『3歳秋のチャンピオンシップ』の最終戦ダービーグランプリが今年は10月6日に前倒しになり、各地で行われる秋の3歳重賞が8月下旬から9月上旬に集中。それらに続く9月16日、高知の西日本ダービーも間隔が詰まっている。各陣営は出走レースを決める際、ライバル陣営の動向にも気をつける必要があった。
兵庫の2歳王者で菊水賞、兵庫ダービーでともに2着のテンマダイウェーヴは早い段階で西日本ダービー直行を表明。ところが、金沢のMRO金賞を勝ったテツが当初予定していたJRA中山のセントライト記念(9月16日)を回避し、西日本ダービーへ照準を変更。テンマダイウェーヴは除外され、地元の園田オータムトロフィーに急きょ参戦を決定。「MRO金賞を勝ってなかったから、除外は仕方ない。すぐに切り替えられた」と新井隆太調教師。これがドラマの伏線となった。
1番人気は菊水賞を勝ったジンギで単勝1.6倍。兵庫ダービーは4着だったが、父ロードカナロア、母の父ディープインパクトという良血と菊水賞までの圧倒的な強さから巻き返しが期待された。2番人気が兵庫ダービー馬バンローズキングスで2.4倍。中央勢相手の兵庫チャンピオンシップJpnIIで3着があり、前走のMRO金賞(3着)で22キロ減の馬体も28キロ増で戻しており、力は出せる状態だった。3番人気が8.0倍のテンマダイウェーヴで、人気はこの3頭に集中していた。
強く降っていた雨も、レースが始まる前には小降りとなり、好スタートを決めたテンマダイウェーヴが主導権を奪い、早々とスローに落として脚をためた。ジンギは3、4番手の好位を追走。バンローズキングスはジンギの直後の内でマークした。
淡々とした流れに、向正面で動いたのがバンローズキングス。手応えの悪いジンギの外から進出すると、4コーナーでは2番手。しかし、楽に逃げていたテンマダイウェーヴは余力十分。直線もバンローズキングスの猛追を3/4馬身差でしのぎ、逃げ切った。3着には人気薄のチャービルが入り、1番人気ジンギは4着だった。
2着バンローズキングスの吉村智洋騎手は「ペースが落ち着いた。今回は展開。力負けじゃない。前走から馬は立ち直っていたし、次につながる」と前を向いた。一方、4着に敗れたジンギの田中騎手は「久々の影響があったし、まだ幼い。すんなり勝っている時は強いけど、いい位置を取れないと走る気をなくす」と肩を落とした。
勝ったテンマダイウェーヴは2歳時には兵庫若駒賞、園田ジュニアカップを制しているが、その後は惜敗が続き、意外にも3歳での初勝利となった。杉浦健太騎手は「力はあるのに結果を出せず、口惜しかったので、勝てて良かった」と笑顔を見せると、口取りでは長男の豪太郎くん(1歳)を抱いて記念撮影に応じた。
当初の目標から軌道修正を強いられながらも、気持ちを切り替えた陣営に勝利の女神が微笑んだ。次走について、新井調教師は「今のところは休養」と、ダービーグランプリには参戦しない模様だ。レース後、これも勝利の女神の粋な計らいなのか、雨上がりの競馬場の上空には、テンマダイウェーヴの未来への架け橋となる七色の虹が、かかっていた。
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杉浦健太 騎手
今日のここまでのレースでは前残りが多かったし、この馬も粘り強いので、何が何でもの(逃げたい)気持ちでした。スローに落とし、早めに来るのは分かっていたので、仕掛けどころに気をつけていたが、うまくはまりました。3歳になっても成長しているし、これから、まだまだやれそうです。
新井隆太 調教師
西日本ダービーの除外はMRO金賞で勝てなかったし、仕方ないので、すっと気持ちを切り替えられました。レースではスタートで出た瞬間、しめたと思いました。どこまで我慢できるかと思いながら見ていました。今日はペースと展開に恵まれた。今後は、今のところは来年まで休ませるつもりです。