2019年10月18日(金)
北海道所属馬が遠征競馬で連勝
最高額の1000万円ボーナス獲得
3年めを迎えた『3歳秋のチャンピオンシップ』は、ファイナルともいえるダービーグランプリの時期が大幅に繰り上げられた。これは地方3歳のチャンピオン級の馬をJBCへの出走を促そうというもので、ダービーグランプリの優勝馬がJBCに出走した場合に200万円が支給されるという『JBC出走奨励金』が設定された。これにともない全国の対象レースの大半も実施時期が繰り上げられ、8月1日の王冠賞(門別)から10月6日のダービーグランプリ(盛岡)まで約2カ月間に12レースで争われた。
北海道では史上5頭目の三冠馬
王冠賞(門別)
今年から王冠賞がシリーズに加わったことで、地方競馬の全地区の3歳重賞が対象レースとなった。『3歳秋のチャンピオンシップ』初年度、ダービーグランプリを制したスーパーステションは王冠賞を勝っていたが、残念ながらボーナスの対象とはならなかった。
そのホッカイドウ競馬では今年、王冠賞を制したリンゾウチャネルが史上5頭目の北海道三冠馬となった。一冠目の北斗盃、二冠目の北海優駿は、ともに2着に3馬身差をつける完勝だったが、三冠目の王冠賞は2着のシベリアンプラウドにクビ差まで詰め寄られる薄氷を踏むような勝利だった。その後は休養に入り、ダービーグランプリには登録だけで回避となった。
あとで詳しく触れるが、ダービーグランプリを勝ったのは、北斗賞5着、北海優駿2着、王冠賞3着でリンゾウチャネルに歯が立たなかったリンノレジェンドだった。
岩手では移籍馬が台頭
不来方賞(盛岡)
岩手では今年3歳三冠路線が再構築され、昨年まで二冠目だった不来方賞が三冠目となり、三冠目だったダービーグランプリは地方全国交流ということで三冠の設定から外された。これによって岩手三冠は岩手所属馬のみで争われることとなった。しかしながら不来方賞(盛岡)でゴール前接戦となっての1、2着は、ともに北海道デビュー馬だった。
直線で抜け出したのは、金沢所属として岐阜金賞(笠松)を制しての転入初戦だったニューホープだったが、これをゴール前でハナ差とらえたのが、黒潮盃(大井)7着からこれまた転入初戦のヤマショウブラックだった。
勝ったヤマショウブラックは北海道→岩手→大井→岩手と移籍、ニューホープは北海道→岩手→笠松→金沢→岩手と移籍し、いずれも2歳時に岩手に在籍しての再転入だったというのは興味深い。
岩手生え抜きで三冠がかかっていたパンプキンズは残念ながら3着だった。
貫禄示した東京ダービー馬
南関東の対象レースは、8月中旬の黒潮盃(大井)、9月上旬の戸塚記念(川崎)と、日程も含めてほぼ変わらず。
黒潮盃(大井)
“残念東京ダービー”という性格の黒潮盃には、東京ダービー人気上位で1~3着を争った馬たちは出走せず、4着だったグリードパルフェが1番人気に支持された。しかし勝ったのは、北海道の三冠を戦い、三冠目の王冠賞(3着)から中1週という強行軍での遠征だったリンノレジェンドだった。
日程が大幅変更された東海・北陸
日程変更の影響をもっとも受けたのが東海・北陸地区だろう。昨年は、9/2サラブレッド大賞典(金沢)→9/26秋の鞍(名古屋)→10/18岐阜金賞(笠松)だったのが、今年は、8/29岐阜金賞→9/3秋の鞍→9/8サラブレッド大賞典と、中4日、中4日とかなり近接した日程になった。サラブレッド大賞典の開催日はあまり変わらなかったが、岐阜金賞は1カ月半以上も繰り上げての実施だった。
岐阜金賞(笠松)
このため北陸・東海・近畿地区交流の岐阜金賞はフルゲート10頭に、金沢、名古屋、兵庫から1頭ずつの遠征があったのみ。時系列は逆になるが、不来方賞で触れたように、金沢所属として出走したニューホープが3番手から3コーナー過ぎで一気に先頭に立って押し切った。岩手に所属していた2歳時に若駒賞を制して以来のタイトルとなった。
秋の鞍(名古屋)
地方全国交流の秋の鞍にも兵庫からの遠征が2頭あったのみ。デビューから11連勝で東海ダービーを制し、初の古馬との対戦となった名港盃で8着に敗れていたエムエスクイーンが逃げ切り勝ち。2、3着に入ったのが兵庫から遠征のオオエフォーチュン、ユノートルベル。エムエスクイーンは、地元の同世代同士ではあらためて敵なしの強さをアピールした。
メンバーが分散した兵庫
園田オータムトロフィー(園田)
7日前の岐阜金賞、2日前の秋の鞍、そして11日後の西日本ダービー(高知)などへの遠征を選択した馬がいてメンバーが分散。それでも菊水賞を勝ったジンギ、兵庫ダービー馬バンローズキングス、そして兵庫2歳チャンピオンのテンマダイウェーヴが出走して人気を集めた。スローに落として逃げたテンマダイウェーヴが、ゴール前で詰め寄ったバンローズキングスを3/4馬身差で振り切って勝利。テンマダイウェーヴは2歳時の園田ジュニアカップ以来の勝ち星となった。スタートで出負けしたジンギは4着だった。
佐賀でも三冠達成
黒潮菊花賞(高知)
四国・九州の対象レースは9月1日の同日開催。昨年(10月14日)より1カ月半も繰り上げられた黒潮菊花賞は、黒潮皐月賞を制したアルネゴーが西日本ダービー狙いで回避したことから、高知優駿を逃げ切ったナンヨーオボロヅキが一本かぶりの人気。3コーナー過ぎで先頭に立つと、直線でも軽く追われただけ。2着ディアレイカに4馬身差をつける楽勝で、高知二冠を達成した。ナンヨーオボロヅキは西日本ダービーに出走資格がないため、このレースに集中できたということはあったと思われる。
西日本ダービーは地元馬が勝利
西日本ダービー(高知)
昨年(10月23日)より1カ月以上繰り上げられ、9月16日の高知が舞台。西日本地区の『3歳秋のチャンピオンシップ』対象レースでもっとも間隔に余裕があったレースでも8月29日の岐阜金賞で、地元戦か、西日本ダービーか、選択に悩む陣営もあったようだ。
勝ったのは、地元高知のアルネゴー。縦長の隊列となって、いつものように後方2番手を追走。向正面からロングスパートでまくって出ると、直線半ばでは先頭に立ち、最後は手綱を抑える余裕の勝利となった。黒潮皐月賞を制したあと骨折休養があり、中1週の厳しいローテーションになる黒潮菊花賞は回避。ここに狙いを定めての快勝だった。
レベルアップした北海道3歳世代
ファイナルダービーグランプリ(盛岡)
勝ったのは北海道のリンノレジェンド。好スタートから先頭に立つと、直線で後続を突き放しての圧勝。黒潮盃からの連勝で、シリーズボーナス最高額の1000万円を獲得することとなった。
そしてサラブレッド大賞典を勝ったタンクティーエーが2着、不来方賞のヤマショウブラックが4着、岐阜金賞のニューホープが5着。ボーナスの可能性を持って出走してきた4頭がいずれも掲示板内に好走した。
一方、当初は羽田盃を制した船橋のミューチャリーが出走予定との報道もあったが、セントライト記念(9月16日・JRA中山)に出走(12着)後、ダービーグランプリには登録がなく、南関東からの出走がなかったのは残念だった。
北海道所属馬が大井、盛岡へと遠征競馬で『3歳秋のチャンピオンシップ』のチャンピオンとなった意義は大きく、また北海道にはリンノレジェンドに先着を許さなかったリンゾウチャネルという存在があった。
ホッカイドウ競馬では、2歳馬がシーズンを終えると世代トップクラスの馬たちの多くはJRAや南関東に移籍してしまうが、近年ではさまざまな施策によって、有力馬の一部が3歳シーズンの開幕に合わせて門別に戻ってきたり、また移籍せずに北海道にとどまる馬も出てきた。南関東から戻って活躍したのが、一昨年ダービーグランプリを制したスーパーステションであり、今回のリンノレジェンドで、移籍せずに留まったのがリンゾウチャネルということになる。北海道の2歳戦線のレベルが高いのは以前からだが、3歳戦線のレベルも確実に高まった。
実施時期の課題
『3歳秋のチャンピオンシップ』が全体的に時期が早まったことでは、課題も残した。昨年までであればステップを踏んで次のレースへと駒を進めていたのが、間隔が詰まったことで一部のレースではそれが難しくなってしまった。
西日本地区各場の生え抜きの馬にとっては、ダービーグランプリの前にまず西日本ダービーが目標となるが、たとえば金沢のサラブレッド大賞典から西日本ダービーへは中7日しかなく、サラブレッド大賞典の実施前に西日本ダービーの選定馬が発表されていた。つまりサラブレッド大賞典でいくら強い勝ち方をしても、その結果が出る前に西日本ダービーに登録していなければ出走できない。
西日本ダービーとダービーグランプリにも同じことが言え、ダービーグランプリの他地区選定馬が発表されたのは西日本ダービー当日の発走前。ダービーグランプリへの登録は、西日本ダービーの結果が出る以前に締め切られていた。
地区ごとに3歳路線のローテーションを調整しながら、全国でもシリーズ競走として連携するというのはなかなかに難しい。