勝利しているが、「調教は基本的に佐藤さん(騎手)がつけてくださっていました。今回は初めて自分で追い切りをつけたんですよ」とデビュー3年目で、また1つ新たな経験を積んだ。
姫山菊花賞はJBC指定競走で、昨年はここからJBCクラシックJpnⅠに出走したタガノゴールドだが、「湿った馬場が苦手とはいえ、ここで負けてしまうようでは……」(新子雅司調教師)と、次走は地方馬同士のレースになる見込み。そして、勝ったストーミーワンダーは「レース前はゴールド争覇(名古屋)から笠松グランプリ(笠松)を最終目標に、というプランを描いていました。また短距離路線にいくかもしれませんが、オーナーと相談したいと思います」と笹野調教師。今後の距離選択を含めて注目が集まる。
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渡邊竜也 騎手
この距離の外枠はスタートで滑ると聞いたので、そこだけ気をつけていました。マイタイザンが逃げたら2番手に行きやすいと考えていて、その通りになったので「行っちゃえー!」と迷いなく行きました。(勝負どころは)もっとじっくり行きたかったですが、馬のリズムで仕掛け、最後まで伸びてくれました。
笹野博司 調教師
外枠は不利と聞いていましたが、逆に揉まれずスムーズに運べるはずだ、とレース前に騎手と話していました。位置取りは任せていましたが、度胸よく2番手に行った時点で勝てる確率はかなり上がったと感じました。地元では(渡邊)竜也と勝ったことがありましたが、他地区では初めてなので嬉しいです。