浅野靖典の全国馬美味(ウマウマ)行脚」地方競馬にまつわる「ウマいもの」を毎月ご紹介!
“鉄人”佐々木竹見の見解」佐々木竹見元騎手がダートグレード各競走を“鉄人”の目線で鋭く解説!
高橋華代子の(続)気になるあの馬は…」引退後や転厩した名馬の近況を愛あふれる文章でご紹介!
REWIND 90's」当時の写真や映像を交えて90年代の名勝負を振り返ります!

第90回 2016年1月20日 ハルサンサン

ハルサンサン(今年誕生する2番仔の父はジャスタウェイ)
(撮影:高橋華代子)
Profile
 真冬の牝馬の祭典TCK女王盃が今年も終わりました。優勝したホワイトフーガを筆頭に、中央勢の圧倒的な強さを見せつけられた一戦。

 地方勢の優勝は、5年前に遡ります。今野忠成騎手が手綱を取った7番人気ハルサンサン(船橋・佐藤賢二厩舎)。道中は先行勢を前に見ながら進めていき、最後の直線で外に持ち出すとゴール前にキッチリと差し切りました。

 ハルサンサンは女王クラーベセクレタやナターレ、マニエリスムなど豪華な面々と同世代。惜しくも重賞を勝てない時期も続いたため、「(ハルサンサンも)重賞級の力があるから何とかひとつ取らせたい」と厩舎サイドは熱望してきましたが、その記念すべき初重賞がダートグレードレース制覇となりました。

 南関東生え抜き馬としてはヤマノリアル以来となる12年ぶりのTCK女王盃制覇。当時から中央勢に押されっぱなしだったダートグレードレース牝馬戦線だったので、マスコミの一人としてもファンの一人としても、どれだけうれしい勝利だったことか……。

 そんなハルサンサンも生まれ故郷の三村卓也さん(新冠)の牧場で繁殖生活に入り、昨年母になりました。ヴァーミリアンとの間に牝馬が誕生。

 昨年秋、久しぶりにハルサンサンに会わせて頂きました。お腹をゆさゆさ揺らしながら貫録たっぷり。他の繁殖牝馬には気の強い所を見せたとしても、仔馬にはいい母親で、初めてお乳を飲ませる時は嫌がる新米お母さんもいるそうですが、ちゃんと我慢をして飲ませていたそう。

 遡ると、三村さんは千葉県で生まれ育ちましたが、大好きだったテンポイントが影響で、生まれ故郷でもある吉田牧場さんへ移り住んだほど。

 その後、三村さんが牧場を開き、ハルサンサンの祖母ホリワカを吉田牧場さんから受け継いだそうです。ホリワカの3代母には、テンポイントの母でワカオライデンの祖母でもある名牝ワカクモがいる血統。ホリワカにワカオライデンをつけ、競走馬となった2頭目の仔がハルワカで、そのハルワカの初仔がハルサンサン。三村さんの想いにあふれた血統なのです。

 「このラインを残していくことがライフワークになっています。ハルサンサンもハルワカも全て別の種馬をつけていますが、偏ってしまうと寂れていきやすいので、いろんなタイプの仔を後世に残していきたいんです。輸入馬に押されている昨今ですが、細々ながらも続けていきたいですね。TCK女王盃を勝ってくれて、いいこともあるんだなぁって(笑)」(三村さん。

 お話しを伺い、血統を改めて調べてみて、ハルサンサンのTCK女王盃での勝利が、どれだけ価値のある尊いものであるかを知りました。

 三村さんの牧場は、新冠の山の中をズンズンズンズン上がっていった大自然の中にぽっかりと。深い緑に囲まれた空間に、三村さんの人生をかけたロマンがぎっしりとつまっています。

ハルサンサンと三村卓也さん、ハルサンサンの初仔(撮影:高橋華代子)
高橋華代子(たかはしかよこ)
元NHK山形放送局キャスター。
現在は南関東競馬を中心に取材活動中。
<掲載媒体>
・南関魂
・TCKホームページ
・楽天競馬
・WEBハロン
・馬事通信
・netkeiba.com
・ターファイトクラブ会報誌
・SPAT4ザ・ウィナーズ
など