長らくJBCクラシックJpnⅠの指定競走として存在感を示し、昨年から南関東グレードの最高峰となるSⅠに昇格したこの一戦。今年は実績馬、好調馬、そして転入馬と、多彩なメンバーが顔をそろえ、単勝オッズも上位6頭がひと桁台。降り続く雨の影響で水びたしの不良馬場になったことも、混戦に拍車をかけた。
大方の予想通り、昨年の覇者シュテルングランツが逃げ、2番人気のヤマノファイトが2番手。1番人気のセンチュリオンは中団につけた。1周目のスタンド前で1ハロン13秒台のラップに落ち着いたものの、向正面に入ったあたりから12秒台に戻り、消耗戦の様相を呈して勝負どころを迎えた。
ここで外から位置取りを上げてきたのがストライクイーグル。道中は5、6番手につけ、勝負どころからは4頭横並びの大外を回らされる厳しい展開だったが、最終4コーナーで先頭に並びかけると、直線でさらに末脚を伸ばし、追ってきたセンチュリオンに1馬身半差をつけて勝利した。
ストライクイーグルはJRAで5勝を挙げ、今夏に大井へ転入。前走の東京記念トライアルは転入初戦に加え、18キロの馬体増もあって2着に敗れていたが、きっちり変わり身を見せて初タイトルを手にした。結果的に、外めが軽いこの日の馬場も幸いした格好になったが、調教を施す認定厩舎ミッドウェイファーム、手綱をとった金沢の吉原寛人騎手が、南関東の長距離路線に新風を吹き込んだかたちとなった。
センチュリオンは地元浦和のJBCを控えているだけに、そろそろ波に乗りたいところだったが、今回も勝ち切ることはできなかった。矢野貴之騎手は「切れるタイプではなく、その一方で反応が良すぎるような面もあって、少し乗り難しい馬。勝ち馬も調子を上げてきたのでしょう」と、前走で手綱をとっていたストライクイーグルに脱帽した。ただセンチュリオンの後半3ハロンは40秒2でメンバー最速。消耗戦のなか息の長い末脚を発揮した内容は悪くなく、仕掛けのタイミングさえはまれば、勝機が巡ってくるはずだ。
3着にはスギノグローアップ。内枠だったが、スタート直後に外に持ち出し、先団で気分良く走らせた真島大輔騎手のエスコートが光った。「うまく走ってくれたし、状態の良さも感じました。距離は少し長いと感じたけど、この先も走ってくれると思います」とのこと。中距離路線では今後も軽く扱えそうにない。
一方、オープン特別を連勝してここでも有力視されていたヤマノファイトだったが、直線で伸びきれず6着に敗れた。「ハミを取ってくれませんでした。左回りの走りとは全然違いましたね」と赤岡修次騎手。2、3歳時には門別、大井の右回りで重賞4勝を挙げているが、古馬トップクラスが相手となると、やはり左回りが理想なのだろう。
初タイトルを手にしてJBCクラシックJpnⅠへの期待もふくらんだストライクイーグルだが、藤田輝信調教師は「(JBCも)選択肢のひとつ」とするにとどめた。ただ、消耗戦を勝ち切った今回の内容からも、ダートグレードで必要な底力を持ち合わせている印象。新天地で、その能力が大きく開花することを期待したい。
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吉原寛人 騎手
砂をかぶると良くないと聞いていたので、なるべくかぶらない位置で運びたいと思っていました。その結果、4頭横並びの外になりましたが、よく我慢してくれましたね。強い馬が前にいたから早めに射程圏に入れようと思っていたのですが、意外に早くつかまえてしまったので、直線は本当に長かったです。
藤田輝信 調教師
定量戦で、前走よりも1キロ余計に背負うことを心配していましたし、外を回らされる厳しい競馬でしたが、よく頑張ってくれました。直線で後ろからセンチュリオンも来て、どうなるかと思っていましたが、それをしのいでくれて、改めて強い馬だと感じました。次走はオーナーサイドと相談して決めます。