今年のJBCの舞台は“浦和オーバルコース”。全国でも類を見ない左回り直線220メートルのコースだけに、その適性が重要な要素となる。JBCスプリントJpnⅠはもちろん1400メートルで行われるだけに、今回のレースは前哨戦としての重要度がよりいっそう増したといえる。
昨年のJBCスプリントJpnⅠ、今年初戦のフジノウェーブ記念はともに最下位に敗れたノブワイルドだったが、その後は復調。習志野きらっとスプリント、プラチナカップで2週連続重賞制覇を果たすなど、状態を上げてここへ駒を進めてきた。「脚元の痛いところがなくなって、しっかり攻めることができている。覚醒した感じがあるし、この馬の競馬ができれば」と、レース前に小久保智調教師は話していたのだが、その言葉通り、充実ぶりとコース適性の高さを見せつける逃げ切り勝ちで連覇を達成。同舞台で行われるJBCスプリントJpnⅠへ向け、最高のステップを踏んだ。
内枠から好ダッシュを決めたノブワイルドは、2番手に同厩舎のエッシャーを従えるかたちで馬群を誘導。3コーナー過ぎで徐々に後続を引き離しにかかると、セーフティリードを保って直線へ。JRAのワイドファラオとヤマニンアンプリメ、ノボバカラも脚を伸ばしてきたが、自分の競馬をしっかり演じきったノブワイルドには及ばなかった。
3コーナーから他馬を引き離しにかかったあたりは、前走のプラチナカップのVTRを見るようだった。「あの時点で“これなら”と思ったね」と手綱をとった左海誠二騎手。「以前よりゲートでおとなしくなって、それでいてあの速いスタート。大人になったし、力をつけている」と、手放しでパートナーの成長を喜んだ。
この日はノブワイルドのオーナーであるTUBEのボーカル・前田亘輝さんも競馬場で観戦し、表彰式に姿を見せた。「さすが小久保先生ですし、本当にすごい馬。(昨年のJBCが開催された)京都の馬場は合わなかったけど、今年のJBCがベストの浦和で行われるのも彼の運命。楽しみです」と、笑顔で喜びを語った。
一方、JRA勢では3歳馬のワイドファラオが2着。先団からじわじわと追い上げたが、1馬身半差まで詰め寄ったところがゴールだった。福永祐一騎手は「初物づくしだったし、砂が滑る感じがあって走りにくそうだった。それでも2着に踏ん張ってくれたから」と一定の評価。3着のヤマニンアンプリメ鞍上の岩田康誠騎手も「外枠もあってうまく先行できなかったけど、このコースもうまく走れていたし、JBCへ向けていい経験になった」と収穫を口にした。
JBCへ向け、各陣営が思惑を抱いて臨んだ今回の一戦。ノブワイルドは充実ぶりを、ワイドファラオは古馬初挑戦でダート路線での地力上位を、ヤマニンアンプリメは浦和コースでの走りを、それぞれ確認できたに違いない。来たる11月4日、各馬がどんな走りを見せるか楽しみになった。
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左海誠二 騎手
自らハミをとってくれる馬で、リズムを崩さずに走らせることを考えていました。ゲートでうるさい面もなくなって、落ち着きが出てきました。それで、あのスタートを決めてくれるわけですし、大人になったなと感じます。力もつけているから、今後も結果を残せるように頑張りたいと思います。
小久保智 調教師
不安が解消されて、すごく前向きになってきたことが、今の結果につながっていると思います。追い切りのときから、非常に動きがいいと思っていました。ただ、道中で少し気負っていたのは心配なところですね。気を引き締めて、次走予定のJBCスプリントへ向けて仕上げていきます。