第34回 2011年5月20日 トウケイニセイ


 岩手競馬が生んだ怪物トウケイニセイ。90年代前半に、脚部不安と戦いながらも圧倒的な強さで戦い抜いた不屈の闘志は、多くのファンを魅了し続けました。43戦39勝2着3回3着1回。岩手競馬のかけがえのない伝説の名馬として、今もなおその人気は絶大です。

 さまざまなビッグレースを勝ち95年桐花賞で有終の美を飾ると、北海道の日高町で種牡馬生活に入りました。数少ないチャンスを生かして、産駒のトウケイキセキとドリームサラなどが活躍。なお、愛娘ドリームサラやフジエスニセイは繁殖牝馬となり、トウケイホープから続くトウケイニセイの血は今も脈々と受け継がれています。

 種牡馬引退後はえりも町で余生を過ごしていましたが、09年1月12日のトウケイニセイ記念の日に凱旋セレモニーが行われ、久しぶりに水沢競馬場へお里帰り。そのまま岩手県滝沢村の馬っこパーク・いわてへ移動し、小野寺喜久男オーナー所有のまま悠々自適な日々を送っています。

 滝沢村は岩手県内陸部にあり、盛岡競馬場から車で30分ほどの所に位置しています。東日本大震災における大きな被害がなかったことは不幸中の幸いでした。

 トウケイニセイは今年24歳になりました。「体調もいいし、カイバもよく食べていますよ。おとなしくて人間の言うこともちゃんと聞いてくれる賢い馬です」とスタッフの阿部武さん。

 今でもたくさんの人たちがニンジンなどのお土産を持って、トウケイニセイに会いに行くそうです。

 そのひとりが、岩手競馬専門紙 ケイシュウNEWSの牛山基康さん。「知人から『トウケイニセイは元気にしているんですか?』って問い合わせがきたんです。逆にこういう機会に会いに行こうと思いました」(牛山さん)

 震災から1カ月が経った4月12日に会いに行ったそうで、トウケイニセイはとてもエネルギッシュだったそうです。「最初は馬房にいたんですが、放牧地に出ると5本くらい猛ダッシュをしていましたよ(苦笑)。すごく元気で24歳のおじいちゃんには見えませんでした」(牛山さん)

 見学時間は午前10時から午後4時まで、毎週水曜日がお休みとのことです。現在あるホームページに表記されている内容とは違う箇所もあるのでご注意ください。

 なお、牛山さんと言えば韓国競馬通としてもお馴染みです。そもそもは中央で活躍していたインターシオカゼの追っかけとして競馬にどっぷりはまり、インターシオカゼが岩手に転厩したことがきっかけで、この岩手競馬の世界に入ったそうです。
 1頭の競走馬が1人の人間の生き方まで変えてしまうって本当にスゴイことだと思います。

 岩手競馬ファンの中には、トウケイニセイから生き方の影響を受けた人たちもたくさんいるんでしょうねぇ。

 さぁ、名馬の宝庫・岩手競馬が開幕中ですよ!


高橋華代子(たかはしかよこ)
元NHK山形放送局キャスター。
現在は南関東競馬を中心に活動中。
・南関魂
・TCKホームページ重賞競走
・楽天競馬
・競馬総合チャンネル地方コース
・ウェブハロン
・船橋競馬を愛する100人の会