3歳秋のチャンピオンシップは、ファイナルのダービーグランプリの日程が1カ月以上繰り上がり、今年は全体的に実施時期が早まった。さらに昨年までホッカイドウ競馬にはボーナスの対象となるレースがなかったが、今年からこの王冠賞がシリーズ初戦として加わることとなった。
しかしそれ以上に注目となったのは、リンゾウチャネルが北海道三冠達成なるかどうか。一冠目の北斗盃が2着ジョウランに3馬身差、二冠目の北海優駿も2着リンノレジェンドに3馬身差。ともに危なげのない勝ち方で、しかも3歳シーズンは4戦無敗ということもあって単勝は1.1倍。三冠はほぼ確実と思われた。
互角のスタートからリンゾウチャネルがすんなりと先頭に立つと、2コーナーから向正面に入るあたりで後続との差は4馬身ほどにも広がった。2番手が北海優駿3着だったシベリアンプラウド、3番手が同2着のリンノレジェンド。縦長の隊列となって、早くも北海優駿上位馬同士の争いに思われた。
そして3コーナー。シベリアンプラウドが一気に差を詰め、逃げるリンゾウチャネルの半馬身ほどに迫った。それはシベリアンプラウドだけが仕掛けたわけではなくリンノレジェンドも続いたため、三冠危うしかと場内がざわついた。しかし4コーナー手前、ビジョンの映像が先頭のアップに切り替わると、シベリアンプラウドの岩橋勇二騎手がムチを入れているのに対し、リンゾウチャネルの五十嵐冬樹騎手はまだ手綱を緩めたまま。場内のざわめきは驚きとも思える失笑に変わった。
直線を向いて、当然のようにリンゾウチャネルが後続との差を広げると、拍手が起こった。三冠達成は確実だ。おそらく見ている誰もがそう思ったことだろう。しかし残り100メートル、その拍手は悲鳴にも似た歓声に変わった。いざ追い出されたリンゾウチャネルが意外に伸びない。シベリアンプラウド、さらに直後のリンノレジェンドが一気に差を詰める。懸命に追う五十嵐騎手のリンゾウチャネルが、シベリアンプラウドをクビ差で振り切ってのゴール。1馬身差で3着にリンノレジェンドが入った。
リンゾウチャネルはホッカイドウ競馬史上5頭目の三冠に輝くと同時に、2016年に設定された三冠ボーナスの2000万円を獲得。27年目のベテラン五十嵐騎手には初の三冠だが、管理する堂山芳則調教師は、2001年ミヤマエンデバー、2010年クラキンコに続いて3頭目の三冠という快挙となった。
ホッカイドウ競馬ではコースや距離体系がさまざまに変わる中で、北斗盃(1600メートル)→北海優駿(2000メートル)→王冠賞(1800メートル)という現在の距離体系になった2015年以降では初めての三冠達成でもあった。
表彰式のインタビューで五十嵐騎手は、「二冠の疲れもあったみたいで、よくこの状態で三冠を獲ってくれたと思います」と言って感極まった。それは単に三冠を達成したからというだけではない。「途中アクシデントがあって、使えないかもしれないという状態だったので、勝って嬉しいのではなく、(王冠賞を)使えたことが嬉しかったんだろうな」と堂山調教師が話してくれた。
そして今後について、「ダービーグランプリは強い馬も来るだろうし、そういう状態でなので少し休ませようと思います。遠征は、秋の園田(11月14日・楠賞)あたりを考えています」とのことだった。
Comment
五十嵐冬樹 騎手
これまでの二冠とは違ってテンの速い馬もいなかったので正攻法の競馬になるとは思っていました。(後続を離して逃げたのは)自分のペースさえ守ればと思っていました。反応がよくて掛かった部分もありましたが、そのぶん後続も脚を使うでしょうし、馬を信じて乗るだけでした。
堂山芳則 調教師
使えないかもしれないという状態で、仕上げも十分ではなかったので、ゴール前で止まったのはそのぶんでしょう。それでもよく走ってくれました。最後は感謝だけです。秋に向けてしっかり立て直していきたいと思います。地元(北海道)で使いたいと言ってくれたオーナーには感謝しています。