第40回 2011年11月18日 マキバサイレント
「調教で走っていると、ボロをする時に急にとまるんだよね。それで1度落とされたことがあるんだけど、そのまま1頭で走っていくフットワークがすごくて、これはモノが違うなぁ、大物になるだろうなぁって後ろから見ていたよ(苦笑)」と左海誠二騎手は振り返ります。のちに南関東の女傑として活躍するマキバサイレントを、デビュー前から調教をつけていたのが当時駆け出しだった左海騎手でした。
新人だった左海騎手にも「大物」と予感させていたマキバサイレント。重賞レースに挑戦するようになってからは石崎隆之騎手が主戦となり、95ゴールドカップを皮切りに96グランドチャンピオン2000や97クイーン賞GVなど南関東の重賞タイトルを6勝。自身にとって生涯唯一の中央遠征だった96オールカマーGUでは、優勝したサクラローレルから0.5秒差の3着に入る大健闘でした。
高いレベルで戦いながらも生涯成績29戦の中で着外はたった1度だけというのも特筆すべきことでしょう。その後に弟のマキバスナイパーも大活躍し、南関東が誇る存在感たっぷりの姉弟でした。
マキバサイレントは引退後繁殖生活に入り、大井から中央に転厩して2勝を挙げたマキバスマイルや長年に渡って南関東で走り続けて9勝したマキバジーンなど、6頭の競走馬を競馬場に送り出しています。
今年の夏、松田三千雄さんの牧場(静内)にいたマキバサイレントに会いました。現役時代からおとなしい馬と聞いていましたが、牧場スタッフの方のお話しでも非常におとなしくて優しい馬で、周りの繁殖牝馬たちからも一目置かれている存在ということでした。
ふくよかになったお腹をユサユサさせながら、静かに草を食んでいました。フッと顔を上げた時の瞳が、何とも言えない優しさにあふれていたように思います。
今年も種付けをしたそうですが残念ながら不受胎だったそうで、19歳という年齢も考慮して繁殖生活を卒業。今年の1歳馬(父タイムパラドックス・牝馬)が最後の仔になるそうです。
今は千葉県成田市の緑の馬牧場にお引越しをしたそうで、これからは功労馬として悠々自適に過ごすそうです。他にもマキバサイクロンやマキバサイレントの愛息マキバジーンも功労馬仲間として一緒にいるそうですよ。
最近、南関東も牝馬の活躍が目立つようになりました。この時代にマキバサイレントが走っていたらどんなドラマを見せてくれたんだろう……そんな想いをはせるのも、競馬の醍醐味ですね。
高橋華代子(たかはしかよこ)
元NHK山形放送局キャスター。現在は南関東競馬を中心に活動中。
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