令和初のJBC競走として実施されたJBCレディスクラシックJpnⅠは、武豊騎手のヤマニンアンプリメが差し切り勝ち。武騎手はこの勝利で地方競馬での全GⅠ/JpnⅠの勝利騎手として名前を刻むことになった。
その道中には激しいものがあった。前日の夜に降った雨の影響で、前半戦の時計は全体的に速め。おそらく各騎手の頭にはそのことが入っていたのだろう。ゲートが開くと多くの騎手が前の位置を取りに行った。
そのスタートから200メートル足らず、1周目のゴール前でアクシデントが発生した。タイセイラナキラ、アップトゥユー、ゴールドクイーンが先手を奪おうとダッシュ。そこに1番枠からスタートしたモンペルデュがタイセイラナキラの内側から先行集団に加わろうとしたのだが、行き場がなくなるかたちになって戸崎圭太騎手が落馬(競走中止)。その部分の内ラチは大きくへこんでしまった。
11番枠からのスタートだったファッショニスタは、その影響を受けることなく4番手を追走。逆にレッツゴードンキは先行勢の後ろでインコースに進路を取ろうとしていたため、そのアクシデントを避けて急ブレーキ。最後方からの競馬になってしまった。
一方のゴールドクイーンはマイペースの逃げが続き、3コーナーでは2番手に浮上したファッショニスタとの差がおよそ3馬身。そこに、2コーナーあたりでは隊列の中ほどにいたヤマニンアンプリメが一気に近づいてきた。その勢いは遠くからでも感じられるほどで、みるみるうちに各馬を追い抜いて、残り400メートル地点で2番手に上昇。それでも4コーナー手前では先頭まで2馬身ほどあった。
しかしその差は一完歩ごとに縮まっていった。最後の直線に入ったところではおよそ1馬身差になり、残り100メートル付近で並び、ゴール地点ではゴールドクイーンに2馬身差をつけて勝利。
その内容に、ゴールドクイーンの手綱を取った古川吉洋騎手は「この馬のペースで走れましたが、わりとすぐに(ヤマニンアンプリメに)来られましたね」と苦笑い。それでも3着のファッショニスタには6馬身差をつけているのだから、今回は相手が悪かったということになるのだろう。
3着馬から1馬身半差の4着には、川崎のラーゴブルーが入った。「手応えはそれほど良くなかったのですが、絞れたぶん(前走よりマイナス10キロ)、動くことができたと思います」と、鞍上の吉原寛人騎手は話した。
しかしながら1着馬と2着馬のスピードは圧倒的で、浦和の同じ距離で行われているダートグレードでは、2000年のさきたま杯JpnⅢ(当時)以来となる1分24秒台。2着に入ったゴールドクイーンの走破タイムは、続くJBCスプリントJpnⅠの勝ち時計と同じだった。
その戦いを制した長谷川浩大調教師は「クラスターカップを勝ったあと、東京盃に行く選択肢もあったのですが、ここが目標だったのでオーバルスプリントにしたんです。そのときに浦和競馬場を経験したことが、ここで生きたのかもしれませんね」と話して、感無量という表情に。開業1年目でのJpnⅠ制覇という快挙は、長谷川調教師が調教助手時代からたずさわっていた馬がもたらすことになった。
Comment
武豊 騎手
ゲートでうるさい面があると聞いていましたが、いいスタートが切れて、いい位置につけられました。向正面でゴーサインを出したときの反応も良くて、逃げた馬とは離れていましたが、つかまえられるんじゃないかと感じました。馬も2度目の浦和競馬場ということで、いい精神状態で臨めていたと思います。
長谷川浩大 調教師
前の日の雨で展開的にどうかと心配しましたが、いい流れになってくれました。オーバルスプリントは外枠で3着でしたが、今回は枠順の運もありましたね。前走後は満足のいく調教ができましたし、最後の直線ではこれまでで一番というくらいに叫びました。(師匠の)中村均先生にもいい報告ができます。