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第59回 2013年6月20日 マキバスナイパー

 1998年から2004年にかけて長きに渡って地方競馬を盛り上げた南関東生え抜き馬マキバスナイパー。女傑マキバサイレントの弟としても有名で、自身も01帝王賞や00グランドチャンピオン2000など11個のタイトルを手にしました。ここ最近の中・長距離のダートグレードレースは南関東勢にとってひじょうに残念な結果が続いています。マキバスナイパーの偉大さが身に染みる昨今……。

 そんなマキバスナイパーも引退後は種牡馬生活に入り産駒を送り出しましたが、間もなくして引退。その後は、福島県南相馬市で野馬追に出場する馬として一般のかたに飼われて悠々自適な毎日を送っていました。

 しかし、2011年3月11日、東日本大震災発生。マキバスナイパーがいた場所は福島第一原発から半径20キロ圏内だったため警戒区域に指定されました。立ち入りが禁止される数日前に助け出され、県内の相馬市へ移動。昨年12月から30キロ圏内にある南相馬市原町区の仲山トレーニングセンターに引っ越しました。

 マキバスナイパーも早いもので18歳になりましたが、今でも人を背中に乗せてキャンターを行うなどトレーニングは毎日続けているそうです。子供も乗ることができるくらいにおとなしいそうですよ。

東日本大震災直後は地震の影響か輸送時のものなのか、脚元に大怪我を負っていたそうですが、海外のボランティア団体などが治療にあたり、今ではその箇所もすっかり良くなったそうです。また、当時を知る人は今のマキバスナイパーを「穏やかな表情になった」と。

 仲山トレーニングセンター代表の佐藤徳さんは、馬たちが大好きな青草を自ら手掛けて在厩馬たちにお腹いっぱい食べさせているそうで、ほかの馬たちが残してもマキバスナイパーは残さないんだとか。現役時代から食べることが大好きな馬だったので、今も変わらないんですね。あごっぱりもパンパンでしたし!お土産に持っていったニンジンやリンゴ、バナナもものすごい勢いで平らげてくれました。プリプリッとした健康そうな体を見ていると、18歳という年齢は感じさせません。

 今年の相馬野馬追は7月27日(土)から29日(月)まで実施するそうで、マキバスナイパーも野馬追の装いで市内を練り歩く『お行列』に参加予定。帝王賞馬の威風堂々とした姿、カッコいいでしょうねぇ。

 東日本大震災の日、マキバスナイパーは何を見たんでしょうか?どんな思いをしたんでしょうか?話すことができるのなら、聞いてみたいです。でも、またこうやって会うことができて本当によかった……。マキバスナイパーと久しぶりにのんびりした時間を過ごせたこと、幸せです。



高橋華代子(たかはしかよこ)
元NHK山形放送局キャスター。
現在は南関東競馬を中心に活動中。
・南関魂
・TCKホームページ重賞情報
・楽天競馬
・ウェブハロン
・サンケイスポーツ
・ターファイトクラブ会報誌
・南関東競馬フリーペーパー
 『pocopoco(ポコポコ』
など