浅野靖典の全国馬美味(ウマウマ)行脚」地方競馬にまつわる「ウマいもの」を毎月ご紹介!
“鉄人”佐々木竹見の見解」佐々木竹見元騎手がダートグレード各競走を“鉄人”の目線で鋭く解説!
高橋華代子の(続)気になるあの馬は…」引退後や転厩した名馬の近況を愛あふれる文章でご紹介!
REWIND 90's」当時の写真や映像を交えて90年代の名勝負を振り返ります!

連載第37回 1995年 とちぎ大賞典

『栃木の怪物 頂点に立つ』
1995年とちぎ大賞典 ブライアンズロマン

Movie(映像ファイルサイズ:9.8MB)
 ブライアンズロマンといえば、ご存知ブライアンズタイムの初年度産駒。同じ初年度産駒には三冠馬ナリタブライアンやオークス馬チョウカイキャロルがいる。ブライアンズロマンも当然高い期待を受けるが、しかし脚元が弱く、地方競馬・宇都宮の室井康雄厩舎からデビューする。引退時に平地競走勝利数43勝の戦後日本におけるサラブレッド最多記録、そして重賞勝利数17の日本2位タイを記録したイメージとは異なり、必ずしも平坦な道のりというわけではなかった。
 デビューから5連勝でしもつけさつき賞の最有力候補と目されたが、脚部不安で回避、ぶっつけで臨んだとちぎダービーは同じブライアンズタイム産駒の2歳チャンピオン・カルラネイチャーとマッチレースの末に敗れ2着。水沢のダービーグランプリはタイトルがなく選定もれとなっていた。
 初めてのタイトルは3歳秋のしもつけ菊花賞。ライバルのカルラネイチャーがとちぎダービー後に骨折が判明し休養中だけに当然の勝利かと思われたが、勝つには勝ったもののダメージも大きく、4歳の5月まで休養を余儀なくされた。
 復帰後も脚元に不安があるため室井調教師は慎重で、地元宇都宮で堅実に勝ち星を重ねていった。11月にはついにA級特別に勝ち、この頃には脚元もパンとしてきた。そして臨んだ北関東交流の宇都宮記念特別は、古馬になって初の一線級相手のレースだったが、高崎のビクトリーシーザーや弥生賞3着で皐月賞に出走したハシノタイユウらを下し、いよいよ暮れの大一番、ファン投票によるグランプリレース「とちぎ大賞典」に駒を進めることとなった。
 当時○○大賞典といえば、東京大賞典の2800mを最長に、概ね2000m以上の距離で行われるのが普通であった。とちぎ大賞典も宇都宮競馬場を2周する2600mで行われていた。
 スタンド前からの発走。2番人気のハシノタイユウが前に出て、大外から1番人気のブライアンズロマンがスーっと並びかけて行くが、コーナーを利してハシノタイユウが先手。2番手の外にブライアンズロマンが付けて、内にマロンデューク。3番手に3番人気のショウワルーキー、ギャラントバイオ、その後ろにライフセーバーと人気上位馬が続く。レースは2600m戦らしく大きな動きもなく淡々と、そして縦長の隊列となり再びスタンド前から2周目へ。
 レースが動き出したのは2周目の向正面中間。引き離しにかかったハシノタイユウにブライアンズロマンが外から並びかけていく。少し離れて3番手にショウワルーキーで、以下は大きく離された。
 4コーナーを回って内ハシノタイユウ、外ブライアンズロマンのマッチレース。それを2馬身差追いかけるショウワルーキー。ハシノタイユウとブライアンズロマンの競り合いは残り100mの標識まで続いたが、最後はブライアンズロマンが力でねじ伏せ1馬身半差で快勝した。2分53秒1はレコードタイム。以降、とちぎ大賞典を4連覇する。
 「余裕の勝利なんてとんでもない。勝たなければならないから緊張しましたよ」と内田利雄騎手。これで名実ともに北関東の頂点。おりしも交流元年。「いよいよ中央挑戦か」の声に室井調教師は「もっと力を付けてから」と、相変わらず慎重な姿勢を崩さない。
 結局中央挑戦は成らなかったが、とちぎ大賞典制覇の後、地元ひと叩きし船橋のダイオライト記念に臨み、ホクトベガの3着と健闘。力の片鱗を南関東のファンに見せた。内田利雄騎手が「田舎者なのでビジョンが珍しかったみたいで物見がひどかった」と言っていた事を覚えている。そしてその年の10月に交流G3のさくらんぼ記念を制している。
 引退後は種牡馬となったが、2007年に引退。新ひだか町で余生を過ごしている。
文●小山内完友(日刊競馬)
写真●いちかんぽ
競走成績
とちぎ大賞典 平成7年(1995年)12月30日
  サラブレッド系4歳以上 1着賞金1500万円 宇都宮 2,600m 晴・良
着順
枠番
馬番
馬名
性齢
重量
騎手
タイム・着差
人気
1 8 9 ブライアンズロマン 牡5 55 内田利雄 2:53.1
レコード
1
2 4 4 ハシノタイユウ 牡4 54 高橋和宏 11/2 2
3 3 3 ショウワルーキー 牡5 55 三上智也 2 3
4 6 6 ライフセーバー 牡8 55 鈴木正 7 4
5 2 2 マロンデューク 牡7 55 早川順一 8 6
6 8 8 ヒデノスーパー 牡7 54 小野三夫 11/2 7
7 5 5 ラブコール 牝6 53 加藤和博 大差 8
8 1 1 ギャラントバイオ 牡6 55 平澤則雄 3 5
9 7 7 ミヤウンリッチ 牡7 54 藤本靖 3 9
払戻金 単勝120円 複勝100円・140円・130円 馬連複390円