黒潮皐月賞を制したレインズパワーの単勝オッズが2.4倍で、高知優駿馬のリワードアヴァロンが3.1倍。そのどちらが二冠馬になるのか、というのがファンの注目になった黒潮菊花賞だったが、レインズパワーは6着、リワードアヴァロンは8着。気温も湿度も高く、砂に粘り気がある不良馬場での1900メートル戦は、波乱となった。
高知競馬場はこの週末から有観客での開催が再開され、早い時間から多くのファンが入場。出走馬がパドックで観客に囲まれるのはおよそ半年ぶりだが、黒潮菊花賞でもパドックの各馬は落ち着いた雰囲気を見せていた。
となると、気になるのは展開面。高知優駿ではリワードアヴァロンが逃げ切って、レインズパワーは2番手のまま2着だった。ゲートが開くと、そのときと同じ並び順になったが、高知優駿とは流れが違った。
先手を取ったリワードアヴァロンの直後から、レインズパワーがプレッシャーを与えるような位置で追走。それでもリワードアヴァロンは高知での4勝をすべて逃げ切りで挙げているだけに、そこで引くわけにはいかなかった。
その結果が、先頭から最後方までが20馬身はあろうかという縦長の展開。2周目の向正面でも隊列を引っ張る2頭の順番は同様だったが、3コーナー手前でレインズパワーが先頭を奪おうと仕掛けていった。
3番手を進んだペイシャワイルドも追い出しを始め、その後ろからはボスオンザサンド、フリタイム、フルゴリラが進出を開始。その差が一気に縮まって4コーナーで6頭がひと固まりになったのは、やはり前半のペースが前の2頭には厳しかったということなのだろう。人気2頭よりその後ろの勢いが上回っているのは明らかだった。
その一団の大外を回って先頭に立ちかけたのは、負傷した宮川実騎手に代わって手綱を取った妹尾浩一朗騎手のフルゴリラ。前哨戦の栴檀特別では後方からまくり切る競馬で勝利したが、今回は「直線に入ったら手応えが残っていませんでした」(妹尾騎手)とのことで3着に後退。最内からペイシャワイルドが抜け出して押し切ろうとするところに、馬場の中央を通ってフリタイムが差を詰めてきた。2頭の馬体は離れていたが、ゴール地点ではアタマ差でフリタイムが先着していた。
フリタイム鞍上の多田羅誠也騎手は、翌週のヤングジョッキーズシリーズに出場する立場で、初めての重賞制覇。表彰式が始まるまで、次のレースに向かうときは、笑顔のまま、どこかフワフワとしたような雰囲気だった。
一方、2着に敗れた郷間勇太騎手は「勝ったと思いましたよ」と、悔しくてやりきれないという表情。川崎からの期間限定騎乗時に重賞(2011年福永洋一記念)を勝ったが、高知に移籍してからは未勝利で、あきらめきれない様子だった。
単勝6番人気、9番人気という波乱の決着になるペースを作ったリワードアヴァロンの赤岡修次騎手は「あれだけ来られたら共倒れになりますよ」と苦笑い。レインズパワーの倉兼育康騎手も「負けるのはイヤだし前に行かないと。先生も珍しく『行け』と言っていましたからね」と話した。
Comment
多田羅誠也 騎手
前走でいい差し脚を見せていましたし、この距離ならいいところがあると思っていたので一発を狙っていましたが、まさかという結果です。ゴール手前で窮屈になってしまいましたが、そこでうまく外に切り替えられたのがよかったと思います。最後は捉えきったように感じましたが、でも半信半疑でした。
工藤真司 調教師
3走前に西川騎手が後ろからの競馬をしてくれたときの内容が良かったので、騎手にはそれと同じようにと話しました。長距離が向いていますし、ここならいいパフォーマンスができると思っていました。このあとはオーナーと相談して、行かせていただけるならダービーグランプリに挑戦してみたいです。