牝馬限定戦になって6年目を迎えたブリーダーズゴールドカップJpnⅢ。今年は地方他地区からの参戦がなく、JRA5頭と北海道6頭というメンバー構成になった。となると、JRA勢に人気が集中するのは当然のなりゆき。JRA勢でもっとも人気のなかったビスカリアが単勝10.7倍だったのに対し、北海道勢で最上位人気のアルティマウェポンは109.7倍。それでもなんとか意地を見せたいところだったが、昨年に続いてJRA勢が5着までを独占する結果になった。
台風10号は遠く離れた西日本にあったが、その影響からか湿度が高め。馬場状態は稍重で、前半戦から馬場の中ほどを通った差し馬が台頭するケースが目立っていた。
しかしそれは、関東オークスJpnⅡを逃げ切りで制したラインカリーナには無関係。2番枠から好スタートを切って、前走の再現を狙うべく先頭に立った。
そこにプレッシャーをかけてきたのが、前年の2着馬であるプリンシアコメータ。岩田康誠騎手はラインカリーナを右斜め前に見る位置で2番手をキープする作戦を取った。そうなると逃げるほうは厳しくなるが、ラインカリーナ鞍上の武藤雅騎手は「それでも落ち着いたペースで進められました」という手応えで逃げ切りを狙っていった。
向正面での隊列は長く、しかし4コーナーに入るあたりでは5番手までがJRA勢。レースを引っ張る2頭のうしろでクイーンマンボがインコースから差を詰めにかかり、アンデスクイーンは外を回って上昇してきた。船橋の森泰斗騎手を配して臨んだビスカリアは「馬運車のなかで目をこすってしまった」(担当調教厩務員)という影響もあって、馬体重が前走比でプラス10キロ。やや離れた5番手で最後の直線を迎えた。
逃げ粘るラインカリーナに、並走するプリンシアコメータ。クイーンマンボは直線で伸びを欠き、2頭の争いにアンデスクイーンが加わってきた。残り100メートルあたりからは3頭の攻防に観客の目がくぎづけ。どの馬が勝ってもおかしくないように映ったが、アンデスクイーンが半馬身差で激闘を制した。
アンデスクイーンは昨年のJBCレディスクラシックJpnⅠに準オープンの身で挑戦して5着に入り、その年末にオープン入り。西園正都調教師は「賞金を加算できたのは大きいですね」と声を弾ませた。
アンデスクイーンの馬体に隠れるかたちでの2着争いは写真判定。スローVTRでも判別できないほどの僅差の勝負は、プリンシアコメータがハナ差先着してラインカリーナは3着。判定写真を見ると、その差はわずか1スリットだった。
徐々にクラスを上げて、重賞を制するまでに成長したアンデスクイーンは5歳。この馬はいわゆる“クラブ馬”で、例外規定はあるものの、基本的に現役は6歳の3月までとなる。「この秋はJBCレディスクラシックへという話になるんでしょうけれど、1400メートルですからね」と、西園調教師。「来年の川崎記念を引退レースにしたいので」と考えているそうだ。
Comment
戸崎圭太 騎手
レース前はある程度はいい位置につけたいと考えていましたが、スタートから行き脚がついて、スムーズに流れに乗れたと思います。勝負どころでは前の2頭を交わせればと思いましたが、そこでもたつくところがあるのはいつも通り。でも最後はしっかりと伸びてくれるのもいつも通りという走りでした。
西園正都 調教師
牡馬といい勝負をしていましたし、補欠の可能性があったなかで出走できたのも幸運。レース前の追い切りでは坂路の自己ベストを出しましたから、あとは輸送の疲れを残さないようにと考えていました。それでも最後の直線では大声が出ましたね(笑)。今後の予定は馬の様子を見ながら検討していきます。