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第58回 2013年5月20日 ドンクール

 『ドンクール、7年ぶりの勝利!!!』そんなビッグニュースが兵庫から飛び込んできたのは今から1ヶ月前……。

 ドンクールは02年生まれで現在11歳、05年兵庫チャンピオンシップと06年名古屋大賞典を優勝している実力馬です。中央ダート馬の同期生にはカネヒキリやヴァーミリアン、サンライズバッカス、プライドキム、アグネスジェダイ、地方馬もシーチャリオットやフジノウェーブ、ボンネビルレコード、キングスゾーンなどがいる黄金世代です。

 09年10月のシリウスS(15着)を最後に、アルドラゴンを手掛けたことでも知られる兵庫の田中範雄厩舎に仲間入りをしました。しかし、蹄の中のコンディションがひじょうに悪く、内出血を起こして血豆ができ、「金太郎飴のように切っても切っても(血豆が)出てきました。表は元気なのに見えないところだったので歯がゆくて……」(田中調教師)。

 関係者にとっても初めてのケースで、治すのは難しいと言われていたそうです。さらに、蹄を完全に休ませていた休養先では重度の腸捻転を発症。この短いコラムの中では綴りきれないほどに苦難の連続だったそうですが、ドンクールの生命力とその素材に惚れ込んでもう一度走らせたいという関係者の我慢と熱意で、見事レースへ復帰!!

 約2年7か月ぶりの実戦となった4月18日の兵庫馬事畜産特別(園田・1400m)。松浦政宏騎手を背に道中は中団後方から進めていき、勝負所で外目を上がっていくと、最後の直線では6頭が横一直線に並ぶ大混戦の中、豪快に差し切りました。「掲示板があればいいなと考えていましたがまさか勝てるとは思いませんでした。とにかく無事に帰ってきて欲しいってそれだけだったので……涙で目が潤んでしまって最後は見えませんでした」(田中調教師)。勝負への執念を感じさせるかのような気迫あふれるゴール前は、ドンクールがこれまでかかわってきた人たちの気持ちを汲んだものに思えてなりませんでした。

 今年11歳になりましたが、今でも威圧感はたっぷりだそう。気持ちがひじょうに強くカイバ食いも良くて、年齢は感じさせないそうです。「体は大きいのに全体のバランスがとても良くて、ダート馬のお手本のような体型をしている馬だと思います」(田中調教師)。

 その後も蹄の具合は良好なので、当面の目標は8月中旬の摂津盃を予定しているそうです。「うちにいたアルドラゴンもそうですが、ドンクールとも出会えたことを幸せに思います。また肩掛けを取らせてあげたいので、応援してやってください!」(田中調教師)。


高橋華代子(たかはしかよこ)
元NHK山形放送局キャスター。
現在は南関東競馬を中心に活動中。
・南関魂
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・南関東競馬フリーペーパー
 『pocopoco(ポコポコ』
など