春の北日本新聞杯、石川ダービー、夏のMRO金賞に続いて行われるサラブレッド大賞典は、金沢の“3歳四冠”の最終戦にして、3歳秋のチャンピオンシップの一戦。しかし3歳重賞の勝ち馬でここに進んできたのは、ダービー馬のロンギングルックだけだった。北日本新聞杯を制して石川ダービーで2着に入ったスターキャデラックは休養中。石川ダービー3着のニューホープは、10日前に行われた岐阜金賞に進んで勝利をおさめた。
となれば、石川ダービーで2着に2秒の大差をつけたロンギングルックに注目が集まりそうなものだが、単勝は4.0倍で3番人気。2.0倍で1番人気に支持されたのは、JRAで1勝してから金沢に移って連勝中のハクサンウェーブだった。しかし同馬はJRAでの9戦がすべて1200メートル以下。金沢では1700メートルと1500メートルで完勝しているものの、2000メートルという距離は不安材料といえた。
2.5倍で2番人気に推されたタンクティーエーも、JRAで1勝を挙げてから金沢に移籍した。こちらのJRAでの勝利はダート1800メートルで、金沢で連勝して臨んだMRO金賞は4着でも、先着された3頭は他地区からの遠征馬だった。そこから「すこし爪に不安があった」(高橋俊之調教師)ことで中5週での実戦になったが、発表された馬体重は前走と同じ。パドックではゆったりとした歩様を見せていた。
人気はこの3頭に集中。あとは20倍台に2頭、単勝万馬券が4頭という、極端な分布になった。
この日の金沢競馬場は気温が高く、畑中信司騎手によると「砂が乾ききっていて、インコースは通れない」というコンディション。スタート直後にトーセンジルコンが先手を取ったが後続も追いかけて、1周目のホームストレッチでは先頭から最後方までが5馬身ほどの差で固まった。それでも2コーナーあたりでハクサンウェーブが動いて先頭に立つと、タンクティーエー、ロンギングルックも進出を開始してペースが上がった。
そうなると、実績的に劣勢といえる馬たちが徐々に離されていったのは仕方ないところで、3コーナーからは人気3頭の勝負。しかし、粘り込みを狙うハクサンウェーブの外から上昇してきたタンクティーエーの勢いは、遠目からでも明らかに上回っていた。そして最後の直線は独走。2着には7馬身もの差がついた。
その2着争いは競り合いに。「うしろからプレッシャーをかけられて厳しかったですし、距離がちょっと長かった」(吉原寛人騎手)というハクサンウェーブが2着に入り、ロンギングルックは「最後の直線でフワフワしてしまった」(中島龍也騎手)とのことで3着。人気3頭が上位を独占したが、タンクティーエーの強さが目立つ結果になった。
馬主の津田浩一さんは「重賞を勝つのは佐賀以来(2015年ル・プランタン賞のユズチャン)」と嬉しそう。表彰式のあと「ダービーグランプリに行こう」と高橋調教師に話していた。高橋調教師も「ダービーグランプリはアルドラ(12年3着)で出たことがあるだけ。行きたいですし、勝ちたいですね」と意欲を見せた。タンクティーエーは10年に白山大賞典JpnⅢを制したパワーストラグルの半弟。それだけに今後への期待には大きなものがあるのだろう。
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藤田弘治 騎手
スタート後に厳しい位置になったので早めに動かしたら行きたがる素振りを見せましたが、すこし走ったら落ち着いてくれました。スピードが上がっても手応えをあまり感じないタイプなのですが、結果的には差がついていましたね。今後は重賞路線になると思いますので、しっかりと勝っていきたいと思います。
高橋俊之 調教師
MRO金賞のあとは藤田騎手に毎朝の調教の指示を出して、長めの距離をじっくりと乗り込んで臨みました。スタート後に外へと振られるかたちになりましたが、藤田騎手がうまくエスコートしてくれましたね。後ろからは交わされないタイプの馬ですから、最後まで安心して見ていられました。