高知3歳三冠の最終戦に位置づけられている黒潮菊花賞。一冠目・黒潮皐月賞を強烈な末脚で差し切り勝ちした直後、剥離骨折で休養していたアルネゴーは2週間前のレースで復帰したものの「骨折した時点で目標を高知優駿から西日本ダービーに切り替えました。黒潮菊花賞を使うと間隔が詰まってしまうので、ここはパスしました」と主戦の倉兼育康騎手。持ち回り制の西日本ダービーが今年は高知開催の順番となっているが、黒潮菊花賞から中1週というローテーションを懸念しての回避となった。
となれば、二冠目・高知優駿を制覇したナンヨーオボロヅキが単勝1.1倍の圧倒的1番人気に支持されるのは自然な流れと言えるだろう。地元高知では7戦して負けたのは黒潮皐月賞の3着のみ。
2番人気はディアレイカで7.3倍。姉のディアマルコは各地に遠征し、昨年はグランダム・ジャパン古馬シーズンで優勝した。「デビューした頃は緩さも残っていて、姉には程遠かったのですが、高知優駿で出遅れながら差してきて、そこから覚醒しましたね。姉譲りの心臓の強さやスタミナがあります」と姉妹の主戦・佐原秀泰騎手。高知優駿直後に2連勝を決め、ここに駒を進めてきた。
ボルドーアストルが頭ひとつ抜けた好スタート。前走で逃げ粘ってナンヨーオボロヅキの3着と、力をつけてきている馬が先手を奪うと、ナンヨーオボロヅキは「前走も思ったより行き脚がつかなかったので」(赤岡修次騎手)と2番手に控えた。「砂を被ったらどうかがまだ分からない」と、逃げ馬の外に切り替え、さらに外にディアレイカがつけた。「あえて前を追いかけず、1馬身以上相手を逃げさせて、こちらがスローにするくらいの気持ちで乗っていました」という赤岡騎手の目論み通りというべきか、前半600メートルは同じ不良馬場で同距離の高知優駿より0秒9遅い40秒8というゆったりした流れでレースは進んだ。
向正面に入るとナンヨーオボロヅキが徐々に加速。3コーナー過ぎで一気に先頭に立つと余裕の手応えで4馬身差で勝利した。2着は好位から運んだディアレイカ。3馬身離れて「今日は内が使えますし、最内枠を引いたのでずっと内を走ろうと思っていました」(郷間勇太騎手)とプリサイスホウプが入った。
高知二冠馬に輝いたナンヨーオボロヅキ。しかし、口取り撮影に向かう道中、赤岡騎手は「西日本ダービーには行けないんですよね」とポツリとこぼした。2週間後に控える同レースは所属場で初出走した馬のみ出走資格があるため、JRAデビューのナンヨーオボロヅキは残念ながら出走することができないのだ。一方、2着のディアレイカは高知デビュー。「次はナンヨーオボロヅキがいないですし、徐々に成長しています。1900メートルだと道中の追走が楽ですね。西日本ダービーは雨が降って馬場が軽くなってくれればと思います」と佐原騎手は期待を込めた。
ではナンヨーオボロヅキの次走はというと、「水沢までは長距離輸送もあるのでダービーグランプリは自重して、地元で重賞や準重賞がいくつかあるのでそこを狙いたいと思います」と雑賀正光調教師。引き続き高知で快進撃を続けることになりそうだ。
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赤岡修次 騎手
今日は跨った時に前走より調子が上がっているなと感じました。最近は控える競馬もできるので、どこかで(外に)出せればいいかなと安心して構えていました。2走前に強いメンバーのジャパンダートダービーに行ったことで馬が息の入れ方や番手の競馬を覚え、ズルさが出たのが逆に良かったと思います。
雑賀正光 調教師
前走では赤岡騎手がトモが弱っていると感じたようで、その治療をやってきました。すると、今日は良くなっていたようです。牝馬ですがカイバは牡馬より食べるのではないかというくらい。高知で言う“ハチキン”、女傑ですね。今日のメンバーだとレースは安心して見ていられました。