不来方賞は1969年の創設で岩手競馬一番の歴史を誇る伝統の3歳重賞。3歳クラシックが再構築された今年はダイヤモンドカップ(水沢5月)、東北優駿(岩手ダービー・盛岡6月)、不来方賞(盛岡9月)が新三冠競走で、ラストの一冠。そして3歳秋のチャンピオンシップとして10月4日に盛岡競馬場で行われるファイナル第33回ダービーグランプリへつながる道。1着馬から3着馬に優先出走権が与えられる。
岩手競馬は7月12日の盛岡開催からお客様の入場を再開しており、全国的には無観客開催の競馬場も少なくない。この日は1572人、前年比77パーセントの入場者ながら熱心なファンにも頭が下がる。
南関東から転入初戦となった東北優駿では厳しい流れながら2着、前哨戦やまびこ賞を圧勝して夏場の勢いを評価されたピアノマンがラスト一冠へ単勝1.9番の断然人気に支持された。二冠目の東北優駿を決め手鋭く制したフレッチャビアンカは夏場休養で久々の実戦となって3.8番の2番人気。東北優駿は4着だが、一冠目のダイヤモンドカップでは超ハイペースで2着フレッチャビアンカを9馬身突き放したグランコージーも休み明けで7.9倍の3番人気。
大方の予想どおりグランコージーが逃げて1周目のスタンド前はかかり気味に。それをピッタリマークしたのがピアノマン。テンカビトが続き、内の4番手にフレッチャビアンカが脚をためる形で追走。
ラップは、13.5-11.8-12.1-13.9-13.2-12.5-12.5-12.2-12.7-12.8と、各馬のポジション取りが決まれば1コーナーでは流れが落ち着いて、前半800メートルは51秒3とスローペース。後半は800メートル50秒2、600メートル37秒7。
隊列はほとんど変わらず残り600メートルを切るとフレッチャビアンカが動き出す。逃げるグランコージーに、マークするピアノマン、楽な手応えでフレッチャビアンカ3番手に進出し射程圏へ。4コーナーを回ってラスト一冠のタイトル争いは3頭に絞られた。坂を登ってラスト100メートルでフレッチャビアンカの反応が良く一気に突き抜けた。東北優駿、不来方賞とタフな盛岡ダート2000メートルを勝利し岩手3歳ナンバーワンは決まりだ。
高松亮騎手は昨年のヤマショウブラックに続きこのレースを連覇。先週のビューチフルドリーマーカップではアッキーで勝利と、2週続けての重賞勝利で勢いに乗る。「アッキーのときは派手なガッツポーズをしましたが、今回はゴール過ぎてから小さくガッツポーズをしました。わかりましたか……」と高松騎手。
1馬身差で2着となったピアノマンの齋藤雄一調教師は「やまびこ賞を勝ったときよりも、さらに状態が良くなっていたのでチャンスがあるのではと思いました」。山本聡哉騎手は「切れる脚がないね。もう少しペースが速くなってくれたほうがこの馬にはいいと思うし、流れてくれていれば、もっと際どい着差になったと思うよ」
さらに1馬身半差の3着となったグランコージーの櫻田康二調教師は「今回は休み明けだったし、完ぺきな仕上げとまではまだいえないね。それでも、折り合いはついていたし、最後はしぶとく粘っていたから次につながるレースにはなりましたね」
「BTCで坂路調教を積んでいたので腰の力強さが良くなって、東北優駿と比べて馬体のハリもいいし、数段パワーアップしている。春は2000メートルは不安もありましたが、今は距離の心配はない。流れに左右されないですし、折り合いや仕掛けの反応と器用さがあります」と勝ったフレッチャビアンカの高松騎手。「次走はダービーグランプリへ。全国の強豪が相手ですから大きなことは言えませんけれども、期待を持って挑みたいと思います」と千葉幸喜調教師。
Comment
高松亮 騎手
ライバルを前に見ながら4番手あたりの位置はイメージ通りでしたね。ペースが速くなかったので前にいる馬たちが力があるのも分かっていましたし、それでもコントロール性が高い馬で自分の仕掛けるタイミングだけだと思っていました。最後は自分の馬の力を信じて追い出し、反応良く伸びてくれました。
千葉幸喜 調教師
浦河のBTCから良い状態で戻ってきてくれました。東北優駿で結果を出してもらっていますからどう乗るかは騎手に任せました。道中の位置取りからゴールまでの戦いぶりは自分が想像していた通りでしたね。騎手が思っていた通りの戦いをしてくれたのが、この勝利につながったと思います。