西日本にある6つの地方競馬の馬主会が中心になって創設された西日本ダービーは、今年で5回目。所属競馬場でデビューし、原則として移籍経験がない馬だけによる争いだ。出走枠は各主催者2頭ずつ。永らく10頭だった笠松競馬場のフルゲートが12頭に拡張されたのは、このレースに対応するためという意味があったのかもしれない。
しかし今回の遠征馬は、高知と佐賀は2頭だったが、金沢と兵庫は各1頭。東海勢は名古屋が2頭で、笠松は4頭が出走することになった。
この日の笠松競馬場は断続的に強い雨が降る状況で、馬場状態は不良。西日本ダービーに出走する各馬が本馬場に入ったところでもスコールがあった。
その雨が上がって迎えた発走時刻。上位人気は遠征馬で、兵庫ダービー3着の実績があるイチライジンが2.3倍で1番人気。続いて九州ダービー3着のミスカゴシマが3.6倍、石川ダービー2着のフジヤマブシが4.4倍で続いた。
ゲートが開くと、高知のガンバルンが先手を主張。笠松のガンバギフ、チェリーヒック、名古屋のインザフューチャーが続いたが、1周目の4コーナーあたりでの流れはスロー。イチライジンもひとかたまりの先頭グループに加わった。
フジヤマブシとミスカゴシマは先頭グループのうしろから。佐賀のエアーポケット、高知のシェナオセロはさらに後方からレースを進めた。
主導権を握ったガンバルンの佐原秀泰騎手が向正面からペースアップ。それを目標にフジヤマブシ、エアーポケットが上昇を開始。イチライジンは3コーナー過ぎで少し遅れたが、そのあと進出を開始して先頭を射程圏に入れた。
最後の直線ではフジヤマブシとエアーポケットが先頭で並走。そこにイチライジンが加わってきた。残り100メートル付近からは3頭での死闘。しかし最後はエアーポケットがアタマ差でイチライジンを封じた。
エアーポケットを送り出した真島元徳調教師は「大井の黒潮盃の疲れを取るのに時間がかかって、今回は半信半疑」と話していた。それでも馬体重がその前走と同じだったのは、臨場した真島二也調教師補佐が「輸送に慣れたように思います」という効果があったのだろう。一方、ミスカゴシマは中団のまま8着。平山宏秀調教師はレース前に「山口勲騎手でも結果が出なかったら距離の問題でしょう」と話していたが、その通りの結果になってしまった。
3着には3/4馬身差でフジヤマブシが残り、9馬身差がついて4着にはシェナオセロ、5着にはガンバルンと高知所属馬が入った。東海地区では6着のインザフューチャーが最先着。戸部尚実騎手は「距離が長いし、笠松コースも合わない感じですね」と話した。
佐賀のエアーポケットを勝利に導いた金沢の吉原寛人騎手は、この勝利が地方競馬での重賞100勝目になった。本来ならばこのレースに金沢のハクサンアマゾネスで臨む予定だったが、同馬は前走で発走調教再審査の制裁を受けたために出走できなくなってしまった。そこで舞い込んできたのが、騎乗経験があったエアーポケットの依頼。表彰式が終わって吉原騎手は「(ハクサンアマゾネスで)フジヤマブシに負けたMRO金賞の借りを返せました」と笑顔だった。
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吉原寛人 騎手
道中は馬のリズムで進めて、最後にいい脚が使えればと考えていました。フジヤマブシの強さは知っていますので、なんとか逆転をという意識もありました。最後はギリギリでしたが、頑張ってくれと祈る気持ちでしたね。地方重賞100勝が近いとは聞いていましたが、ここで達成するとは思わなかったです(笑)。
真島二也 調教師補佐
前走のあと、このレースに目標を定めることになったので、大井から帰ったあとは体調を整えることを第一にして、軽めの調教を続けました。差し脚を長く使えるタイプなので、笠松コースは合うのではという期待もありましたね。4戦連続で遠征したので、このあとは少し休ませることになると思います。