高知競馬はここ10年余りで馬券の売上げがV字回復し、高額の2歳戦を始めたとたんに強い生え抜きの馬が現れた。2017年に西日本ダービーを制したフリビオン、グランダム・ジャパンに挑戦し続け、ついに2018年に古馬シーズンで優勝したディアマルコがその代表だ。ただ今年の3歳世代は春頃まで「それほどのレベルの馬はいないかもしれない」ということを、高知競馬の関係者からも聞いていた。しかしながら秋を迎え、高知生え抜きのアルネゴーが全国レベルにまで成長したところを見せた。
1周目のスタンド前では流れが落ち着き、アルネゴーは向正面中間から進出を開始した。MRO金賞を早め先頭から押し切った兵庫のテツが4コーナーで手応え十分に先頭に立ったが、競り合う有力勢の外から一気にまくってきたのがアルネゴー。直線半ばでは完全に抜け出し、最後は手綱を抑える余裕のゴールとなった。
直線しぶとく伸びて1馬身差で2着に入ったのが笠松のフォアフロント。「相手なりに走る馬で終いも伸びてるんだけど、あれだけ切れる馬がいたら仕方ない」と佐藤友則騎手。湿った馬場が多い高知競馬場にはめずらしく、この日は砂ぼこりが舞い上がるほど乾いた重い馬場。レースの上り3ハロンが42秒1とかかったところ、アルネゴーは40秒5だから1頭だけ次元が違っていた。
高知優駿3着のあと2連勝で1番人気に支持された兵庫の牝馬リリコが半馬身差で3着に入り、そこから2馬身差でテツが4着。田中学騎手は「(重い)馬場が合わなかった感じもあるし、金沢の反動もあったかなあ」とのことだった。
アルネゴーの末脚が切れるのはわかっていたが、それは一緒に乗っていた他の騎手たちや、見ている者をあらためて驚かせるほど。「人のほうが焦って、ちょっと動くのが早すぎた。早めに先頭に立って馬が遊んでしまった」という鞍上の倉兼育康騎手にしても、アルネゴーの充実ぶりは想像以上だったようだ。
気になる次走について細川忠義調教師は、「(黒潮皐月賞のあと)骨折して長く休んでいたので、今回もレース後の状態が心配で、ダービーグランプリには申し込みませんでした」と、たしかにこの日発表されたダービーグランプリの他地区選定馬には、その名前がなかった。間隔をあけ、園田の楠賞(11月14日)や地元重賞が目標になるようだ。
園田、佐賀、金沢、そして今回の高知で西日本ダービーは4回目。高知所属馬は冒頭フリビオンに続いて2勝目。ディアマルコも第1回で2着だった。それが今の高知競馬の勢いを示している。
Comment
倉兼育康 騎手
僕が乗ってなかったらどういう競馬をしてるんだろうとも思いますが、僕が乗っている限りこういう競馬がしたいと、思い切ってうしろから行って、期待にこたえて動いてくれます。まだまだ馬が全能力を出している感じではないので、もっと上を目指していけると思っています。
細川忠義 調教師
休み明けで前回叩いたあと黒潮菊花賞には間に合わないと思ってこちらを選びました。初めての1900メートルは心配もありましたが、それなりに調教でも負荷をかけて、馬体重が増えていたのでいい勝負はしてくれると思っていました。晴れて馬場が重くなったことも、すべての過程がうまくいきました。