当コーナーでは、地方競馬に関するイベントや注目レース等の気になる話題を写真と共にご紹介します。

JRAジョッキーDay ばんえい競馬に、JRAジョッキーがやってきた!

2013年12月3日
取材・文・写真●井上オークス

当日の様子はこちら
(YouTube楽天競馬チャンネル内)

 ばんえい競馬のスペシャルイベント! 11月18日、ばんえいの帯広競馬場で行われた「JRAジョッキーDay」。今年で7回目を迎えた、ばんえい競馬の名物イベントだ。参加騎手10名を紹介しよう(敬称略)。
ばんえい競馬の騎手と集合写真
 内田博幸、江田照男、勝浦正樹、北村宏司、後藤浩輝、田辺裕信、戸崎圭太、松岡正海、丸山元気、丸田恭介。
 勝浦騎手(7回目の参加)と松岡騎手(5回目の参加)以外は初参加という、フレッシュなメンバー構成。まずは「エキシビジョンレース」に備えて行われた練習風景を。

「やっぱり大きいな~」「お尻がすげえ!」

 練習でもエキシビション本番でも、ソリを曳くのは現役のばん馬だ。最初は巨大なばん馬に圧倒されていたJRAジョッキーズだが……。ばんえい関係者に乗り方をレクチャーされると、たちまちコツをつかんで、ひとりでばん馬を動かし始めた。初挑戦の内田騎手は、体重1トンを超えるばん馬を長~い手綱で自在に操り、ぐるりと1周してきた。そして「サラブレッドと同じって聞いたから」とサラリ。さすがである。

ばん馬にまたがる丸山元気騎手
 ナイターの照明が点灯して、エキシビジョンレースのパドックが始まった。サラブレッドの倍のサイズのばん馬に、大股開きで跨るJRAジョッキーズ。いつもと違う目線の高さと感触に、自然と笑みがこぼれる。


スタート前の様子
 ソリの後ろでサポートするばんえいジョッキーに付き添われて、いざスタート地点へ。人馬の呼吸を整えて、各馬ゲートに収まった。重賞ファンファーレが高らかに鳴り響く。そして号令がかかる。


「前へ~~~出ろ~~~!」

 そのときだった。
「だっぷん! だっぷん! だっぷんです!!」
 やけに切羽つまった声が。「おまえ『脱糞』って言いたいだけだろ(笑)!」とツッコミが入る。ばんえい競馬では、馬がボロをし終えるまでスタートを待つ。それを知ったJRAジョッキーが、チャンスを逃さず叫んだようだ。犯人は誰だ(笑)。などと思っているうちに、脱糞タイムが終わってゲートが開いた。

 直線200mのセパレートコースで争われるばんえい競馬。スタートダッシュを決めて、一目散に高さ1mの第1障害へ。
「そーれ!」「ハッ!」「うおー!」「いけー!」
 さまざまな掛け声を発するJRAジョッキーズをソリに乗せて、ひたすら前進するばん馬達。映像で見るより、ずっと速く感じる。はあはあ。全力で追いかけないと、併走できないよ~。

 スズキンショウ&丸山元気(菊池一樹騎手がサポート)が先行する。第1シベチャタイガー&内田博幸(阿部武臣騎手がサポート)は後方待機。シベチャタイガーを所有する小林英一オーナーは、ゴールドシップのオーナーでもある。なんだかオーバーラップ!

 高さ1.7mの第2障害を前にして、各馬いっせいに立ち止まる。ばんえい競馬ならではの駆け引き。ひとときの静寂。パワーを溜めて、溜めて、溜めて……GO!

 怒涛の勢いで坂を駆け上がる馬。坂の途中で力尽きそうになって、立ち止まる馬。懸命にパートナーを励ますJRAジョッキーズ。


「やあ!」「がんばれ!」「うりゃ~!」「ヴァーイ!」

 熱のこもった掛け声に促されて、必死に前進するばん馬たち。ひたむきさなまなざしに、胸を打たれているうちに――。
 第2障害をパワフルにクリアしたライトアーム&田辺裕信(渡来心路騎手がサポート)が、先頭でゴールを駆け抜けた。

1着 3番ライトアーム(牡7) 重量580kg 田辺裕信+渡来心路 1分33秒9
2着 9番 リードヤマト(牡8) 重量560kg 戸崎圭太+西謙一 1分38秒0
3着 2番 トクマサヒカリ(牡9) 重量570kg 丸田恭介+島津新 1分40秒1
4着 5番 ヒロノクィン(牝6) 重量550kg 北村宏司+西将太 1分40秒4
5着 10番 シベチャタイガー(牡9) 重量610kg 内田博幸+阿部武臣 1分44秒0
6着 8番 タカラダイリキ(牡9) 重量550kg 勝浦正樹+大口泰史 1分45秒5
7着 4番 キンサマ(牡9) 560kg 江田照男+松本秀克 1分48秒7
8着 1番 スズキンショウ(牡8) 重量560kg 丸山元気+菊池一樹 1分51秒7
9着 7番 フナノセンプー(牡5) 重量580kg 松岡正海+村上章 1分53秒5
10着 6番 フジノハヤテ(牡7) 重量550kg 後藤浩輝+大河原和雄 1分56秒2


「思ったよりスピード感が凄かった~!」
「すごく楽しかったです!」
「鞍をつけていないので、パドックで跨ったとき、馬の温かみや鼓動を感じました」
「初めて競走馬に乗ったときの無力感を、思い出しました……」
「なんか声、枯れてます(笑)」
「『戸崎負けろー、戸崎へぐれー』って叫んでました」
「なんで名指しなんですか(笑)」

見事優勝した田辺裕信騎手
 笑顔、笑顔のJRAジョッキーズ。初出場で初優勝を果たした田辺騎手は、「2つ目の坂を上がる前に、溜めた感じがよかったです。あのまま止まらずに流していったら、バテるんでしょうね。直線のレースだけど、すごく奥深い。もっと広まってほしいですね。いや~、面白いです。また来たいです!」と、興奮冷めやらぬ様子。


 後藤騎手は、「坂の途中で動けなくなって、立ち止まって。苦しみながらも踏ん張ってるばん馬に、感動しました」。大怪我を乗り越えて、レースに帰ってきたばかりの後藤騎手。ばん馬のひたむきさに、感じるものがあったのだろう。

ともに初参加となった内田博幸騎手(左)と後藤浩輝騎手(右)
 例年は夏の札幌開催に合わせて行われていた「JRAジョッキーDay」。今年は札幌競馬場が改修中でレースがなかったため、「JRAジョッキーDay」の開催が途切れかけていた。そこで第1回から参加している勝浦騎手が、競馬場で顔を合わせる仲間に声をかけたところ、あっという間に10名が集まったという。皆、仕事ではなく、「ばんえい競馬を盛り上げたい」という気持ちで、はるばる帯広にやってきた。


 勝浦騎手いわく、「準備時間も少なかったので、『4~5人ぐらい集まれば』と思っていたんですけど、みんな快く引き受けてくれて。フルゲートでレースできることになりました」とのこと。

 勝負服からスーツに着替えたJRAジョッキーズは、協賛レースの表彰式やトークショーの合間に、馬券をたっぷり楽しんでいた。マークカードの塗り方に四苦八苦したり、券売機に突撃したりする姿を目撃した。控え室からは「差せー!」とか「そのままー!」といった叫び声が聞こえてきた。

「エキシビションレースに乗るのも楽しいし、馬券を買って、ファンの立場になってレースを見るのも、大事なことだと思います」と勝浦騎手。

帯広競馬場のスタンド
 また、チキンのコロコロステーキ(スタンド入り口の『田中屋』の名物 )に舌鼓を打つなど、帯広競馬場グルメも堪能したみたいです。


とかちむら
 ばんえい競馬の他にも、スイーツやモール温泉など、魅力満載な帯広。帯広競馬場に併設された「とかちむら」では、産地直送のグルメを満喫できるし、帯広農業高校をモデルに描かれた漫画&アニメ「銀の匙」とのコラボも楽しめる。とにかく、生ばんえい競馬は、めちゃくちゃ面白いです。
ぜひ一度、いや、一度と言わずに二度三度、足を運んでみてください。


 さあ、最後は内田騎手に締めてもらいましょう。
「JRAも地方も、ばんえいも、同じ競馬です。馬にたずさわる者として、力を合わせて盛り上げていきたい。みなさん応援のほど、よろしくお願いします!」