不来方賞は1969年に創設された伝統あるレースで、岩手3歳最高峰を決める一戦。今シーズン、岩手競馬では三冠体系を再構築。東北優駿(岩手ダービー・水沢2000メートル)、ダイヤモンドカップ(水沢1600メートル)から続く三冠目がこの不来方賞で、1着から3着馬には、3歳秋のチャンピオンシップの最終戦・ダービーグランプリ(10月6日・盛岡ダート2000メートル)への優先出走権が与えられる。
単勝1.7倍の1番人気に支持されたのはパンプキンズ。スピードを武器に東北優駿、ダイヤモンドカップでライバルをねじ伏せ、三冠達成なるかが注目された。続いて羽田盃5着馬で南関東から再転入となるヤマショウブラックが3.2倍の2番人気。石川ダービー3着、直前に岐阜金賞を制して再転入となったニューホープが4.9倍の3番人気に。JRA未勝利から転入してきた4番人気のホワイトストームは10.0倍で、人気は三つ巴の様相。
盛岡ダート2000メートルはスピードとスタミナが要求されるタフなコース。予想されたとおりパンプキンズの逃げ。ラップは、13.0-12.2-13.2-14.2-13.4-12.9-12.7-12.1-12.0-14.2で、前半3ハロン38秒4、後半3ハロン38秒3のスローペース。1コーナーで一気にペースダウンし、その後は淡々と流れて3コーナーすぎにペースアップ。2番手を追走していたニューホープがパンプキンズとの差を詰めにかかる。先頭から7~8馬身の差があったヤマショウブラックはかなりズブく、エンジンがかかったのは4コーナー手前。直線では一完歩ずつグイグイと力強く伸びると、単独先頭に立っていたニューホープをとらえて勝利。高松亮騎手は引き上げてくるなり、大きな声で「負けと思った」を連呼したが、きっちりハナ差で勝っていたことは、乗っていてわかっていた様子。馬を降りるとすぐに小林俊彦調教師とうれしさが伝わってくる握手をして後検量へ。
惜しくも2着だったニューホープの山本聡哉騎手は「ペースは遅かったし、パンプキンズをマークするかたちでレースを進めた。2000メートルなので早めにスパートして、逃げたパンプキンズを競りつぶして勝てるかなと思ったけど、最後は追い込んできたヤマショウブラックとは際どい差で負けてしまった。ヘタ乗りだったかな……」と自身を責める言葉だったが、大きなハナ差となった。
4馬身差で3着となったパンプキンズの菅原俊吏騎手は「状態は良かったのですが、2番手で追走したニューホープにプレッシャーをかけられてしまい流れが厳しくなってしまった」と。岩手生え抜き馬の三冠達成はならなかった。
さらに高松騎手は、「エンジンがかかると脚を使ってくれるのはわかっていましたから。南関東で乗ったころよりも成長はしているし、今日は感動と感謝しかない。次は全国から強い馬がきても、いい競馬をしてくれると思います」と興奮ぎみだった。
小林調教師は「騎手時代、調教師になっても不来方賞は岩手3歳の大レースなので、いろいろな思いはありますね」。かつては岩手を代表するジョッキーで、現役時代には5勝を挙げていたレースだ。ヤマショウブラックについては「レース後のダメージがどれくらいあるか。ただ、これからは涼しくなる時期ですし、調整はしやすくなると思います。コースの広い盛岡競馬場は合っていますし、次はダービーグランプリへ向かう予定です」と語ってくれた。
Comment
高松亮 騎手
羽田盃や東京ダービーで乗せてもらっているので、中団で折り合いをつけて思いどおりのポジションは取れました。ヨーイドン、上がりの競馬になることは想定内で、先行馬を追いかけないようにしました。直線は届いてくれという気持ちで追って、心からうれしい勝利となりましたね。
小林俊彦 調教師
南関東から入厩してレースまで1カ月弱、夏負けぎみで調整にはすごく苦労しましたね。半信半疑で当日は挑みました。だいぶズブくなっていると聞いていましたので、乗り方は高松騎手にすべて任せました。直線はいい脚で来ましたが、はっきり言って負けと思いました。これが底力なんでしょう。