笠松競馬場は6月20日からおよそ1カ月半、開催を休止して馬場改修を含めた場内整備を実施していた。砂を入れ替えたことで「先行馬が有利」と現地記者。しかし東海地区の3歳三冠を目指すニュータウンガールにとっては関係のない話だろう。前走のMRO金賞はクビ差2着に惜敗したが、今回は東海地区以外からの出走馬が不在というメンバー構成も手伝って、単勝1.3倍の支持を得た。
2番人気にはドラゴンウォリアーが3.9倍で続き、ゲートが開くと3番人気(9.1倍)のタイニーパワーが先手を主張。ミラクルキャッシュ、ニュータウンガールがその直後につけたが、タイニーパワーの丸野勝虎騎手はペースを落としての逃げに持ち込んだ。ニュータウンガールの藤原幹生騎手も手綱を絞って折り合いをつけた。
その展開はニュータウンガールにとって有利な形。2周目の向正面に入ると流れが速くなったが、藤原騎手の手は動かないままで3番手をキープしていた。
その流れに乗って、ニュータウンガールは逃げるタイニーパワーを4コーナーあたりで交わして先頭に。しかしほとんど同時に、先行集団の後ろにいたダルマワンサが勢いよく上昇して先頭を奪った。
その動きに反応して藤原騎手は追い出し始めたが、すこし後れを取る形になってしまった。このあたりは「先頭に立つと気を抜くところがある」(藤原騎手)という面が出たのかもしれない。
それでもニュータウンガールはダルマワンサに食い下がった。しかし勢いは相手のほうが上。最後は1馬身半の差をつけてダルマワンサが押し切った。3着には「後ろからの競馬が合うと思います」(池田敏樹騎手)という単勝166.1倍のスカイガーデンが入線。3連複も3連単も万馬券になった。
レース直後、満面の笑みで表彰エリアに来たのは、ダルマワンサのオーナーである吉田勝利さん。昨年のニューホープに続く優勝馬主になった。
「岐阜県馬主会の立場とすれば、ニュータウンガールの三冠を見たかったですよ。でも僕の馬も負け続けていましたから」と、重賞で2着5回という成績にピリオドを打つ勝利にご満悦だった。
その横で複雑な表情をしていたのが、ニュータウンガールのオーナー、新生ファームの木村敬生さん。この2頭はともに、新生ファームの生産馬である。「(2歳9月の)笠松での初戦が4着だったように、夏が得意なタイプではないと思うんですよ。でも……」と、よもやの敗戦に心を整理できていない様子。吉田さんに促されて口取り写真の列には加わったが、その表情は晴れないままだった。
ダルマワンサは門別でデビューし、その後は笠松と岩手を行ったり来たりという経歴。今回は騎手の手配の関係で、愛知の加藤聡一騎手に白羽の矢が立った。加藤騎手は笠松での追い切りに騎乗して感触を確認。それも勝利につながることになった。
岐阜金賞は10月4日に盛岡で行われるダービーグランプリにつながる重賞。そのため、昨年から8月下旬という日程になったのだが、田口輝彦調教師は「盛岡の2000メートルは長いですね」とのこと。10月12日に名古屋の1400メートルで行われる、3歳限定の地方全国交流重賞・秋の鞍に進む可能性が高いようだ。
Comment
加藤聡一 騎手
スタートが決まって、まずまずの位置で折り合えました。追い切りでの感触が“行き脚はつくが、追い出すと反応が鈍い”だったので、早めに動かないようにと考えていました。最後の追い比べでは瞬発力を出してくれました。僕を乗せてくれてうれしかったですし、今回は全部が上手く行ったように思います。
田口輝彦 調教師
この馬に1900メートルは長いと思います。それでも確実に最後は伸びますから、ここでも折り合い次第ではないかと考えていました。あとは、移籍を繰り返したおかげで精神面が強くなっている感じがあります。こういう馬は本当に珍しい。今回は次への反動がないようにと考えて、すこし細めに仕上げました。