ホッカイドウ競馬の現役古馬最強、スーパーステションは直前まで出走を迷っていたようだが結局回避、モルトベーネが参戦した。
注目となったのは、ここまでダートグレード4勝の4歳馬グリム。昨年8月のレパードステークスGⅢを制して以降、地方でも中央でも3着以内を外していない。
またレースを興味深いものにしたのが、芝の重賞タイトルホルダーの参戦。逃げにこだわるマルターズアポジーはダートでもそのスピードが通用するのかどうか。一昨年2歳時にホープフルステークスGⅠを制し、クラシック路線での活躍が期待されたタイムフライヤーは、おじにJBCクラシック(2回)などダートGⅠ/JpnⅠで5勝を挙げたタイムパラドックスがいるという血統だ。
行きたい馬が何頭もいたため、初ダートだったマルターズアポジーが1番枠に入って行けるのかどうか。果たして、そのマルターズアポジーはゲートが開いて一完歩目に躓いた。機先を制したのが、3番枠のドリームキラリだった。外枠からリアンヴェリテが並びかけ、1~2コーナーを回るところでも互いに譲らず、すぐに立て直したマルターズアポジー、さらにタイムフライヤーも続き、5番手以下は離れて縦長の展開となった。
最初の100mが6秒5で、そのあと200mごとに10秒6、11秒4、11秒9というラップは、いかにも先行勢には厳しいペース。それゆえ中団よりうしろに控えた馬たちが台頭することになった。
そうしたハイペースで存分に持ち味を発揮したのがモズアトラクション。2コーナーを10番手あたりで回ると、じわじわと位置取りを上げていった。3~4コーナーではコースロスのない内を回り、4コーナーでは先頭を射程圏にとらえる5番手。直線を向いて外に持ち出されると、先頭に立っていたリアンヴェリテ、タイムフライヤーを並ぶ間もなくとらえて突き抜けた。
中団から勝ち馬よりひと脚早くレースを進めていたハイランドピークが1馬身半差2着。4コーナーでもまだ9番手だったサトノティターンがさらに1馬身1/4差で3着に入った。
勝ったモズアトラクションは、5歳にしての重賞初制覇。今年5月の平安ステークスGⅢでは、その後帝王賞JpnⅠで2着に入るチュウワウィザードにハナ差2着、3着のオメガパフュームには先着していただけに、あらためてここで能力の高さを見せた。
鞍上の藤岡康太騎手は、「リズムはよかったですし、流れも速かったので、この馬にとっていい展開になりました。3コーナーから追い上げて行く脚がすごくよかったので、うまく内をさばくこともできました」という、ペースや展開も味方しての会心の勝利となった。
期待されたグリムは、スタート後こそ先行4頭の直後にいたが、速いと見ると向正面では中団まで下げての追走。しかしそこから盛り返すことはなく、直線でもまったく手応えがなく7着だった。「今日は今までとは違う形になってしまいました。速い流れのレースも経験がないのですが、4コーナーで手応えがなかったのは初めてです」と武豊騎手。中央のダートでも結果を残しているが、ゆったり流れる地方のダートでこそ力を発揮するタイプという可能性はある。
初ダートだった1頭、タイムフライヤーは6着だったが、ハイペースの先行集団を3番手で追走。直線では先頭に並びかける場面があり、勝ち馬からコンマ5秒差ということでは、血統が示すとおりのダート適性は見せた。
ホッカイドウ競馬から参戦のモルトベーネは無理せず中団を追走。3コーナーあたりで一気に押し上げた勝ち馬についていくことができず9着。輸送での馬体減(マイナス22キロ)があり、経験のないハイペースにも対応できなかったようだった。とはいえ、「きつい競馬で揉まれたことは、次走以降に向けて少なからず収穫になったと思います」(田中淳司調教師)という前向きなコメントも聞かれた。