当コーナーでは、地方競馬に関するイベントや注目レース等の気になる話題を写真と共にご紹介します。
第13回JBC総括
金沢競馬場で初めての開催、JBCレディスクラシックがJpnⅠに格付けされ日本で初めて1日にJpnⅠが3レースというJBCで、まず何よりよかったのは、天気に恵まれたことだろう。馬場状態こそずっと不良のままだったが、前日までのピンポイント予報では雨が確実だったことを思えば、少なくとも昼以降、天気の変わりやすいこの地で傘の必要なほどの雨が降らなかったのは奇跡的ともいえた。もちろん雨でもレース自体は普通に行われただろうが、あとからこの日の様々な場面を思い出してみたときに、もし予報が当たっていたらどうなっていたかは想像もできない。
1万2千人以上のファンが金沢競馬場を訪れた
JBCの初期を思えば、最近ではJRAの厩舎関係者のJBCに対する意識がかなり高いものになってきていて、早い時期からJBCを目標のひとつとして語る陣営も少なくない。それを示すひとつの出来事が、JRA所属馬の登録締切の段階で選定馬となっていたJBC3レースの各5頭ずつがそのまま出走したということ。逆に言うと、補欠馬が1頭も繰り上がれなかったのだ。つまりは、とりあえず登録だけしておくというのではなく、どの陣営も本気でJBCを狙ってきているといえるのではないだろうか。特に今年からJpnⅠに格付けされたJBCレディスクラシックは牝馬のダート路線では唯一のGⅠ/JpnⅠのタイトルであり、ダートを得意とする牝馬は、すでに今年のJBCが終了した今の時点から来年に向けた戦いが始まっているといってもいいかもしれない。
JRA勢が本気で臨むとあれば、3レースいずれも上位3着までを独占という結果も当然だった。さらに今年はいずれも1番人気馬の勝利となった。
JBCレディスクラシック メーデイア
なかでもJBCレディスクラシックを勝ったメーデイアは、牝馬のこのメンバーと対戦している限り負けることはないのではないかという強さを今回も見せた。社台グループ系クラブ馬主の規定で6歳春での繁殖入りが決まっており、メーデイアはこのあと1、2戦して引退ということになりそうだ。ジャパンカップダートやフェブラリーステークスも視野にあるようで、そうなると先にも触れたとおり、まさに12月の船橋・クイーン賞JpnⅢから、来年のJBCレディスクラシックへ向けた戦いが始まることになる。
地方馬最先着は名古屋の3歳馬ピッチシフター
地方最先着は名古屋の3歳馬ピッチシフターだった。この馬はひょっとすると来年は地方の牝馬路線の中心的存在になるかもしれない。あらためてこのレベルの馬をホッカイドウ競馬からJRAや南関東でなはなく、名古屋へ移籍させたというのは画期的で、そうした視点でも見続けていきたい。
JBCスプリントは、8歳にしてダートのこの距離は初めてというエスポワールシチーが勝利。2着には、鞍上の好騎乗もあったが初ダートのドリームバレンチノが入った。東京盃JpnⅡを勝って臨んだタイセイレジェンドが実力を発揮できなかったということはあるが、ダート短距離路線を使われてきた馬たちは、ダートのマイル以上の路線や、芝の短距離路線よりレベルが一枚落ちるのかもという見方はできる。
JBCスプリント エスポワールシチー
強豪相手に果敢に先手を奪ったセイントメモリー
地方最先着は大井のセイントメモリーが5着。JRAの一線級を相手にみずからペースをつくってのこの結果は、地方馬の中ではやはり力が抜けていた。6着のサミットストーンに5馬身差をつけたということもそれを示している。ラブミーチャンの引退が発表され、ダートグレードで互角に勝負できる地方馬がますます少なくなっている現状だけに、セイントメモリーにかかる期待は大きい。JBCクラシックは、1番枠から初めての逃げの手に出たホッコータルマエが、ワンダーアキュート以下を寄せつけずコースレコードで勝利。今年前半の連戦連勝や、今回のレースぶりから、この馬はまだ成長途上にあるのではないだろうか。クリソライトは道中ずっと掛かったままで消耗してしまい、ハタノヴァンクールは故障があったということで、JRA勢で実質競馬をしたのは上位3頭だけ。結果的に地元のジャングルスマイルが地方最先着の4着に入ったが、3着のソリタリーキングからは2秒7もの大差がついていた。
JBCクラシック ホッコータルマエ
JBC3レースで南関東から遠征がなかったのは、このクラシックだけ。今さら1年近くも前に引退したフリオーソの名を出してもしかたのないことだが、フリオーソの引退によって中央・地方の格差がもっとも大きくなってしまったのは、この中長距離の路線かもしれない。
地方馬最先着はジャングルスマイル
最終レースには、地元2歳馬による重賞・百万石ジュニアカップが行われた。このレースが盛り上がるのかどうかという不安もあったが、果たして、直線での攻防ではスタンドのファンからJBCと変わらないほどの大歓声が上がっていた。ファンがたくさん集まれば交流重賞でなくとも盛り上がるのだということをあらためて確認できた。
その百万石ジュニアカップを1番人気のイグレシアスで制したのは吉原寛人騎手。金沢でのJBC開催を前に、数多くのマスコミの取材に応じるなど、金沢の広告塔としても奔走してきた。表彰式のあと、ファンからのサインの要望に最後までこたえ、そして騎手控室のほうに戻ってきたときの心底ホッとした様子は印象的だった。金沢不動のリーディングとして、JBC初開催に向けて背負ってきたものは大きかったに違いない。
百万石ジュニアカップは吉原騎手がイグレアシスで制した
能登地方の食を集めたフードコートには終日行列が絶えなかった
JBCの開催で競馬以外に期待されるのは、普段より多くのファンを迎えるために出店されるその日限りのグルメだ。船橋や川崎でのJBC開催では、全国さまざまなグルメの屋台やキッチンカーが出ていたが、今回の金沢でおおいに感心させられたのは、地元能登地方の食材やグルメにこだわったこと。能登地方には、魚、肉、野菜と、それらを食べることだけを目的に観光に訪れてもいいほどすばらしい食材が豊富だ。そうしたグルメが多数提供されたことで、遠方から来場したファンも楽しめたのではないか。今後、JBCの会場となる地方都市の競馬場では、ぜひ参考にしてほしい。
当日の金沢競馬場の入場者数は12,569人。今年度4~9月の1日あたりの同競馬場の平均が3,015人だから、普段の4倍以上の入場があった。新聞等の報道によると、入場者が1万人を超えたのは14年ぶりだそうだ。近年の南関東以外のJBC開催の入場者数を見ると、08年の園田競馬場が22,174名、09年の名古屋競馬場が14,979名。両競馬場が大都市圏にあって新幹線など交通の便がいいのに対して、金沢競馬場の立地を考えれば盛況だったといっていいのではないか。馬券発売窓口や払戻し窓口はかなり混雑していたようだが、金沢競馬場はスタンドの外に十分なスペースがあり、レース観戦に関しては不快なほどの混雑ではなかったように思う。
JBC3レースの売得額は、レディスクラシック414,621,600円、スプリント674,526,200円、クラシック1,016,531,100円で、当日1日の総売得額は2,497,496,300円。金沢競馬場の1レースあたりと、1日の売得額がともにレコードとなったことは当然だが、10年船橋開催時にも同競馬場のレコードとなった、1レース(JBCクラシック)あたり9億3千万円余り、1日あたり24億5千万円弱という記録を、金沢が上回ったということには驚いた。ちなみに地方競馬IPATでの発売が行われるようになった昨年の川崎の数字が、JBCクラシック8億7千万円余り、レコードとなった1日の総売得額26億9千万円余りともほとんど変わらない。さすがに大井開催では11年に31億円余り(JBC当日1日のレコードは01年第1回の39億3千万円余り)を売上げているが、初開催の金沢でも大井以外の南関東と同程度の売上げがあったということは、JBCが理想とする全国持ち回り開催にはプラスに働くのではないだろうか。
今年の1日の総売得額のうち地方競馬IPAT分は1,067,585,900円で、実に全体の42.7%を占めた。ちなみに昨年の川崎開催のIPATの割合は36.6%。船橋や川崎でのJBC開催と変わらない売上げは、地方競馬IPATの効果が大きかったともいえそうだ。
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