第90回 2019年3月8日(金) ちゃんぽん(BAOO荒尾)
BAOO荒尾
「朝日屋」 ちゃんぽん(600円)
食堂街のいちばん左です
「BAOO荒尾」は、荒尾競馬場のスタンド1階を使用している場外発売所。2011年12月23日をもって廃止された荒尾競馬は、かつてのスタンドがそのままの姿を残しています。
そのスタンドの後ろ側、パドック跡地の近くに食堂街というか長屋がありまして、かつてはそのすべてに明かりがともり、にぎやかに営業していました。
でも現在は1軒だけ。もっとも入場口に近い「朝日屋」さんが、当時の雰囲気を守っています。
入ったのは平日の正午ごろ。店内には先客が2名いました。さっそく壁に貼られているメニューを見回して、選んだのはちゃんぽん。ここは熊本県の北西端で、ちょっと歩けば福岡県。でもなんとなくちゃんぽんという気分でして。
看板も競馬廃止前のまま
すると厨房にいるお母さんがフライパンまたは中華鍋を振っているアクション。野菜を炒めてからスープを入れて煮込み、そして麺を合わせたちゃんぽんが、およそ3分で登場しました。
さっそくスープからいただくと“これぞちゃんぽん”という味と香り!
野菜と一緒に食べたストレートの麺もおいしくて、九州にいることを実感させてくれました。
そして店内は荒尾競馬が開催されていたころのままだから、これはちょっとしたタイムスリップ。この空気感のなかにいると、あの締め切り音楽(昔は「お猿のかご屋」でした)や本馬場入場の音楽(田原坂行進曲)が頭のなかに浮かんでくる!
ちゃんぽん
「昔は開催日だけの営業だったけど、今はほとんど毎日。でも荒尾は三井(炭鉱)がなくなってから人が減るばかりでねえ」
と、ご主人の池田正照さん。2名いると思った先客のひとりはご主人でした。
「スタンドが取り壊されるという話がありましたが、もうしばらくは残りそうな感じかな。最近になって、馬場に道路(有明海沿岸道路)が通ることになったらしいんですが、それも本当にやるのかどうか」
とのことですが、長らくそのままになっていた馬場は半分くらいが駐車場として整備され、かつての厩舎エリアには重機の姿。もしかしたら何かの計画が進んでいるのかもしれません。
現在の馬場跡地の様子
それでも2019年2月現在では、競馬ファンが入れるエリアは当時のまま。スタンド内部から2階以上には行けませんが、外に出てひな壇を昇れば、当時の情景がよみがえります。
スタンド内には飲食店がひとつありますが、荒尾競馬が現役のころから営業しているのはこの店だけ。今も元気に営業していることに感動してしまいました。
「そんなに元気じゃないんだけどね(笑)」と池田さんは照れましたが、昔の話も聞くことができて、とても楽しい食事になりました!
浅野靖典(あさのやすのり)
競馬キャスター・ライターとして活動中。「クリック!地方競馬」キャスターを務めているほか、JRAブリーズアップセール、八戸、九州の各競走馬市場にて司会進行を担当。ライターとしては、
・競馬総合チャンネル(netkeiba.com)
・POGの達人
・JRAホームページ
・週刊プレイボーイ
・WEBハロン
などに寄稿している。
※ 本文で紹介している逸品については、取材時点のものです。 その後、値段改定やメニューが変わっている場合もございます。