3歳秋のチャンピオンシップの岐阜金賞。昨年は10月中旬に行われたが、今年から秋後半の古馬との対戦を促すためシリーズ全体が前倒しされ、8月29日の開催となった。翌週には地方全国交流の秋の鞍(名古屋)や、地元限定戦ながら園田オータムトロフィー(園田)などが控えていることもあってか、他地区からの遠征は金沢と兵庫から1頭ずつ。有力馬はバラけたものの、個性豊かなメンバーが揃った。
笠松の夏は湿度も気温も高く、この日も秋というには残暑厳しく少し歩いただけで汗が流れた。汗を拭いながら「走り頃の叩き3走目ですし、メンバー的にもチャンスだと思います」と意気込んだのは兵庫から遠征のビッグシューターに騎乗する筒井勇介騎手。「スタートはそんなに速くないと聞いていますが、笠松コースなので中団くらいにはつけたいです」と話した。1番人気はJRA未勝利からの転入初戦を勝ったニホンピロコレールで、前走1400メートルの勝ち時計1分26秒9という速いタイムが評価されてのものだった。2番人気は笠松に在籍したこともあるニューホープ。門別でデビューし、岩手時代にはのちの二冠馬パンプキンズを退け重賞・若駒賞を制覇。現在は金沢の所属で、重賞で上位争いを繰り広げている1頭だ。単勝10倍以下は3番人気リードメロディーまでで、ビッグシューターは4番人気だった。
向正面からのスタートは最内枠のライトリーが好スタートからハナを奪った。間からニューホープが押してポジションを取りに行くと、先頭に並びかけたところでスッと控えて3番手。外のニホンピロコレールが代わって2番手となった。さらにリードメロディーが続き、2~3馬身離れてビッグシューターとナラ。「道中は思っていたよりもひとつペースを落とせました」と逃げる渡邊竜也騎手は話すが、隊列は縦長になった。
2周目向正面でビッグシューターが追い上げにかかり、ニューホープも先頭へと迫った。一方、ニホンピロコレールは距離の問題か前半で力んだぶんか、3コーナーで後退。4コーナーでビッグシューターが前を捕らえにかかったが、直線を向いてもニューホープの脚色は衰えず1馬身半差で優勝。2馬身半差の3着には重賞経験豊富なナラが入った。
「あとちょっとでした……」と唇を噛んだのはビッグシューターの筒井騎手。デビューから2連勝し、2歳時は将来を嘱望されたが、ソエなどで順調に使うことができなかった。「今回はしっかり調教をすることができました」と田中範雄調教師。2着に敗れたものの、素質馬の片鱗を改めて示した。
勝ったニューホープは管理する中川雅之調教師が「前目のポジションを取れたことが最大の勝因です。佐藤騎手に感謝です」と笑うと、佐藤友則騎手も「返し馬ですごくいい仕上げをしてくださっていると感じたので、自信を持って乗れました」と調教をつけた中川調教師にお礼を言った。「お母さんのハタノシュヴァリエもうちの厩舎にいて私が調教で跨っていたのですが、乗り味やトビの雰囲気が似ていると感じました」という。そうした縁もあり中川厩舎に移籍したわけだが、吉田勝利オーナーは笠松が地元の馬主。地元での重賞制覇は初めてで、「競馬場の存廃問題など苦しい時代を乗り越えてきただけに……」と感極まった。このあとは2歳時に在籍した岩手・畠山信一厩舎に移籍予定とのこと。「不来方賞からダービーグランプリを視野に入れています」と吉田オーナー。実現すれば、パンプキンズと再戦となる。
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佐藤友則 騎手
以前から先行したかったのですが馬が行く気を見せない面があったので、今日は返し馬やゲート裏に向かう時に工夫をしました。どこに行っても動じない精神力があるので、これからも結果を出してくれるでしょう。僕自身、重賞で2着続きで悔しかったですが、日本一好きな笠松で勝てて嬉しいです。
中川雅之 調教師
前有利の金沢では展開のアヤもあり重賞タイトルに届きませんでした。ダッシュが鈍いんですが、今日はダッシュがついて前目につけられた時点で「負けても2着かな」と感じました。走る馬の多くがそうであるように、がっちりハミを噛まず口向きに遊びがあるのがいいところ。距離ももつと思います。