2019年11月8日(金)
第98回 船橋競馬場「成田屋漬物本舗」
漬物各種(600円~)
船橋競馬場の入口からスタンドに向かう途中、当日の結果一覧が表示されている場所があります。そこには屋根があって、壁際に漬物が並ぶ台も設置されています。
それが日本で唯一、地方競馬場内で営業している漬物専門店。販売されているものは開催ごとに多少の違いがありますが、4mくらいの台にほとんど隙間なく、さまざまな漬物などが並べられています。
日本人にとって漬物というのは、子供のころから親しんでいる食べ物であると同時に、なんというか“オマケ”みたいな感覚があると思います。和食のお店に行くと、頼んでないのに一緒に出てくることがありますものね。
居酒屋などには「漬物盛り合わせ」がありますが、基本的にはサービスで食べるもの。それを「お金を出して買う」のは、個人的にはちょっと抵抗があるのが正直なところです。
でもここの漬物は別格。以前10名ほどで合宿をしたとき、この店で買った「きゅうりの葉唐辛子漬け」を持っていったら大好評で、あっという間に終了。その後、神宮球場にも持っていきましたが、これも試合の序盤で終わってしまいました。
このときは両方とも酒のツマミでしたが、ごはんの添え物としてシソの実の漬物(600円)をよく買っています。今日はシソの実ありますか?
「ごめんなさい、今日は持ってきていないんですよ~」
と、店主の篠塚清さんは平謝り。じゃあ、代わりになにかあるかなあ。
「最近になって作ったのが、しょうがとなす、きゅうり、大根を一緒に漬けたものですね。食べてみてください、ちょっと塩辛いかも」
試食コーナーにある濃いオレンジ色に染まった大根に楊枝を刺して口に運ぶと、おお、これはゴハンが進む塩辛さ!
「3つの野菜がミックスになっているのと1種類のものを用意しているんですけど、すみません、値段は1000円でちょっと高いんですよ~」
と篠塚さんは低姿勢。というか、店主の腰が低すぎるのがこの店の特徴なんですよね。
「ここに店を出させてもらってからけっこう経ちますが、冬になると寒いですよ。競馬場に来る人も少なくなりますし。雨や雪になったらさらに寒くて……」
加えて船橋競馬は通年ナイター。屋外店舗にとっては厳しい季節の到来です。
「でも冬は多古町で採れたながいもを持って来られますし、落花生も良くなってきますからね。いつも常連のみなさんに支えられています」
常連のみなさん。それはつまりお年を召したかた。その客層は漬物屋さんにマッチしているとは思いますが、競馬場内の高齢化が進んでいることをここで実感するとはちょっと複雑……。
でもひとついえることは、たとえ1000円の漬物でも、ハズレ馬券に比べれば安いってこと(多くの場合)。実際に私も、スーパーで漬物は買いませんが、ここではそれより高くても買いますからね。それはともかく、並べられている漬物の品質は確かなもの。においがするものは袋を二重にしてくれますから、帰りの電車も安心です。
※ 本文で紹介している逸品については、取材時点のものです。
その後、値段改定やメニューが変わっている場合もございます。