ダート3歳戦線では、無敗のままジャパンダートダービーJpnⅠを制したクリソベリル、ダート初参戦でユニコーンステークスGⅢを制したワイドファラオらは休養。出走してきたのは、秋の古馬との対戦に向けてステップアップしたい馬たち。
メンバー中唯一の重賞勝ち馬は、2歳時に兵庫ジュニアグランプリJpnⅡを制したデルマルーヴルで、その後は全日本2歳優駿、ジャパンダートダービーという2歳、3歳のダート頂点を争うJpnⅠでともに2着。その間にはドバイのUAEダービーGⅡにも遠征して4着と好走。そうした実績が買われ1番人気に支持された。さらに兵庫チャンピオンシップJpnⅡでクリソベリルの2着だったヴァイトブリック、ユニコーンステークスGⅢの除外を挟んで未勝利勝ちから3連勝中のサトノギャロスと、3頭が人気を集めた。
スタート後は激しい先行争いとなった。1コーナーまで5頭ほどが行く気を見せた中で、ハヤブサナンデクン、サトノギャロスが互いに譲らず2ハロン目に10秒5という速いラップを刻み、最初の3ハロンが34秒6という短距離戦のようなハイペース。これではさすがに先行勢は厳しい。
注目のデルマルーヴルはスタート後こそ先行争いに加わる感じだったが、1コーナーを回るところでは控えて中団。向正面の中間あたりから徐々に位置取りを上げていき、4コーナーでは逃げていたハヤブサナンデクンの直後。直線を向いて前をとらえ先頭に立った。道中はラチ沿いのコースロスのないところを通ってきて、人気馬としてはまったくの正攻法。直線半ばで人気の一角サトノギャロスも競り落とし、完璧な勝ちパターンに思えた。しかし前述のとおりのハイペース。勝ちにいかなけれなならない立場ゆえ、その先行勢をみずから負かしにいく展開はいかにも厳しいものだった。
そして4コーナーでも中団よりうしろから直線大外を伸びて差し切ったのが、10番人気の伏兵ハヤヤッコ。デルマルーヴルは粘りきれずクビ差2着。さらに半馬身、クビ、半馬身という差で5着まで接戦。3着に勝ち馬と同じような位置を進んだトイガー、4着には4コーナーでも12番手だったブルベアイリーデが入り、先行争いから2番手を追走したサトノギャロスがようやく5着に粘った。
2着に負けたとはいえ、先行勢総崩れという厳しい流れでもっとも強い競馬をしたのがデルマルーヴルだった。管理する戸田博文調教師の「勝負だから仕方ないです。こちらが先に抜け出した分と、勝ち馬が見えないところから伸びてきた分です」というコメントからもそれがわかる。
一方、勝ったハヤヤッコはこれまで好位でレースをすることが多かったが、先行争いが激しくなった今回は控えて後方から。今回初騎乗となった田邊裕信騎手は、「今日はメンバーも強かったんですけど、まさか勝ちきってくれるとは思いませんでした」とのことだから、無理には勝負にいかず、無欲のレース運びが勝利につながった。
ハヤヤッコは、祖母シラユキヒメ、母マシュマロから3代続く白毛。同じく白毛でおばにあたるユキチャンは、中央在籍時に関東オークスJpnⅡを制し、川崎移籍後にもクイーン賞JpnⅢ、TCK女王盃JpnⅢを勝ってダートグレード3勝を挙げたが、ハヤヤッコのこの勝利は白毛馬によるJRA重賞初勝利となった。「距離の融通もききそう」(田邊騎手)とのことで、今後地方のダートグレードに出走してくれば盛り上がることだろう。