混沌とするダート牝馬路線を象徴するような、実績馬と新星による対決構図。昨年の覇者プリンシアコメータと、この路線の安定株ラビットランに対し、ともに前走で重賞初制覇を果たしたファッショニスタとアンデスクイーン、3歳の新鋭マドラスチェック。これらJRAの面々に、地方勢がどう絡むか。今後の趨勢を占う重要な一戦となった。
地元・大井のクレイジーアクセルがダッシュを利かせて逃げ、2番手に1番人気のファッショニスタ、その外にミッシングリンク(浦和)がつける展開。淀みないペースで流れるなか、プリンシアコメータ、アンデスクイーン、ラビットランといった有力どころは、中団から後方を進んで機をうかがっていた。
勝負どころでも先行勢のペースは落ちず、直線に向くとファッショニスタがクレイジーアクセルに並びかける。このままファッショニスタが横綱相撲で押し切るかと思われた瞬間、いつの間にか位置取りを上げてきていたアンデスクイーンが強襲。ファッショニスタも必死の抵抗を見せたが、結局は勢いにまさるアンデスクイーンがアタマ差で制し、ブリーダーズゴールドカップJpnⅢに続く重賞連勝を果たした。
レース前半はインコースを進んでいたアンデスクイーンだったが、3コーナーの手前で外に持ち出すと勢いよく上昇。4コーナーではだいぶ外を回らされたものの、直線で鋭く伸び、最後は力でねじ伏せるような強い勝ち方だった。「行き脚がつかず不安になったけど、馬は道中も堂々としていた」と戸崎圭太騎手。JRAオープンの牡馬とも互角の立ち回りを演じてきたことで、馬も自信をつけたのだろうか。ゴール前で遊ぶ面を見せながらも勝利し、牝馬路線の主役に躍り出た。
先団から抜け出す王道の競馬を演じたファッショニスタ。直線半ばでアンデスクイーンに交わされたが、ゴール前で盛り返してアタマ差の2着と、際どい決着に持ち込んだ。もともと1800メートルでは集中力の持続が鍵とされてきたが、大野拓弥騎手は「いいかたちで競馬ができた。今回くらい集中して走れれば崩れないと思う」と好感触。1400メートルで好成績を残してきたうえに、川崎のスパーキングレディーカップJpnⅢでタイトなコーナーも克服済み。今年のJBCレディスクラシックJpnⅠが行われる浦和1400メートルの適性は、この馬が一番高いかもしれない。
1月のTCK女王盃JpnⅢ(3着)以来の実戦だったラビットランが3馬身半差の3着。30キロの馬体増だったが、「成長分だと思う。太め感はなかった」とミルコ・デムーロ騎手。今回は出遅れが響いただけで、闘志はまだまだ衰えていない。1400メートルは若干忙しいものの、芝重賞を勝っていることから浦和の軽い馬場は合いそうで、JBCに駒を進めてくれば引き続き注目の存在だ。
このレディスプレリュードJpnⅡは、グランダム・ジャパン古馬シーズンの最終戦。暫定トップだったクレイジーアクセルが4着に入って22ポイントを上乗せし、総合優勝を果たした。同ポイントで首位に並んでいたジェッシージェニーが回避したことでほぼ優勝を手中に収めていたが、真っ向勝負を挑んで地方最先着。吉原寛人騎手も「一瞬、夢を見た。最後まで踏ん張ってくれたし、持ち味を生かしてくれた」と、女王に恥じない走りを見せた。
今回の勝利でJBCレディスクラシックJpnⅠの優先出走権を手にしたアンデスクイーンだが、西園正都調教師は「1400メートルは微妙。賞金を加算することができたので、JBCクラシックという選択肢もあるかなと思います」と話す。もちろん牡馬相手となれば一筋縄ではいかないが、今の勢いと充実ぶりが本物であることは間違いない。今後の路線選択に注目が集まる。
Comment
戸崎圭太 騎手
出脚がつかなくて後ろの位置取りになりましたが、そのあとの手応えは終始よかったし、追い出してからもしっかり反応してくれました。先頭に立ってから遊ぶ面を出して差し返されそうになりましたが、馬としては余裕もあったのかなと思います。使うたびに調子が上がってきているし、今後も楽しみです。
西園正都 調教師
前走以上の状態だったので期待していました。予想外の展開になって、1コーナーで挟まれたのもあってヒヤッとしましたが、3コーナーで外に出してからファッショニスタに取りつくことができたので、安心して見ていました。ハートが強く、どこにいっても動じないのが、この馬の武器です。