7月23日の王冠賞(門別)からスタートした3歳秋のチャンピオンシップも、この黒潮盃で3戦目。唯一の“カテゴリーA”に位置付けられており、このレースの勝ち馬がダービーグランプリにも勝利すれば、1000万円のボーナス賞金が与えられる。そんなシリーズ前半の注目レースに、多くの実力馬が駒を進めてきた。
なかでも人気を集めたのは船橋のブラヴール。強烈な末脚を武器に京浜盃を制したほか、ジャパンダートダービーJpnⅠでも4着に食い込んだ実力の持ち主。地方馬同士なら一枚上の力があると見られ、単勝1番人気に支持された。続く2番人気はブリッグオドーン(大井)。東京ダービーで勝ち馬から0秒4差の4着に健闘し、今回のメンバーでは互角以上という評価だった。
しかし、この開催の大井競馬場は、風で砂塵が舞うようなサラサラの良馬場。黒潮盃当日も前半から速い時計での決着が続き、先行有利の傾向だった。結果的に、追い込み脚質のブラヴールと、スタートが安定しないブリッグオドーンは、その落とし穴にはまってしまった。
予想通りにファルコンウィング(浦和)が他馬を引き離すかたちで逃げたが、前半3ハロンは37秒3と平均ペースで進む。2番手以降は向正面で馬群が密集。森泰斗騎手が手綱をとったコパノリッチマン(北海道)が早めに進出し、3コーナーで先団にとりつく。そのタイミングで、インペリシャブル(川崎)の山崎誠士騎手も早めのスパートを敢行。この時、ブラヴールは15番手、スタートでつまずいたブリッグオドーンは最後方だった。
手応えよくファルコンウィングとの差を詰めにかかったインペリシャブルは、直線で難なくこれを捉え、その後は独走。6馬身差の圧勝で鎌倉記念以来となる重賞2勝目を飾った。コパノリッチマンもじわじわと脚を伸ばし、ゴール手前でファルコンウィングを捉えて2着。ブリッグオドーンは8着、ブラヴールは11着に敗れた。
デビューから4連勝で鎌倉記念を制したインペリシャブル。その後は精彩を欠いていたが、前走のプラチナカップで2着に食い込み、復調気配を示していた。そして今回、微妙に長いと思われた1800メートルで勝利し、1分52秒8と優秀な勝ち時計をマーク。完全復活を印象付ける走りを見せた。
JRA未勝利から北海道に移籍したコパノリッチマンは、能力が一気に開花。森騎手は「もう少し小脚を使えればと思うが、今回は勝った馬が強すぎた」とインペリシャブルに脱帽したが、息長く脚を使った内容は悪くない。今後も中距離路線での活躍が見込めそうだ。
ファルコンウィングは主戦の左海誠二騎手が騎乗停止中のため、保園翔也騎手が手綱をとり、「3コーナーでもう少しセーフティーリードを取れれば良かったが、自分の競馬はできた」(保園騎手)と、見せ場十分の走り。ペース次第でタイトル獲得のチャンスがあるだろう。
勝ったインペリシャブルの次走は戸塚記念の予定。それ以降のプランは未定だが、結果次第ではダービーグランプリへの参戦も視野に入ってくるだろう。高月賢一厩舎では、昨年の全日本2歳優駿JpnⅠを勝利したヴァケーション、ニューイヤーカップを圧勝したグリーンロードも、このあとに復帰する予定。“3枚看板”が完全復活を果たせば、秋の3歳路線は大いに盛り上がるに違いない。
Comment
山崎誠士 騎手
想像より強かったですね。この馬には距離が長いと思っていましたが、うまく折り合いをつけられました。位置取りには特にこだわっていませんでしたが、外めのいい位置につけられました。調子が良くなっていると聞いていたので、いいパフォーマンスを発揮することができて良かったです。
高月賢一 調教師
山崎騎手の好騎乗に尽きるかなと思います。自分としては1200~1400メートルが合うと思っていましたが、オーナーサイドや厩舎サイドと話をするなかで1800メートルでも大丈夫だろうとなり、出走を決めました。次走は戸塚記念の予定。その後は、また話し合いながら決めていきたいと思います。