戦後最大級とも言われる台風10号が九州に接近する中、金沢競馬場で第55回サラブレッド大賞典が行われた。台風の雨雲の影響なのか、第7レースの前後に若干の雨が降ったが、メインレースが行われる頃には晴れて、じんわりと汗がにじむ暑さとなった。しかし、ふと見上げると、空はすっかり高くなっており秋模様。サラブレッド大賞典もまさに『3歳秋のチャンピオンシップ』の一戦だ。
初夏以降、地方競馬にはJRA未勝利の3歳馬が多く移籍してくる。ここでも移籍後連勝中のモリンガとクサナギが出走。それぞれ単勝2番人気の2.5倍と4番人気の10.0倍で、重賞初出走ながら支持を集めた。では1番人気はというと、地元生え抜きのカガノホマレで2.2倍。デビュー勝ちを収め、2歳時から金沢の重賞の常連だったカガノホマレは今回と同距離の石川ダービー3着、前走の準重賞・石川門カップは3馬身差の勝利とあって、期待が寄せられた。
向正面からのスタートは、モリンガが出遅れて最後方から。一方、ダッシュを決めた3頭がハナ争いを演じ、ペースは流れた。それらを見る位置で控えたのはカガノホマレ。スタンド前では先頭から8馬身ほど離れたところを単独で追走し、残り600メートルで一気に先頭に立つとそのままグングンとリードを広げ、8馬身差で勝利。
2着は4コーナーで内を通ったアウティスタで、米倉知騎手は「今はそこまで内は深くなく、一瞬なら使えます。外に出られなかったので、内を選びました」とのこと。3着コードジェニック、4着ルージュカプリス、5着キングワールドと、掲示板に載ったのはみな8番枠より外の馬たちだったが、使い方によっては必ずしも内がダメというわけでもなさそうだ。
勝ちタイムは2分11秒3で、前半のペースが速かったとはいえ、今年の石川ダービーや古馬重賞・利家盃より速かった。
吉原寛人騎手はカガノホマレに4回目の騎乗。新馬戦の時から素質を感じていたようで、「なかなか重賞を勝ちきれていませんでしたが、3歳重賞ラストチャンスのここでしっかり決められて嬉しいです」と笑った。さらにもう一つ、吉原騎手にとって嬉しいのは、これがJRA・地方合わせて重賞100勝目だということ。「2カ月くらい前から目標にしていて、これだけポンポンと勝たせていただいて、関係者のみなさんに感謝していますし、応援してくださったファンの皆さんもありがとうございます」と話した。今年は新型コロナウイルスの影響で、例年ほど積極的に他地区へ遠征はしづらい状況ではあるが、金沢競馬場で行われた重賞はこれで4連勝。金沢生え抜きの人馬がそれぞれ勲章を手にした一戦だった。
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吉原寛人 騎手
前が飛ばす展開で、一番いいところにハマってしっかり脚を溜められましたし、外に張る悪い癖も出しませんでした。4コーナーでは強力な差し馬もいたので心配しましたが、緩急をつけると良さがなくなる馬なので、思い切ってアクセルを踏んでいきました。その分、セーフティリードができ楽になりました。
菅原欣也 調教師
仕上がりはいいと感じていました。折り合いをつけるのが難しい馬ですが、ジョッキーが上手く乗って、しまいを伸ばしてくれました。100点満点の騎乗ですね。馬もレースを少しずつ覚えてきています。この後は、可能であればダービーグランプリに行きたいと考えています。