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クローズアップ

第10回JBC総括

2010年11月08日

ダート競馬のレベルアップ示す
若手調教師とダート血統の活躍

 今年は中央競馬でも多くのGIレースが前年比で10%前後の売上減となり、地方競馬でも猛暑の影響か夏場に売上が伸びず、ほとんどの主催者で昨年度より売上が減少するなど、競馬界全体をとりまく状況は明るいとは言えない。
 しかし節目の第10回を迎えたJBCは、さまざまに明るい話題があった。どうしたら多くのファンに競馬場に来てもらい、楽しんでもらえるか、そうした将来に向けての展望も示していたように思う。
 まずは、雲ひとつない好天に恵まれたのは何よりだった。地元船橋勢の有力馬の追い切が行われた10月30日(土)は台風が関東地方をかすめ、東京競馬場の開催が中止になったほど。翌、日曜日も台風一過の好天とはならず、どんよりと曇っていた。それが、JBC当日の日中は汗ばむほどの陽気になり、11月だというのに、場内では半袖のTシャツ姿もちらほら見かけた。
 そんな好天の下、お祭り気分を盛り上げていたのは、スタンド裏にずらりと並んだ移動販売車やテントのグルメではなかっただろうか。中でも、過去にJBCが行われた競馬場やその地方にちなんだ名物が提供されたのは秀逸で、もはや地方競馬ファンにはおなじみとなった盛岡競馬場のジャンボ焼き鳥には午前中から長蛇の列ができていた。

 それで思いついたのだが、近年では国民的行事といえるほどの人気となっている「B級グルメ選手権」よろしく、「全国競馬場グルメ選手権」という企画はどうだろう。各地の競馬場から人気のグルメを集めるのだ。来年のJBCは大井競馬場での開催で、スペース的には十分なだけに、ぜひ一考を願いたい。


 さて、肝心のレースだが、スプリントは、断然人気となったサマーウインドが期待通りのスピードを見せて圧倒。クラシックは、ここ2戦の内容がいまひとつで伏兵視されたスマートファルコンが思い切った逃げでの圧勝となった。




 今回もっとも注目されたのは、フリオーソによる地方馬として初のJBCクラシック制覇なるかということだった。しかし残念ながら結果は2着。川島正行厩舎は、スプリントでもナイキマドリードが2着だった。ともに同じ2着という結果ではあるが、ナイキマドリードのほうは期待以上の結果の2着であり、フリオーソのほうは勝利を期待されながらの2着という結果だけに、それぞれのレース後、川島調教師の表情がまったく対照的だったのは印象的だった。
 両レースとも勝ったのが中央馬とはいえ、ともにJBCのタイトルを今シーズンの目標としていたことは、10回の歴史を重ねたJBCの価値をも高める結果になっただろう。
 サマーウインドは、JpnIII(クラスターカップ)、JpnII(東京盃)と、ひとつひとつ階段を昇るようにしてのJpnI勝利。スマートファルコンは3歳時から地方のダートグレードを中心にローテーションが組まれ、じつにダートグレード11勝目が悲願のJpnI初制覇となった。
 サマーウインドの庄野靖志調教師は40歳、スマートファルコンの小崎憲調教師は39歳と若く、ともにGIを含めてJpnI初勝利となった。
 「交流元年」と言われ中央と地方の交流が盛んになってから15年、統一格付けのダートグレードが施行されてから13年、そしてJBC創設から10年が経過。今回、両レースを制したような中央の若手調教師の方々にとっては、免許を取得した時からそうした交流の舞台はすでに存在していたもので、それゆえ地方競馬で行われるダートグレードでも、中央の重賞と同等のものと意識される調教師は確実に増えてきたように思う。
 血統面でも、ここ10年ほどでダート馬の地位がかなり向上した。かつてならダートでの活躍馬が種牡馬としても活躍するなどは、まったくといっていいほどなかったこと。スマートファルコンの父、ゴールドアリュールは、JBCへの出走こそなかったものの、GIタイトル4つはすべてダートでのもので、そのうち3つが地方競馬で行われたGIだ。その産駒には、スマートファルコンのほかにも、今年ブリーダーズCに遠征したエスポワールシチーや、そのエスポワールシチーをマイルチャンピオンシップ南部杯で負かしたオーロマイスターもいる。ゴールドアリュールの種牡馬としての活躍は、何よりダート競馬のレベルアップを示すものだろう。


 当日、船橋競馬場の入場人員は30,109人。今年5月5日に行われたかしわ記念の入場人員が18,812人で、そのときもかなりお客さんが入ったなというイメージがあったのだが、さすがにJBCではその1.5倍以上の集客があった。普段はほとんど中央競馬にしか行かないという雰囲気の競馬ファンもかなりいたようだし、好天の祝日ということもあって家族連れもかなり目についた。そうした新規ファンの開拓という意味でも、冒頭にもふれたように年に一度くらいはお祭り的なイベントの競馬は絶対に必要だと思う。
 馬券の売上でも、JBCクラシックの934,536,700円は、今年のかしわ記念で記録した船橋競馬場の1レースの売得金レコードを更新。この日1日の船橋競馬場の売得金2,449,902,400円も、レコード更新となった。
 競馬全体の売上が下がるなか、レベルの高いメンバーの揃ったレースで、イベント的にも盛り上げる仕掛けがあれば、競馬場に来るファンはまだまだたくさんいるし、馬券もしっかり売れるということをあらためて確認することができたJBCでもあった。
取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ、NAR
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