「浅野靖典の全国馬美味(ウマウマ)行脚」地方競馬にまつわる「ウマいもの」を毎月ご紹介!
「“鉄人”佐々木竹見の見解」佐々木竹見元騎手がダートグレード各競走を“鉄人”の目線で鋭く解説!
「高橋華代子の(続)気になるあの馬は…」引退後や転厩した名馬の近況を愛あふれる文章でご紹介!
「REWIND 90's」当時の写真や映像を交えて90年代の名勝負を振り返ります!
「“鉄人”佐々木竹見の見解」佐々木竹見元騎手がダートグレード各競走を“鉄人”の目線で鋭く解説!
「高橋華代子の(続)気になるあの馬は…」引退後や転厩した名馬の近況を愛あふれる文章でご紹介!
「REWIND 90's」当時の写真や映像を交えて90年代の名勝負を振り返ります!
連載第39回 1990年 東京ダービー
『ハイセイコーと高橋三郎騎手』
1990年東京ダービー アウトランセイコー
2015年の第61回東京ダービーを制したのは浦和・小久保智厩舎のラッキープリンス。2着も同厩のパーティメーカーで同厩舎ワン・ツーという結果だった。浦和競馬所属の東京ダービー制覇は1990年のアウトランセイコー以来25年振りだった。アウトランセイコーは道営でデビューし7戦3勝。「北海道3歳優駿」3着の後、浦和の廣瀬龍夫厩舎に転入。初戦のローレル賞はハセノトライアンを抑えて初戦を飾るが、「全日本3歳優駿」ではハナ差の接戦で返り討ちにあう。
明けて4歳(当時)初戦のゴールデンステッキ賞からは「運命の人」高橋三郎騎手が騎乗することに。ゴールデンステッキ賞、京浜盃、黒潮盃と3連勝。向かうところ敵なしといったところか、単勝1.1倍の圧倒的支持を受け、クラシック第一冠の羽田盃を迎える。
この馬はとにかく気性が悪かった。内にモタれ、外にヨレ、前の馬に噛み付きに行き、一頭になるとソラを使う。誰が呼んだか、その名も「平成の暴れん坊」。そのなに相応しい、強さと激しさを持っていた。
いつも通り、後方待機の羽田盃。向正面に入ってから作戦通り、3~4番手の外までポジションを押し上げ、直線で先頭に立った瞬間、一気に内へ斜行。追走していたキングフオンテンがギリギリで手綱を引いて交わしたが、不利が響き半馬身差の2着。一方、アウトランセイコーは余裕のゴール。後味の悪い一冠目であった。
第36回東京ダービー。ナイター競馬になって3回目のこの年、5万8,602名の入場者で賑わった。発走を遅らせ、引っ張りに引っ張りまくってダービー10億6,621万8,700円、1日も30億9,993万3,900円はいずれも当時の地方競馬レコード。人気は羽田盃1、2着馬アウトランセイコーとキングフオンテンに集中し、枠連は1.9倍。ただし単勝は僅差。その理由はやはり気性、そして血統から来る距離の不安。一方キングフオンテンは血統的にも2400mは向いているし、羽田盃の直線で致命的な不利を立て直し、半馬身差まで詰めたレース振りが評価されていた。
レースは大方の予想通りイシノドリームが先手を取ったが、ヒロツルチカラが引っ掛かり気味に1周目の直線で先頭に立つ。まくり脚質のキングフオンテンは6番手と想定外の中団待機、アウトランセイコーは10番手といつものポジション。
向正面に入り、アウトランセイコーがいつものように位置取りを上げ、5番手にいたキングフオンテンに並び、2頭併せるように進出。3~4コーナーでキングフオンテンは2番手に、アウトランセイコーはイン3番手に入り息を入れる。
4コーナーを回って直線。キングフオンテンが逃げるヒロツルチカラを交わして先頭に、内にいたアウトランセイコーは外に持ち出し2~3馬身後方を追い上げる。逃げ込みを計るキングフオンテンとジリジリと差を詰めるアウトランセイコーのマッチレース。3番手は7馬身後ろ。そして2頭並んでゴール。アタマ差、アウトランセイコーが二冠を達成した。
「今日は素直で走ってくれました。並んでからは、相手も強くなっているし交わせないかと思った。なんとかゴール前出てくれてホッとしました」と高橋三郎騎手。
心配された距離についても「手応えは最後までありました」と。
高橋三郎騎手と言えばハイセイコーが大井競馬に在籍していた時の主戦騎手だ。ハイセイコーは中央入りし、増沢末夫騎手で皐月賞に勝ち、国民的アイドルホースとなったが、ダービーは勝てなかった。しかし1984年、高橋三郎騎手はハイセイコー産駒のキングハイセイコーで東京ダービー制覇(2着ロツキータイガー)。羽田盃(2着ステートジャガー)と併せ二冠を達成している。(中央でもハイセイコー産駒カツラノハイセイコが日本ダービーを勝っている)
奇しくも、今回も浦和所属のハイセイコー産駒で、手綱は高橋三郎騎手。アウトランセイコー同様、キングハイセイコーも気性の悪く落馬、出遅れ、不利が多く苦労したしたが、「自分の乗った馬の仔で2度ダービーを勝てたのが嬉しい」と語っていた。ハイセイコーと高橋三郎騎手の不思議な縁を感じる。
秋、アウトランセイコーは三冠を目指し2600mの東京王冠賞に出走。キングフオンテンの主戦だった田部和廣騎手が騎乗したが、「最強の未勝利馬」アーデルジークの4着敗れた。やはり距離が応えたか。
5歳(現4歳)の春に道営に戻り、ブリダーズゴールドカップ2着など3勝し、94年に引退、種牡馬となった。
文●小山内完友(日刊競馬)
写真●いちかんぽ
写真●いちかんぽ
東京ダービー 平成2年(1990年)6月7日 | |||||||||
サラブレッド系4歳 1着賞金5,200万円 大井 2,400m 晴・良 | |||||||||
着順 |
枠番 |
馬番 |
馬名 |
性齢 |
重量 |
騎手 |
タイム・着差 |
人気 |
|
1 | 7 | 12 | アウトランセイコー | 牡4 | 56 | 高橋三郎 | 2:38.3 | 1 | |
2 | 5 | 8 | キングフオンテン | 牡4 | 56 | 田部和廣 | アタマ | 2 | |
3 | 3 | 3 | マイテイースト | 牡4 | 56 | 桑島孝春 | 7 | 11 | |
4 | 7 | 11 | ユニオンリーダー | 牡4 | 56 | 久保秀男 | 1 | 10 | |
5 | 8 | 13 | マウントサンダー | 牡4 | 56 | 鷹見浩 | 1 | 7 | |
6 | 3 | 4 | エムエムプレスト | 牡4 | 56 | 石崎隆之 | 1/2 | 8 | |
7 | 4 | 6 | フミヒサ | 牡4 | 56 | 石川綱夫 | 3/4 | 12 | |
8 | 6 | 9 | アーデルジーク | 牡4 | 56 | 鈴木啓之 | 1/2 | 13 | |
9 | 2 | 2 | ヒロツルチカラ | 牡4 | 56 | 佐々木竹見 | クビ | 5 | |
10 | 8 | 14 | ハツピイーマイク | 牡4 | 56 | 西村正明 | 1 1/2 | 14 | |
11 | 1 | 1 | ケーヨボーイ | 牡4 | 56 | 的場文男 | 1 | 4 | |
12 | 4 | 5 | イシノドリーム | 牡4 | 56 | 本間茂 | 1 | 3 | |
13 | 6 | 10 | パワーデイクター | 牡4 | 56 | 秋田実 | 1 1/2 | 9 | |
14 | 5 | 7 | ビクトリアガイ | 牡4 | 56 | 森下博 | 4 | 6 | |
払戻金 単勝180円 複勝110円・120円・890円 枠連複190円 |