当コーナーでは、地方競馬に関するイベントや注目レース等の気になる話題を写真と共にご紹介します。

人気馬が好走し、無敗馬が2頭
牝馬の活躍も目立ち6頭が連対

2015年11月13日

 まずは昨年の未来優駿シリーズの勝ち馬のその後を確認しておく。7頭中、3歳になって重賞を勝ったのは3頭だった。
 もっとも活躍しているのは、兵庫若駒賞のトーコーヴィーナスといっていいだろう。3歳になって重賞4勝を挙げ、グランダム・ジャパン3歳シーズンの女王となった。
 平和賞のストゥディウムは、南関東三冠の一冠目、羽田盃を制した。ただその後、重賞では苦戦が続いている。
 未来優駿からダービーウイークを制したのは、岩手ダービーダイヤモンドカップのロールボヌールで、無敗のままダービー馬となった。ただ残念ながらその後、屈腱炎を発症し、復帰は年明け以降とされている。
トーコーヴィーナス 15年のじぎく賞
ロールボヌール 15年岩手ダービーダイヤモンドカップ
 その他では、兼六園ジュニアカップのアロマベールは、南関東に移籍して、9月の戸塚記念で2着と健闘している。
 サッポロクラシックカップのコールサインゼロは、南関東に移籍したものの勝利には至らず、今年夏に北海道に戻り、B級からA2級で4勝を挙げている。徐々に復調といえそうだ。
 ゴールドウィング賞のヒメカイドウは、年明けに笠松・ゴールドジュニアで2着があったものの、その後は南関東に移籍して下級条件で苦戦。九州ジュニアチャンピオンのイッセイイチダイは、九州ダービー栄城賞12着のあとは出走していない。

 昨年同様、未来優駿は今年も全7戦で争われたが、開催日程の関係からか、南関東では初めて川崎の鎌倉記念がこのシリーズに組み込まれた。
 今年は堅い決着が目立った。1番人気→2番人気での決着が4戦あり、1番人気は5勝、2着1回と期待にこたえる走りを見せた。唯一、1番人気馬が着外で波乱となったのは九州ジュニアチャンピオンだった。
 血統的なところでは、この秋はキタサンブラックがJRA菊花賞を制して、ブラックタイド産駒によるJRA・GⅠ制覇が話題になったが、未来優駿の勝ち馬にもそのブラックタイド産駒が2頭。メジャーリーガー(若駒賞)と、ブライトエンプレス(兼六園ジュニアカップ)。ブラックタイドはディープインパクトの1歳上の全兄で、ほかにサンデーサイレンス系では、ゴールドアリュールのサカジロゴーゴー(ゴールドウィング賞)、ゴールドヘイローのソウダイショウ(九州ジュニアチャンピオン)がこのシリーズの勝ち馬となった。それ以外の3頭は、いずれも輸入種牡馬の産駒だった。
 そして今年は牝馬が3勝、2着3回と活躍が目立った。

 日程順に振り返ってみよう。
 若駒賞は、1番人気のメジャーリーガーが4番手追走から直線で抜け出した。勝ちタイムの1分41秒7は、過去2年の1分37秒台と比べるとややかかっているが、今年は馬場自体のタイムがかなりかかるようになったので、標準的なタイムといえそう。芝の重賞・若鮎賞も制しており、これで5戦4勝。今後、ダートを使うのか、芝路線を目指すのかなど、未知数な部分も含めて評価はこれからということになりそう。
 サッポロクラシックカップは、リンダリンダが逃げ切って5馬身差の圧勝。ホッカイドウ競馬開催最終日に行われたブロッサムカップでは、他馬より重い別定56キロを背負ったこともあって2着に敗れたものの、管理する角川秀樹調教師は、今年門別で行われた2歳重賞11レースのうちJpnⅢの2戦を含め8勝。毎年のことだが2歳戦線での活躍は際立っている。リンダリンダはシーズン終了後の遠征競馬でも活躍が期待できそうだ。
若駒賞 メジャーリーガー
サッポロクラシックカップ リンダリンダ
 鎌倉記念は、人気2頭の一騎討ちとなり、ポッドガイがアンサンブルライフを1馬身半差でしりぞけ、デビューから5連勝とした。好位追走から直線抜け出すという、騎手の意のままに動く2歳馬らしからぬレースぶりが印象的だ。父パイロは、ダート戦線で注目の種牡馬。初年度産駒には北海道スプリントカップJpnⅢを制したシゲルカガや、浦和・桜花賞のシャークファングがいて、2年目の産駒には戸塚記念のミスアバンセに、兵庫ダービーのインディウムなど、そして3年目の産駒にはポッドガイのほかに、門別・サンライズカップを制したタービランスなどがいる。2着のアンサンブルライフとともに、来年の南関東三冠路線では中心的な存在となりそうだ。
鎌倉記念 ポッドガイ
パイロ3年目産駒 タービランス 15年サンライズカップ
 ゴールドウィング賞は、中央未勝利から転入したサカジロゴーゴーが完勝というレースぶりで2連勝。中央時代は気性難でレースにならず、3戦目には途中でレースをやめていた。父はゴールドアリュール、母はキングマンボ産駒の輸入馬で、昨年の北海道サマーセールで1080万円で取引きされた。転入後も追い切りができないほどだったが、徐々に改善されているようで、素質は相当なものがありそう。
 九州ジュニアチャンピオンを5番人気で制したソウダイショウは、ここまで2着が2度あったが、初勝利が重賞制覇となった。レースハイライトにもあるように、管理する東眞市調教師はこのレース5年連続での勝利。東調教師の管理馬では、1番人気に支持されたローカルロマンが6着だったが、勝ち馬との差はコンマ4秒。人気的には波乱の決着だが、そもそもが実力的にはあまり差がなかったようで、佐賀の勢力図は年が明けてまだまだ変わってきそうだ。
ゴールドウィング賞 サカジロゴーゴー
九州ジュニアチャンピオン ソウダイショウ
 兵庫若駒賞は、マイタイザンがデビューから4連勝。内のエイシンシンタが行く気を見せたため、初めて2番手に控える形になったが、楽な手ごたえのまま3コーナーでは先頭に立って、まさにスピードの違いを見せつけた。デビューから手綱をとる杉浦健太騎手には重賞初制覇となった。兵庫ではベテランのトップ3(田中学騎手は療養中のため今はリーディングの順位を下げているが)の牙城がなかなかに強固で、これをきっかけに若手騎手の奮起にも期待したい。
 兼六園ジュニアカップを勝ったブライトエンプレスは3番人気だったが、1番人気となったヤマノカミが北海道からの転入初戦で、力の比較が難しかった。レースハイライトにもあるように、厳しい展開ながらヤマノカミをクビ差で振り切ったレースぶりは評価できる。これで5戦4勝。唯一の敗戦となった金沢プリンセスカップは、スタートで他馬と接触するなどダッシュが付けず、その間に馬群に囲まれて力を発揮できなかった。まだ底を見せていない。
兵庫若駒賞 マイタイザン
兼六園ジュニアカップ ブライトエンプレス
 北海道の角川秀樹調教師、佐賀の東眞市調教師が2歳戦で圧倒的な成績を残しているのは前述のとおりだが、ゴールドウィング賞を制した角田輝也調教師は今回4頭出し、兼六園ジュニアカップを制した金田一昌調教師はなんと5頭出し。両調教師は有力2歳馬の量でも圧倒していた。角田調教師、金田調教師は、ともにそれぞれ所属する競馬場の今年の調教師リーディングでも、2位に大差をつけてのトップとなっている。
角田調教師、金田調教師は、それぞれの競馬場の調教師リーディングでトップとなっている
 近年の地方競馬では、調教師も騎手も、トップの何名かに勝ち星が集中する傾向が顕著になっていて、そうなるとますます有力厩舎に高い素質の2歳馬の入厩が集中するようになって、その結果が、未来優駿のみならず2歳戦線に表れている。

文:斎藤修
写真:いちかんぽ