今年の東京盃JpnⅡは、断然の人気を集めたコパノキッキングが、2着に4馬身差をつけて逃げ切った。
前走は盛岡競馬場でのクラスターカップJpnⅢで、単勝1番人気に支持されたが3着まで。レース後、コパノキッキングのオーナーである小林祥晃さんは「この馬にはテーマがありますから」と話していた。クラスターカップJpnⅢを制した場合はアメリカに渡り、ブリーダーズカップ・スプリントGⅠに挑戦するというプランがあったが、それは一旦保留。藤田菜七子騎手の手綱で重賞を勝つという“テーマ”の達成に切り替えることになった。
それが実現する瞬間を見るために、大井競馬場にはたくさんのファンが訪れた。この日の入場人員9144人は、前年比123.6%。大井町駅では送迎バスを待つ列が長く伸び、東京盃JpnⅡのパドックも最近の重賞にしてはかなりの混雑になった。
その注目が集まるなかパドックに入ってきたコパノキッキングは、歩く姿に気負いがあるような感じがあったが、それは時間が経つにつれて解消された。それでも騎乗合図がかかって藤田騎手が騎乗すると、すぐに地下馬道へと向かった。と同時に、パドックにいた多くの人たちも本馬場方向へと移動。その動きは、藤田騎手を目当てに来た人たちの多さを物語っていた。
そしてパドック周回中は1.6倍だった単勝は、最終的に1.5倍へと上昇。ゲートが開くとクルセイズスピリツ、キャンドルグラスなどが先手を取りに行ったが、コパノキッキングはその内側から加速をつけて、スタートから200メートルを過ぎたあたりで先頭に立った。
サマーチャンピオンJpnⅢで連対したグランドボヌールは中団、ダッシュがつかなかったヒザクリゲは後方から。短距離戦でも隊列は長くなり、直線入口では、逃げるコパノキッキングと2番手に上昇してきたサクセスエナジーとの差は3馬身ほどあった。
そのペースは前半600メートルが34秒3。馬場差はあるが、昨年の東京盃JpnⅡは同じ良馬場発表で、34秒4だった。しかし勝ち時計は昨年が1分12秒1で、今年は1分10秒7。コパノキッキングのスピードが最後まで衰えなかったということが、数字上でもよくわかる。逆に追いかけたサクセスエナジーは苦しくなり、中団から差し脚を伸ばしたブルドッグボスが代わって2着に食い込んできた。
コパノキッキングが独走で勝利を飾ったその瞬間、大井競馬場は大きな歓声に包まれた。その人たちの表情は一様に笑顔。小林オーナーの希望と多くのファンの希望が同時に達成された瞬間だった。
さて、小林オーナーが話したところの「テーマ」をクリアしたコパノキッキング。次はどこに登場するのだろうか。3着に入ったサクセスエナジーを管理する北出成人調教師は「初ブリンカーの効果がありましたし、JBCスプリントに登録します」と話していた。しかしコパノキッキングは、コーナー4つの競馬は未経験。果たして日本の“ダート競馬の祭典”へと進むのかどうか。陣営の判断が待たれるところだ。
Comment
藤田菜七子 騎手
(コパノキッキングは)ナイターが2度目ですし、そのときより落ち着いていました。どう乗るかは最後まで迷いましたが、返し馬の雰囲気がとても良くて、これならゲートを出てくれると感じたので、そこで前に行くことを決めました。人気を背負っていましたし、今はホッとした気持ちのほうが大きいです。
村山明 調教師
前回のクラスターカップは坂路がない函館競馬場で調整して臨んだ分、パワーが物足りないという感じがありましたので、今回は栗東でそこを補ってきました。以前は逃げるとちょっと頼りないかなという面があったのですが、今日の勝ち方は強かったですね。藤田騎手も乗れる騎手になってきた感じがします。